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しおりを挟む「また制服姿を見られるとはな」
お父様が柔らかく微笑みます。
「今回の方がとても素敵だわ」
お母様も微笑みます。
前回は王太子と頻繁に会い、そのクズの好みを押し付けられていた。
派手に髪を巻き、化粧も濃く、アクセサリーも目立つ派手な物を付けさせられていました。
清楚な制服に合うはずもなく、派手で自己顕示欲の強い女だと言われていた事は知っていました。
ですが、「王太子妃は誰よりも目立たなくては駄目だ」というクズの謎理論に素直に従っていたのです。
今回は、自分の好きな髪型で、好きな化粧をしています。
髪型はストレートの髪をハーフアップにし、白いシンプルなリボンを飾っているだけ。
化粧は必要最低限のナチュラルなもの。
アクセサリーは付けていない。
「せっかく私好みの清楚な制服なのに、ゴテゴテ飾り付けるなどと愚の骨頂ですわよね」
私の言葉に、両親とも笑う。
先程とは違う嘲笑。
三人とも頭に浮かんだのは、前回迎えに来た時に満足気に笑いながら頷いていた王太子の顔だったのでしょう。
王太子が迎えに来る前に、公爵家の馬車で学園に向かいました。
入学式当日は迎えに来ると手紙が来ていたはずですが、残念ながら議会へ提出する書類にまぎれて今頃は王宮にある事でしょう。
宛名が私ではなくお父様だったので、急ぎの内容だと王宮へ回されてしまったのだから仕方ありませんよね。
えぇ。その日は入学式の前日で、お父様が半休を取って早退していましたので、手紙とすれ違ってしまったのは、……不可抗力ですわよね?
王太子が来る前に家を出ましたが、そのまま学園へ向かうと早く着き過ぎてしまいます。
高位貴族が先に着いていると、下位貴族の方がとても困ってしまうのです。
身分が上の者を待たせた事になりますので。
例え上位貴族の者が勝手に早く着いていたとしても、です。
学園が始まってしまえば、建前でも生徒は平等と謳われておりますので大丈夫なのですが、今日は入学式です。
仕事へ行く人や他の通学の馬車の邪魔にならないように、適当に時間潰してをしてもらいましょう。
学園とは逆方向へと馬車を走らせていると、ガタンと揺れて止まりました。
停めるつもりが無かった時の止まり方です。
何かあったのかとカーテンをそっと開けると、侯爵家から馬に乗った従者が飛び出してきたようです。
こちらの紋章を確認したのでしょう。
急いでいたようなのに、謝罪の為に寄って来たようです。
「申し訳ございません!お嬢様の制服が!制服を取りに!」
とても焦っている従者を見て、私は過去の出来事を思い出しました。
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