17 / 49
16:翌日の学園
しおりを挟むジュリアの誕生日パーティーの翌日、学園は妙に浮足立っていた。
主にアンドレオッティ子爵家のパーティーに出席した面子である。
「昨日発表されなかったって事は、婚約者は居ないんだよな」
「アンドレオッティ大財閥とか関係無く、婚約者になりたい。可愛い」
「側にずっといたビビアナ嬢、良いよな」
「俺はクラウディア嬢のが好みだ」
どこのクラスでも、男子生徒は同じような話をしている。
それを聞いて女子が嫌な顔をしているかというと、そうではなかった。
「クラウディア様、素敵でした」
「ビビアナ様もですわ。お姉様とお呼びしたい」
「ジュリア様も、妖精のようにお可愛いらしくて。ギュッて抱きしめたいです」
「あのドレスに使われた布は、遠い国の特産品なんですって」
「来月から、アンドレオッティ系列のお店で取り扱いが始まるそうですよ」
女子は女子で、やはり盛り上がっていた。
そして参加しなかった女子が話に加わり、昨日パーティーの様子を聞き、更に盛り上がる。
だから学園全体が浮足立っていたのだ。
「何か今日は、落ち着かない雰囲気ですわね」
ジュリアが首を傾げる。
他のクラスからクラスメートを訪ねて来る生徒が妙に多いのだ。
しかもあまり親しくないのか「○○で会った△△だけど、覚えてる?」なんて会話がクラスのあちこちでされていた。
「妖精姫を見たいのでしょうね」
ウフフ、とクラウディアが笑うが、実はこっそりと、ジュリアを皆から隠すようにしている。
「なぜかうちにも、昨日の時点で婚約の申込みが何件かあったそうだよ」
ビビアナがウンザリした顔をする。
「ビビアナ様は、炎の精霊みたいで、とても美しかったですものね!」
ジュリアの素直な褒め言葉に、ビビアナもまんざらではないようで、嬉しそうに笑う。
「クラウディア様は水の精霊みたいでしたし、私の予想以上に素敵でしたわ」
クラウディアも褒められて、頬を染める。
「私はお二人のようにはなれないので、可愛い路線にしなさいと母に言われましたの。でも可愛いとか綺麗って周りが思う事ですよね」
おかしなお母様、とコロコロと笑うジュリアは、本気でそう思っている。
「天然最強説」
ビビアナが呟く。
「しかも色んな意味で世界一ですわよ」
クラウディアもビビアナにだけ聞こえるように、返事をした。
「アンドレオッティ」
「ジュリア」
聞き覚えのある名前が、そこかしこで噂されていた。
その声音が好意的な響きで有る事に、リディオは気分を良くする。
しかし話に加わろうとすると、サァーと蜘蛛の子を散らすように、皆が居なくなってしまうのだ。
その為に、詳しい話の内容を知る事は出来無い。
昨日、何かが有った事は理解していた。
何せ学園内の生徒が半分以上居なかったのだから。
それとジュリアの関係は、理解出来ていなかった。
別の事だと思い込んでいたのだ。
なぜなら、アンドレオッティは、貧乏な子爵家なのだから。
婚約者の自分に内緒で、何かをやったらしい。
貧乏な子爵家のくせに、生意気な!
ジュリアから説明してくるまで、絶対に聞いてなどやらない。
リディオは意地になっていた。
128
お気に入りに追加
3,527
あなたにおすすめの小説
いつまでも甘くないから
朝山みどり
恋愛
エリザベスは王宮で働く文官だ。ある日侯爵位を持つ上司から甥を紹介される。
結婚を前提として紹介であることは明白だった。
しかし、指輪を注文しようと街を歩いている時に友人と出会った。お茶を一緒に誘う友人、自慢しちゃえと思い了承したエリザベス。
この日から彼の様子が変わった。真相に気づいたエリザベスは穏やかに微笑んで二人を祝福する。
目を輝かせて喜んだ二人だったが、エリザベスの次の言葉を聞いた時・・・・
今世は好きにできるんだ
朝山みどり
恋愛
誇り高く慈悲深い、公爵令嬢ルイーズ。だが気が付くと粗末な寝台に横たわっているのに気がついた。
鉄の意志で声を押さえ、状況・・・・状況・・・・確か藤棚の下でお茶会・・・・ポットが割れて・・・侍女がその欠片で・・・思わず切られた首を押さえたが・・・・首にさわった手ががさがさ!!!?
やがて自分が伯爵家の先妻の娘だと理解した。後妻と義姉にいびられている、いくじなしで魔力なしの役立たずだと・・・・
なるほど・・・今回は遠慮なく敵をいびっていいんですわ。ましてこの境遇やりたい放題って事!!
ルイーズは微笑んだ。
王妃はわたくしですよ
朝山みどり
恋愛
王太子のやらかしで、正妃を人質に出すことになった。正妃に選ばれたジュディは、迎えの馬車に乗って王城に行き、書類にサインした。それが結婚。
隣国からの迎えの馬車に乗って隣国に向かった。迎えに来た宰相は、ジュディに言った。
「王妃殿下、力をつけて仕返ししたらどうですか?我が帝国は寛大ですから機会をたくさんあげますよ」
『わたしを退屈から救ってくれ!楽しませてくれ』宰相の思惑通りに、ジュディは力をつけて行った。
くだらない冤罪で投獄されたので呪うことにしました。
音爽(ネソウ)
恋愛
<良くある話ですが凄くバカで下品な話です。>
婚約者と友人に裏切られた、伯爵令嬢。
冤罪で投獄された恨みを晴らしましょう。
「ごめんなさい?私がかけた呪いはとけませんよ」
精霊の愛し子が濡れ衣を着せられ、婚約破棄された結果
あーもんど
恋愛
「アリス!私は真実の愛に目覚めたんだ!君との婚約を白紙に戻して欲しい!」
ある日の朝、突然家に押し掛けてきた婚約者───ノア・アレクサンダー公爵令息に婚約解消を申し込まれたアリス・ベネット伯爵令嬢。
婚約解消に同意したアリスだったが、ノアに『解消理由をそちらに非があるように偽装して欲しい』と頼まれる。
当然ながら、アリスはそれを拒否。
他に女を作って、婚約解消を申し込まれただけでも屈辱なのに、そのうえ解消理由を偽装するなど有り得ない。
『そこをなんとか······』と食い下がるノアをアリスは叱咤し、屋敷から追い出した。
その数日後、アカデミーの卒業パーティーへ出席したアリスはノアと再会する。
彼の隣には想い人と思われる女性の姿が·····。
『まだ正式に婚約解消した訳でもないのに、他の女とパーティーに出席するだなんて·····』と呆れ返るアリスに、ノアは大声で叫んだ。
「アリス・ベネット伯爵令嬢!君との婚約を破棄させてもらう!婚約者が居ながら、他の男と寝た君とは結婚出来ない!」
濡れ衣を着せられたアリスはノアを冷めた目で見つめる。
······もう我慢の限界です。この男にはほとほと愛想が尽きました。
復讐を誓ったアリスは────精霊王の名を呼んだ。
※本作を読んでご気分を害される可能性がありますので、閲覧注意です(詳しくは感想欄の方をご参照してください)
※息抜き作品です。クオリティはそこまで高くありません。
※本作のざまぁは物理です。社会的制裁などは特にありません。
※hotランキング一位ありがとうございます(2020/12/01)
両親から溺愛されている妹に婚約者を奪われました。えっと、その婚約者には隠し事があるようなのですが、大丈夫でしょうか?
水上
恋愛
「悪いけど、君との婚約は破棄する。そして私は、君の妹であるキティと新たに婚約を結ぶことにした」
「え……」
子爵令嬢であるマリア・ブリガムは、子爵令息である婚約者のハンク・ワーナーに婚約破棄を言い渡された。
しかし、私たちは政略結婚のために婚約していたので、特に問題はなかった。
昔から私のものを何でも奪う妹が、まさか婚約者まで奪うとは思っていなかったので、多少驚いたという程度のことだった。
「残念だったわね、お姉さま。婚約者を奪われて悔しいでしょうけれど、これが現実よ」
いえいえ、べつに悔しくなんてありませんよ。
むしろ、政略結婚のために嫌々婚約していたので、お礼を言いたいくらいです。
そしてその後、私には新たな縁談の話が舞い込んできた。
妹は既に婚約しているので、私から新たに婚約者を奪うこともできない。
私は家族から解放され、新たな人生を歩みだそうとしていた。
一方で、私から婚約者を奪った妹は後に、婚約者には『とある隠し事』があることを知るのだった……。
婚約破棄が国を亡ぼす~愚かな王太子たちはそれに気づかなかったようで~
みやび
恋愛
冤罪で婚約破棄などする国の先などたかが知れている。
全くの無実で婚約を破棄された公爵令嬢。
それをあざ笑う人々。
そんな国が亡びるまでほとんど時間は要らなかった。
【完結】公爵子息は私のことをずっと好いていたようです
果実果音
恋愛
私はしがない伯爵令嬢だけれど、両親同士が仲が良いということもあって、公爵子息であるラディネリアン・コールズ様と婚約関係にある。
幸い、小さい頃から話があったので、意地悪な元婚約者がいるわけでもなく、普通に婚約関係を続けている。それに、ラディネリアン様の両親はどちらも私を可愛がってくださっているし、幸せな方であると思う。
ただ、どうも好かれているということは無さそうだ。
月に数回ある顔合わせの時でさえ、仏頂面だ。
パーティではなんの関係もない令嬢にだって笑顔を作るのに.....。
これでは、結婚した後は別居かしら。
お父様とお母様はとても仲が良くて、憧れていた。もちろん、ラディネリアン様の両親も。
だから、ちょっと、別居になるのは悲しいかな。なんて、私のわがままかしらね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる