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38.
しおりを挟む「何だヤコブソンのあの髪型は」
顔の半分近くを隠してしまう王太子のボサボサの髪を見て、王が顔をしかめます。
王と王妃は政には一切関わらず、王宮の隅でひっそりと暮らしております。
何の権限も無いのですが、一応は国の代表なので、それなりの待遇ではあります。
そこは、王太子とは違います。
王太子とフローラは、まだ生きてはいるようです。
まだ楽になってもらっては困ります。
それにしても、王も王妃も、自分の子供も判らないのですね。
つつが無く結婚式が終わり、国民への顔見せも無事に済みました。
夫婦の寝室は、これでもかと初夜を演出されていて、恥ずかしくなってしまいます。
ベッドへは行かず、ソファに座ってワインを飲みながら待つ事にしました。
入浴を済ませて寝室へ入って来た王太子は、髪を後ろへ流していて顔がちゃんと見えます。
「よろしくお願いしますわね、旦那様」
私が声を掛けると、端正な顔を苦笑で歪めながら私の向かいのソファへ座りました。
「何を期待しているのかわからないけど、私も初めてですからね?」
あら?既婚者なのに?
「何度も言いますが、マリリナの恋人はフェリシアです。最初から、白い結婚が条件ですよ」
タイラーがワインを一口飲みます。
「もし私が影武者の話を提案しなかったらどうなさるつもりでしたの?」
そう。
フローラの妊娠が発覚した時、王太子を共に幽閉する事を決めました。
ただ一つ、後継の問題だけを悩んでいた時に、タイラーの結婚の実情というか、内情を知ったのです。
マリリナ様とは白い結婚で、タイラーの義妹のフェリシア様が恋人である事。
後継は養子を迎えるつもりである事。
それならばと「子供は二人以上産みましょう!例え女児でも家を継げるように法律も変えますわ」私はタイラーにそう提案したのです。
その時に「望むところです」と即答いただきました。
タイラーは、王太子と同じ髪色で、私と似た瞳の色です。
子供の父親になるには、条件も良かったのです。
それにしても特殊な結婚の為に愛人も作れず、妻とは白い結婚が決まっていたのなら、私と影の結婚をしなければどう処理をするつもりだったのでしょう?
貴族向けの娼館はありますが、あまり頻繁に利用すると、要らぬ噂が立ちますわよね。
「愛する奥様は、何を考えているのかな?」
タイラーに手を差し伸べられます。
その手を取ると、優しくベッドへと誘導されました。
「愛する旦那様の性事情の心配を少し」
素直に答えると、大笑いされてしまいました。
「心配していただかなくても、私は出会った時から貴女にしか興味がありません」
生徒会の中では参謀であり、今後は私の大切な相棒になるタイラー。
とても頼もしい旦那様ですわね。
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