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 王太子の成人と誕生日を祝うパーティーは、本人不在で進み、そのまま微妙な空気で終了いたしました。
 フローラが王家の護衛に連れて行かれるのを王太子が邪魔した為、宰相権限で王太子も退場となったのです。
 普通ならそれほどの権力は宰相に無いのですが、なにせ王家ですからね。

 そして王太子とフローラがパーティーの為に会場へ行っている間に、お二人の部屋は敷地内の森の奥にある北の離宮へと移されました。
 扉は固く施錠され、窓には鉄格子がはまっております。
 部屋の掃除等は一週間に一度、王宮から派遣されます。とても危険を伴いますので、護衛騎士が付き添います。
 料理は王宮で作られた物を運ぶので、温かいものも冷たいものも、同じ温度になってしまう事でしょう。


 ですが、生きていられるだけ幸せですわよね?


 私生児となったあの男児は、教会に引き取られました。
 何も知らずに生きる方が本人の為だと、離宮へと移動させる際に神官長が保護しました。
 神官長はとても慈悲深い方です。
 一生を神に捧げる事になり、婚姻も出来ませんが、あの両親と北の離宮で生きるよりは幸せでしょう。



 今日は、私との結婚式です。
 背も高くなり、瞳の色も変わりましたが、髪色は変わらないので問題無いですわね。
 瞳の色が判るほど近付くのは私だけですし。
 とても病弱でいらっしゃるので、この次に公の場に出るのは、王位継承の儀以降になるでしょうか?

「今日はハウリント侯爵家は誰が出席するのかしら?」
 王太子へと問い掛けます。
「当主夫妻と妻のマリリナと義妹のフェリシアが出席しますね」
「あら、誰の妻かしら?発言には気を付けて」
「すみません。ここには気の置けない者しか居ないものでつい」
 彼は、学生時代から変わらない笑顔で笑いました。

「アンシェリー。学生の頃から懸想してた男を哀れに思うなら、それ以上虐めないでやりなよ」
 ネイサンがとても良い笑顔です。とても爽やかに見えます。
「初夜も済ませてから、のですよね?朝食はどうされますか?」
 ネイサンと結婚してからも、私の侍女を続けているカレーリナが問い掛けました。

「いっそのこと、一週間位子作りでこもったらどうだい?侯爵家の跡取りも必要なのだろう?」
 サンドラの付き添いで来られたローガン様が提案してきますが、それはご自分達の子供と同じ年に王家の子供が欲しいからですわよね?
 サンドラは、つい先日妊娠が判明したのです。
 本当に今回は幸せそうで、安心しました。


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