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39:転がり落ちる

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 学園を強制退学になったリディオは、サンテデスキ伯爵家で只々ただただ日々を過ごしていた。

 リディオが保釈される為に払われた金額は、学園での3年間の授業料よりも高額だった。
 そんな大金を積んで牢から出したリディオを、家族も使用人も放置していた。
 まるで居ないかのように振る舞うのだ。


 当主のドメニコは、長男のラッザロが出て行ってしまってから、一気に老け込んだ。
 本当ならここでリディオの後継者教育を始めなければいけないのに、ラッザロが伯爵家を……いや、自分を見捨てた事が衝撃的過ぎて、全てのやる気がそがれてしまっていた。
 それに、今は教える程の仕事量も無い。今までの取引先からは見限られ、新規の仕事も無い状態だった。

 愛人のバーバラは、金の無くなったサンテデスキ伯爵を見限っていた。
 しかし実家には帰れず、リディオが学園でバーバラが伯爵夫人として振る舞っていた事を話してしまったせいで、新しい寄生先も見つけられなかった。
 無論、今まで伯爵夫人として招待されていた茶会にも、呼ばれる事は無い。

 今まで姑息な手段で世渡りしてきたツケが、ここで一気にサンテデスキ伯爵家を襲っていた。



「俺が何をしたって言うんだよ!」
 リディオは学園の教科書をビリビリに破いた。
 学園を卒業出来ない事は、貴族にとっては致命的である。
 しかも自主退学ではなく、強制退学である。

「マルツィオが邪魔しなければ、婚約破棄にはならなかったんだ。報復するのは、当然の権利だろ!?」
 アイツがあの女が金持ちだと教えてくれていれば、婚約破棄にはならなかったんだ!と、リディオは廊下に聞こえる程の大声で叫んだ。

 そんなリディオの部屋に、ノックの音が響く。
 最初は普通に叩いていたが、リディオが中で叫んでいるので聞こえていないようだった。
 最後には扉が揺れるほどの力で叩かれた。

「うるせぇ!何だ!」
 内側からリディオが扉を開ける。
「貴族院から、速達が届きました。召喚状です」
 フットマンから手紙を受け取ったリディオは、破る勢いで封を開けた。

「罪状が……増え過ぎだろう?」
 リディオの手から、手紙が落ちた。


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