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17:誕生日

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「は?何も届いていない?」
 リディオは、寮の受付カウンターを両手で思いっ切り叩いた。
 そのあまりの剣幕と音で、皆が何事かと注目する。
「アンドレオッティ子爵家からだぞ!?見落としているんじゃないか?!」
 リディオは尚も食い下がる。

 受付の男性は、冷たい視線をリディオへ向けた。
「無いものは、無いですね。特にアンドレオッティ子爵家からでしたら、職員全員が把握出来るように、徹底して管理されますから」
 あまりの物言いに、リディオは鼻で笑う。
「たかが子爵家に大袈裟な」
 馬鹿にしたように言うリディオを見て、「あぁ」と受付係は何かに納得した。

「何だよ」
 相手の態度が気に障り、リディオは威嚇するように聞く。
「いえ、そういえばあの日に寮に居たな、と思っただけですよ」
「はあぁ!?」
 明らかに見下してきた受付にリディオが更なる文句を言おうとしたら、目の前で窓を閉められてしまった。

 あの何かがあった日から2ヶ月。
 同じような事が度々たびたびあった。
 事ある毎に「あの日、居なかったからな」と馬鹿にしたように言われたり、逆に同情されたりした。


 イライラした気分のまま自室に戻ったリディオは、怒りを込めて扉を閉めた。
「婚約者の誕生日に贈り物もしないのか!あの女は!」
 机の上に置いてあった鞄を、壁に投げつける。
 鞄の中身が床に散らばった。
 それを放置したまま、リディオはベッドに寝転がった。

「いくら貧乏でも、婚約者には贈り物をするべきだろうが!」
 ベッドの上で、足を布団にドンッと叩きつける。
「しかもあの女は、俺に黙って何かしやがったのに!いまだに!いまだに説明に来やしない!!」
 リディオは、今度は枕を扉に向かって投げつけた。



 この部屋は本来二人部屋である。
 その証拠にベッドも机もクローゼットも、2つずつ置いてある。
 前はマルツィオという同室者も居た。
 マルツィオが別室へ移った後、空き待ちをしていた生徒が入って来た。

 しかし1週間もしないうちに実家に帰ってしまったのだ。
 それが三人も続いた。
 皆、「リディオの我儘に耐えられない。これなら遠くても実家から通った方がマシだ」と同じ理由だった。
 その為、リディオはそれからは一人で部屋を使っている。

 そしてリディオは知らないが、2ヶ月前からは申込書の備考欄に「サンテデスキ伯爵家令息とは同室にしないように」と書かれる事が増えていた。
 それは来年入学予定の生徒分も、であった。


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