上 下
1 / 51

1.

しおりを挟む
 


「なぜフローラを殺そうとした!」

 婚約者の誕生日パーティーで、名前を呼ばれた後にいきなり言われた台詞に、私は言葉を失った。


 今日は最初からおかしかった。


 いえ、もっと前からです。

 まず、婚約者の誕生日パーティーだというのに、私へドレスが贈られて来ませんでした。


 私の婚約者は、この国の王太子です。
 その誕生日パーティーに、婚約者である私をエスコートしないわけがありません。
 それならば、ドレスを贈るのは王太子のなのです。
 王国の国家予算に婚約者への贈り物用の予算も組まれているくらいなのですから。

 私はあまり派手なドレスや宝飾品は好きでは無いのですが、国の威厳の為だからといつも豪華なドレスに派手な宝石を付けていました。
 そのような格好をしても負ける容姿をしていなかったのが幸いでした。

 鮮やかな青い髪に、ブルートパーズのような瞳。
 目はハッキリとした二重ですが、少し吊り気味なのでキツい印象になるのが悩みでした。
 肌は自分で言うのも何ですがとても白く、唇は淡いピンク色です。
 ただし、婚約者の希望でいつも真っ赤な口紅を塗っていましたが……


「お前は見た目の通り、中身も派手好きで我儘放題だったが、まさか我が寵愛を受けるきさきを殺そうとするとは思わなかったぞ!」

 妃?
 まだ私と婚姻していないのに、側妃を?

 それよりも、私が派手な格好が好きでは無いのは、王太子様もご存知のはず。
「俺の隣に居たいのならば、他の誰よりも豪華によそおえ。それが王太子妃の義務だ」
 そう命令したのは、王太子様、貴方です。


「身分のせいで正妃になれないフローラを、いつもさげすみ、執拗に嫌がらせをしていたそうだな!」

 フローラ様は子爵家令嬢なので正妃にはなれませんが、私が後継となる王子を生んだ後に娶る予定だと紹介はされました。
「高位貴族と下位貴族では受ける教育自体が違うので、色々教えてやって欲しい」と王太子様に言われ、高位貴族としてのマナーや知識を教えました。

 基本は王宮の教育係が教えてました。
 でもフローラ様の問題行動が色々と報告されたので、私が再教育していたのです。
 すぐに「私が子爵家令嬢だからって、馬鹿にしてますよね!?」と泣き喚くフローラ様を、それでも公の場に出せる程度にしたのは私だと自負しておりました。
 なだめて、褒めて、根気よく教えたのです。

 それなのに、それはフローラ様にとっては執拗な嫌がらせでしかなったのですね。


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

2度目の人生は好きにやらせていただきます

恋愛 / 完結 24h.ポイント:397pt お気に入り:3,839

私のことを愛していなかった貴方へ

恋愛 / 完結 24h.ポイント:866pt お気に入り:6,467

異世界日帰りごはん【料理で王国の胃袋を掴みます!】

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:6,398pt お気に入り:2,234

私に必要なのは恋の妙薬

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:5,632pt お気に入り:1,525

女のくせに強すぎるからという理由で婚約破棄された令嬢の話

恋愛 / 完結 24h.ポイント:113pt お気に入り:2,030

令嬢たちのお茶会

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:113pt お気に入り:17

【完結】お前なんていらない。と言われましたので

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,739pt お気に入り:5,623

処理中です...