32 / 49
31:根本は変わらないもの
しおりを挟む『明日から昼食は我慢するか、誰かに奢って貰うように。』
アレから数日後。そんな屈辱的な手紙がリディオの元に届いた。
『それか、学園を退学して就職しても良い。自分の人生だから、好きにすると良い。』
そう締めくくられていた。
婿入りは絶望的だという事だった。
男爵家どころか準男爵家まで婿入り先を探したが、全て断られていた。
普通は上の立場の者に申し込まれれば、男爵や準男爵なら断れないだろう。
しかし今回のリディオの起こした事件は、結婚相手に該当する年齢の令嬢が居る家は皆が知っており、「アンドレオッティ子爵家に訴えられた男」という事実は、充分に断る理由になっていた。
空腹を我慢する為に水を飲み、中庭のベンチに座ってぼうっとしていたリディオの目の前に、玉子のサンドウィッチが差し出された。
もしや誰か優しい令嬢が!?と思って顔を向けたリディオだったが、相手を見てチッと舌打ちをする。
「何だ。玉子サンドは嫌いだった?」
差し出した玉子サンドを引っ込めて、マルツィオは苦笑する。
そう。かつて同室だったマルツィオだった。
「施しは受けない」
「前にクラスの女子からクッキー貰ってなかった?」
「あれは差し入れだ」
マルツィオは口を噤む。
あのクッキーは、令嬢から男性にお菓子の贈り物をする日に誰からもクッキーを貰えない可哀想な男子生徒への、女子有志からの、それこそ施しだった。
マルツィオは数学が得意だったので、クラスの女子数人とテスト勉強をした事があり、その時のお礼にとお菓子を貰っていた。
マルツィオが渡される時に、丁度リディオも渡されており、それを見た女子生徒が有志の話を教えてくれたのだった。
「勘違いされても困るから、ちゃんと義理だと説明されてたはずなのに。相変わらず思い込みが激しいんだね」
ポツリと呟いたマルツィオの声は、リディオには聞こえていない。
声量の問題では無く、自分に都合の良い事しかリディオは聞いていないからだ。
「それじゃ、僕は向こうで食べるから」
マルツィオはリディオに挨拶をして去って行った。
その後ろ姿に、リディオはまた舌打ちをする。
「何だよ。もう1回勧められたら受け取ったのによ」
自分で断っておいて、玉子サンドを渡さなかったマルツィオをリディオは責めた。
133
お気に入りに追加
3,527
あなたにおすすめの小説
いつまでも甘くないから
朝山みどり
恋愛
エリザベスは王宮で働く文官だ。ある日侯爵位を持つ上司から甥を紹介される。
結婚を前提として紹介であることは明白だった。
しかし、指輪を注文しようと街を歩いている時に友人と出会った。お茶を一緒に誘う友人、自慢しちゃえと思い了承したエリザベス。
この日から彼の様子が変わった。真相に気づいたエリザベスは穏やかに微笑んで二人を祝福する。
目を輝かせて喜んだ二人だったが、エリザベスの次の言葉を聞いた時・・・・
今世は好きにできるんだ
朝山みどり
恋愛
誇り高く慈悲深い、公爵令嬢ルイーズ。だが気が付くと粗末な寝台に横たわっているのに気がついた。
鉄の意志で声を押さえ、状況・・・・状況・・・・確か藤棚の下でお茶会・・・・ポットが割れて・・・侍女がその欠片で・・・思わず切られた首を押さえたが・・・・首にさわった手ががさがさ!!!?
やがて自分が伯爵家の先妻の娘だと理解した。後妻と義姉にいびられている、いくじなしで魔力なしの役立たずだと・・・・
なるほど・・・今回は遠慮なく敵をいびっていいんですわ。ましてこの境遇やりたい放題って事!!
ルイーズは微笑んだ。
王妃はわたくしですよ
朝山みどり
恋愛
王太子のやらかしで、正妃を人質に出すことになった。正妃に選ばれたジュディは、迎えの馬車に乗って王城に行き、書類にサインした。それが結婚。
隣国からの迎えの馬車に乗って隣国に向かった。迎えに来た宰相は、ジュディに言った。
「王妃殿下、力をつけて仕返ししたらどうですか?我が帝国は寛大ですから機会をたくさんあげますよ」
『わたしを退屈から救ってくれ!楽しませてくれ』宰相の思惑通りに、ジュディは力をつけて行った。
くだらない冤罪で投獄されたので呪うことにしました。
音爽(ネソウ)
恋愛
<良くある話ですが凄くバカで下品な話です。>
婚約者と友人に裏切られた、伯爵令嬢。
冤罪で投獄された恨みを晴らしましょう。
「ごめんなさい?私がかけた呪いはとけませんよ」
両親から溺愛されている妹に婚約者を奪われました。えっと、その婚約者には隠し事があるようなのですが、大丈夫でしょうか?
水上
恋愛
「悪いけど、君との婚約は破棄する。そして私は、君の妹であるキティと新たに婚約を結ぶことにした」
「え……」
子爵令嬢であるマリア・ブリガムは、子爵令息である婚約者のハンク・ワーナーに婚約破棄を言い渡された。
しかし、私たちは政略結婚のために婚約していたので、特に問題はなかった。
昔から私のものを何でも奪う妹が、まさか婚約者まで奪うとは思っていなかったので、多少驚いたという程度のことだった。
「残念だったわね、お姉さま。婚約者を奪われて悔しいでしょうけれど、これが現実よ」
いえいえ、べつに悔しくなんてありませんよ。
むしろ、政略結婚のために嫌々婚約していたので、お礼を言いたいくらいです。
そしてその後、私には新たな縁談の話が舞い込んできた。
妹は既に婚約しているので、私から新たに婚約者を奪うこともできない。
私は家族から解放され、新たな人生を歩みだそうとしていた。
一方で、私から婚約者を奪った妹は後に、婚約者には『とある隠し事』があることを知るのだった……。
婚約破棄が国を亡ぼす~愚かな王太子たちはそれに気づかなかったようで~
みやび
恋愛
冤罪で婚約破棄などする国の先などたかが知れている。
全くの無実で婚約を破棄された公爵令嬢。
それをあざ笑う人々。
そんな国が亡びるまでほとんど時間は要らなかった。
冷遇された王妃は自由を望む
空橋彩
恋愛
父を亡くした幼き王子クランに頼まれて王妃として召し上げられたオーラリア。
流行病と戦い、王に、国民に尽くしてきた。
異世界から現れた聖女のおかげで流行病は終息に向かい、王宮に戻ってきてみれば、納得していない者たちから軽んじられ、冷遇された。
夫であるクランは表情があまり変わらず、女性に対してもあまり興味を示さなかった。厳しい所もあり、臣下からは『氷の貴公子』と呼ばれているほどに冷たいところがあった。
そんな彼が聖女を大切にしているようで、オーラリアの待遇がどんどん悪くなっていった。
自分の人生よりも、クランを優先していたオーラリアはある日気づいてしまった。
[もう、彼に私は必要ないんだ]と
数人の信頼できる仲間たちと協力しあい、『離婚』して、自分の人生を取り戻そうとするお話。
貴族設定、病気の治療設定など出てきますが全てフィクションです。私の世界ではこうなのだな、という方向でお楽しみいただけたらと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる