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32:偶然の出会い
しおりを挟むリディオと分かれたマルツィオは、一人で中庭の四阿へと向かった。
四阿には先客か居たが、テーブルは1卓だけでは無いので問題は無い。
先客に会釈をして通り過ぎ、マルツィオは空いているテーブルへと腰を下ろした。
持っていた本を開き、リディオに拒否された玉子サンドの包みを開ける。
「美味しいのにな」
このサンドウィッチは、態々早起きして街まで買いに行ったものだった。
偶に食べたくなり、寮監に許可申請を出してまで買いに行く。
一口食べたところで、後ろから人の話し声が聞こえてきた。
「あら、席が全て埋まっておりますわ」
「今日は外で食べるには良い陽気ですものね」
「しょうがないからサロンへ行きましょうか」
マルツィオが振り返ると、三人の令嬢がバスケットを手に立っていた。
「ここどうぞ。僕はベンチでも大丈夫なので」
四人掛けの席に一人で座っていたマルツィオは、サンドウィッチを包んで席を立つ準備をする。
別に席は早い者勝ちなので退く必要は無いのだが、本を読みながら食事をしたかったのでテーブルのある席に居ただけで、サンドウィッチを食べ終わってから本を読むのなら、ベンチでも充分だった。
「あ、いえ、大丈夫ですわ。サロンに行きますので」
1番華奢な少女が言うのを、マルツィオは笑顔で首を振る。
「今から行ったら、サロンも満席かもしれませんよ?」
マルツィオの言葉に、三人の令嬢は顔を見合わせた。
「それならば、ご一緒してもよろしいでしょうか?」
令嬢は、席を譲られるのではなく、相席を提案してきた。
テーブルは広いので、一人一人の席は離れている。
「はい。私は一人ですので問題ありません」
マルツィオは、提案を受け入れた。
お互いに自己紹介をする。
華奢な少女が「ジュリア・アンドレオッティ」と名乗ったので、マルツィオは驚いた顔をしてしまった。
しかしジュリアはあの件以来慣れているのか、「私もすっかり有名人ですわ」と笑った。
ビビアナとクラウディアも自己紹介をし、勿論マルツィオも自己紹介を返した。
何となくそのまま会話を続け、楽しい食事の時間が終わった。
「またお会いしたら、ご一緒しましょう」
社交辞令の挨拶をして、その場でマルツィオとジュリア達は分かれた。
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