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45:久々の学園

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 マルツィオは、久しぶりの学園を見上げた。
 骨折は中途半端にすると後遺症が出るからと、医者から完治するまで退院を許されなかった。
 勉強の遅れを訴えたら、なぜかアンドレオッティ子爵家から家庭教師が派遣された。

「お嬢様が元婚約者の暴力の原因が自分だと気に病んでおりました。ここはお嬢様の為にお願いします」
 家庭教師の笑顔での強制に、マルツィオが折れた。
 そして、学園で習う以上の素晴らしい授業を受けたのだ。

 それでも、やはり学園に通える事自体がマルツィオはとても嬉しかった。
 友人との他愛ない雑談や、噂話、美味しいお店の情報など、学園の教室で話すから楽しい話題というものがある。
 見舞いに来た友人と話しても、何か蚊帳の外で背中がむず痒くなる気がするのだ。



「戻って来た!」
 学園の入口で両手を上げて喜ぶマルツィオの横を、他の生徒はクスクス笑いながら通り過ぎて行った。
 恥ずかしくなったマルツィオは両手を下げ、そそくさと教室へ向かった。

「久しぶりだな!マルツィオ!」
 教室に入った途端、友人が気付いて声を掛けてきた。
「怪我は大丈夫?」
「大変だったね」
「勉強は?ノート貸そうか?」
 次々に声を掛けられ、マルツィオは目を丸くする。
 まだ教室の入口である。

「お前等、マルツィオを席に座らせてやれよ」
 あの事件の日、四阿あずまやでマルツィオとジュリアを見かけたと声を掛けてきた生徒だ。
 何度も見舞いに来てくれて、「廊下で不用意にあんな話したせいだ」と責任を感じていた。

 結局、リディオは自分でマルツィオとジュリアが居た所を目撃していたので、この生徒には一切の責任は無かった。
 それでもマメに見舞いに来てくれていた。
 たまに一緒に来る婚約者も、誠実そうな女性だった。


 こういう友人と、一生の付き合いになるんだろうな。
 そんな事を考えて、マルツィオは一人で頬を緩めていた。


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