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33:冤罪
しおりを挟むマルツィオは教室に戻る途中で、同じクラスの友人に声を掛けられた。
「お前、凄いな!アンドレオッティ子爵令嬢とランチしてただろ!」
背中を叩かれ、マルツィオはむせてしまう。
「ゲホッ!席が空いてなくて、相席になっただけだよ」
マルツィオは事実を伝えたのだが、友人のニヤニヤ笑いは止まらない。
「いやぁ、俺も四阿に居たんだぜ?アニーも楽しそうだって羨ましがってた」
アニーとは、この友人の婚約者である。
「ただでさえ話題の渦中に居る人だから、迷惑になるような噂するなよ?」
マルツィオが釘を刺すと、「だよな」と友人は苦笑した。
ちょっとお調子者ではあるが、常識はある友人の背中を、マルツィオはパンッと叩いた。
その日の夕方、授業が終わったので寮へ帰ろうと荷物を持って歩き出したマルツィオの前に、リディオが立ち塞がった。
何か用かとマルツィオが問う前に、リディオはいきなりマルツィオの顔を殴った。
「きゃあぁぁ!」
倒れたマルツィオの側に居た令嬢が悲鳴をあげる。
「人の女に手を出してんじゃねえよ!アイツの家が大財閥なのも、態と俺に教えなかったな!?」
リディオは倒れたマルツィオを更に蹴る。
突然の蛮行に何も防御出来なかったマルツィオは、そのまま意識を手放した。
その後、リディオは周りの男子生徒に取り押さえられ、そのまま学園の警備に連行されて行った。
マルツィオは学園に常駐している医師付き添いのもと、病院へと運ばれて行った。
周りで目撃していた生徒達からの証言で、リディオはそのまま衛兵を呼ばれ、罪人として護送されたようだった。
「マルツィオは、今日初めてアンドレオッティ子爵令嬢と話したはずです」
「今まで一緒に居るところなんて、見た事無いです」
「それにサンテデスキ伯爵令息に、文句を言う資格は無いですよね!?」
話を聞きに来た衛兵と教師に、目撃者であるマルツィオの友人知人は、皆、マルツィオの冤罪を訴えた。
その日のうちに、リディオの強制退学が決まった。
自主退学を促されたのではなく、強制退学である。
これ以上無く不名誉な事であった。
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