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08:友人兼護衛

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 同じ学年、同じクラスに分家の令嬢が居た事で、ジュリアは入学早々に友人が出来た。
 普通は本家と分家で色々ありそうだが、分家の令嬢は辺境伯の娘で、とても大らかな性格をしていた。
 炎のようなオレンジがかった赤のウェーブした髪に、赤味がかった茶色い目。小さい頃から鍛えていた体はジュリアと同い年とは思えない程にメリハリがあり、迫力の美人だった。
 名はビビアナという。

 隣のクラスには、ミケーレの話題にあがった辺境の貿易会社の娘もいた。
 こちらは真っ黒なサラサラの髪に、焦げ茶色の瞳の清楚系のスラリとした美人である。
「私、先祖返りですの。3代遡っても居ない、珍しい髪色で」と本人が言う通り、この国では珍しい色味である。
 彼女の名前は、クラウディアといった。

 美人二人に挟まれているジュリアは、亜麻色の髪に明るい茶色の瞳の、可愛い雰囲気をした令嬢だ。
 ビビアナとクラウディアの背が高いので、ジュリアを守る護衛か、よくて姉にしか見えない。
 本家の令嬢というだけでなく、ジュリアのおっとりとした雰囲気が二人は大好きになっていた。



「そういえば、ジュリア様の婚約者ってこの学園に居るんですよね?」
 ビビアナがランチの唐揚げを一口大にした物をジュリアの皿に取り分けながら質問をする。
「はい。一つ上にいらっしゃるみたいです」

 中途半端なジュリアの返事に、今度はクラウディアが海老フライを一口分切り分け、やはりジュリアの皿に載せながら、問い掛ける。
「まさかお会いしてないのですか?」
 困ったように微笑んだジュリアは、無言で頷いた。


 ジュリアは自分のハンバーグを二切れ、ビビアナとクラウディアの皿に載せた。
 普通に考えたらあまり貴族らしくない行動だが、これには意味があった。
 実は学園の食堂は、アンドレオッティ子爵家の系列のレストランが入っている。
 その為に、ちゃんと味を保持出来ているか色々食べてみるのだ。

 かといってジュリア一人で何種類も食べられるわけはなく、三人でシェアする事にしてもらったのだ。
 傍から見ると女子が三人で、キャイキャイ楽しそうに食べているようにしか見えない。
 会話の内容を厨房が聞いたら、顔面蒼白になりそうだが……。

「ハンバーグは、作り置き時間が長すぎますね。学生食堂という事を加味しても、冷め過ぎです」
「海老フライは、揚げ過ぎですわね」
「唐揚げは合格ですね。一番人気なので、力を入れているのでしょう」

 ジュリアは手帳に二人の意見と、自分の評価をメモする。
『必要なら、人手の補充』と隅に追記して、手帳を閉じた。


 三人で食事をしている風景を、睨みつけるように見ている生徒が居た。
 ジュリアの婚約者のリディオである。
「なんだアレは……他の令嬢にランチを恵んで貰ってるのか?」
 前提に『貧乏な子爵家』が有る為、リディオがジュリアを見る目は悪い方へ曇っていた。


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