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「まぁ!半分以上残されているのですか?」
 北の離宮へ食事を持って行っているメイドから、住人の様子を聞きました。
 なかなか食事に手をつけず、食べ始めてもひと口が少ないので時間内に食べ終わらないそうですわ。

 あの場に同席させた甲斐がありました。
 あれだけ毒に苦しんで死ぬ様子を見れば、自分達の食事にも何か入っているのではと疑いますわよね。
 何も入っておりませんわよ。
 貴方達は、自分の行動によって死に近付くのです。
 他人に殺されるのではありません。
 緩慢な自殺ですわね。


―――――――――――――――――――


 前王と前王妃は、引退後に仲良く旅行へ行っている事になっております。
 他の国を回っているけれど、お忍びなので特に何も発表はされません。

 慈悲深い前王妃様は、旅行には必要無いと御自分の宝石を全て慈善事業へと寄付されました。
 これにより、平民の子供用の学校が各地に設立されました。平民も読み書き計算が出来る程度にはなりました。


 は、王位についてからは妾をなさいました。
 フローラは妾になった時点で、メルデス子爵家から除籍されております。
 王太子のお小遣いから捻出されていた妾を囲う予算が無くなっても、誰も気にしません。
 その行方を気にする人も居ません。

 もしかしたら、社交界でマイオニー伯爵領で見かけたとか、ハウリント侯爵領で見かけたとか、噂になるかもしれません。


 ハウリント侯爵家ですが、タイラーが亡くなった直後に、マリリナ様が第二子を妊娠している事が発覚しました。
 だからと、マリリナ様の妊娠になりましたの。
 生まれたのは、タイラーによく似た女の子です。
 それを見た旦那様が「私達にも女の子が欲しいね」と、毎日毎晩仰ってました。
 えぇもう、頑張りましたわよ、私。
 1年後に、四人目であり、私達の第二子になる女の子を無事に産みましたわよ。


 サンドラの所は、第一子が女の子で第二子が男の子です。
 女の子は、オーリーの婚約者でもあります。
 カレーリナは何と、三人の男の子の母親です。
 ハウリント侯爵家の女の子を狙っているとは、ネイサンの弁。
 彼が言うなら、本当になるでしょう。
 ダイヤモンド鉱山を見つけ、他国との交易も盛んなマイオニー伯爵領。
 次の世代が結婚する頃には、侯爵に陞爵するでしょう。


 ハロルドは、学園を卒業したのと同時に、後継のいない男爵家へ養子へ行きました。
 王太子にはべってばかりいて自分を鍛えていなかったので、騎士団にも入れなかったのです。
 学園時代なら側近になれても、王太子の仕事の手助けも出来ないのですから、当たり前の結果ですわね。


 ルパートは、可愛い婚約者と愛を育み、今では三人の子供の父親です。
 全員女の子で、どこにも嫁にやらん!と言っております。
 子供達に嫌われる前に、考えを改めてくださいね?


「旦那様。こんなに幸せで私、大丈夫かしら?」
 もう名前では呼べなくなってしまった旦那様。
 公の場でも「陛下」としか呼びません。
 それでも良いと、幸せそうに笑ってくださいます。

 あのクズの血を絶やし、愛する旦那様の血を残せたので、私は悪女になって良かったのだと思いますわ。



 終
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