9 / 49
08:友人兼護衛
しおりを挟む同じ学年、同じクラスに分家の令嬢が居た事で、ジュリアは入学早々に友人が出来た。
普通は本家と分家で色々ありそうだが、分家の令嬢は辺境伯の娘で、とても大らかな性格をしていた。
炎のようなオレンジがかった赤のウェーブした髪に、赤味がかった茶色い目。小さい頃から鍛えていた体はジュリアと同い年とは思えない程にメリハリがあり、迫力の美人だった。
名はビビアナという。
隣のクラスには、ミケーレの話題にあがった辺境の貿易会社の娘もいた。
こちらは真っ黒なサラサラの髪に、焦げ茶色の瞳の清楚系のスラリとした美人である。
「私、先祖返りですの。3代遡っても居ない、珍しい髪色で」と本人が言う通り、この国では珍しい色味である。
彼女の名前は、クラウディアといった。
美人二人に挟まれているジュリアは、亜麻色の髪に明るい茶色の瞳の、可愛い雰囲気をした令嬢だ。
ビビアナとクラウディアの背が高いので、ジュリアを守る護衛か、よくて姉にしか見えない。
本家の令嬢というだけでなく、ジュリアのおっとりとした雰囲気が二人は大好きになっていた。
「そういえば、ジュリア様の婚約者ってこの学園に居るんですよね?」
ビビアナがランチの唐揚げを一口大にした物をジュリアの皿に取り分けながら質問をする。
「はい。一つ上にいらっしゃるみたいです」
中途半端なジュリアの返事に、今度はクラウディアが海老フライを一口分切り分け、やはりジュリアの皿に載せながら、問い掛ける。
「まさかお会いしてないのですか?」
困ったように微笑んだジュリアは、無言で頷いた。
ジュリアは自分のハンバーグを二切れ、ビビアナとクラウディアの皿に載せた。
普通に考えたらあまり貴族らしくない行動だが、これには意味があった。
実は学園の食堂は、アンドレオッティ子爵家の系列のレストランが入っている。
その為に、ちゃんと味を保持出来ているか色々食べてみるのだ。
かといってジュリア一人で何種類も食べられるわけはなく、三人でシェアする事にしてもらったのだ。
傍から見ると女子が三人で、キャイキャイ楽しそうに食べているようにしか見えない。
会話の内容を厨房が聞いたら、顔面蒼白になりそうだが……。
「ハンバーグは、作り置き時間が長すぎますね。学生食堂という事を加味しても、冷め過ぎです」
「海老フライは、揚げ過ぎですわね」
「唐揚げは合格ですね。一番人気なので、力を入れているのでしょう」
ジュリアは手帳に二人の意見と、自分の評価をメモする。
『必要なら、人手の補充』と隅に追記して、手帳を閉じた。
三人で食事をしている風景を、睨みつけるように見ている生徒が居た。
ジュリアの婚約者のリディオである。
「なんだアレは……他の令嬢にランチを恵んで貰ってるのか?」
前提に『貧乏な子爵家』が有る為、リディオがジュリアを見る目は悪い方へ曇っていた。
129
お気に入りに追加
3,533
あなたにおすすめの小説
お姉さまは最愛の人と結ばれない。
りつ
恋愛
――なぜならわたしが奪うから。
正妻を追い出して伯爵家の後妻になったのがクロエの母である。愛人の娘という立場で生まれてきた自分。伯爵家の他の兄弟たちに疎まれ、毎日泣いていたクロエに手を差し伸べたのが姉のエリーヌである。彼女だけは他の人間と違ってクロエに優しくしてくれる。だからクロエは姉のために必死にいい子になろうと努力した。姉に婚約者ができた時も、心から上手くいくよう願った。けれど彼はクロエのことが好きだと言い出して――
いつまでも甘くないから
朝山みどり
恋愛
エリザベスは王宮で働く文官だ。ある日侯爵位を持つ上司から甥を紹介される。
結婚を前提として紹介であることは明白だった。
しかし、指輪を注文しようと街を歩いている時に友人と出会った。お茶を一緒に誘う友人、自慢しちゃえと思い了承したエリザベス。
この日から彼の様子が変わった。真相に気づいたエリザベスは穏やかに微笑んで二人を祝福する。
目を輝かせて喜んだ二人だったが、エリザベスの次の言葉を聞いた時・・・・
今世は好きにできるんだ
朝山みどり
恋愛
誇り高く慈悲深い、公爵令嬢ルイーズ。だが気が付くと粗末な寝台に横たわっているのに気がついた。
鉄の意志で声を押さえ、状況・・・・状況・・・・確か藤棚の下でお茶会・・・・ポットが割れて・・・侍女がその欠片で・・・思わず切られた首を押さえたが・・・・首にさわった手ががさがさ!!!?
やがて自分が伯爵家の先妻の娘だと理解した。後妻と義姉にいびられている、いくじなしで魔力なしの役立たずだと・・・・
なるほど・・・今回は遠慮なく敵をいびっていいんですわ。ましてこの境遇やりたい放題って事!!
ルイーズは微笑んだ。
王妃はわたくしですよ
朝山みどり
恋愛
王太子のやらかしで、正妃を人質に出すことになった。正妃に選ばれたジュディは、迎えの馬車に乗って王城に行き、書類にサインした。それが結婚。
隣国からの迎えの馬車に乗って隣国に向かった。迎えに来た宰相は、ジュディに言った。
「王妃殿下、力をつけて仕返ししたらどうですか?我が帝国は寛大ですから機会をたくさんあげますよ」
『わたしを退屈から救ってくれ!楽しませてくれ』宰相の思惑通りに、ジュディは力をつけて行った。
ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。
両親から溺愛されている妹に婚約者を奪われました。えっと、その婚約者には隠し事があるようなのですが、大丈夫でしょうか?
水上
恋愛
「悪いけど、君との婚約は破棄する。そして私は、君の妹であるキティと新たに婚約を結ぶことにした」
「え……」
子爵令嬢であるマリア・ブリガムは、子爵令息である婚約者のハンク・ワーナーに婚約破棄を言い渡された。
しかし、私たちは政略結婚のために婚約していたので、特に問題はなかった。
昔から私のものを何でも奪う妹が、まさか婚約者まで奪うとは思っていなかったので、多少驚いたという程度のことだった。
「残念だったわね、お姉さま。婚約者を奪われて悔しいでしょうけれど、これが現実よ」
いえいえ、べつに悔しくなんてありませんよ。
むしろ、政略結婚のために嫌々婚約していたので、お礼を言いたいくらいです。
そしてその後、私には新たな縁談の話が舞い込んできた。
妹は既に婚約しているので、私から新たに婚約者を奪うこともできない。
私は家族から解放され、新たな人生を歩みだそうとしていた。
一方で、私から婚約者を奪った妹は後に、婚約者には『とある隠し事』があることを知るのだった……。
くだらない冤罪で投獄されたので呪うことにしました。
音爽(ネソウ)
恋愛
<良くある話ですが凄くバカで下品な話です。>
婚約者と友人に裏切られた、伯爵令嬢。
冤罪で投獄された恨みを晴らしましょう。
「ごめんなさい?私がかけた呪いはとけませんよ」
一年で死ぬなら
朝山みどり
恋愛
一族のお食事会の主な話題はクレアをばかにする事と同じ年のいとこを褒めることだった。
理不尽と思いながらもクレアはじっと下を向いていた。
そんなある日、体の不調が続いたクレアは医者に行った。
そこでクレアは心臓が弱っていて、余命一年とわかった。
一年、我慢しても一年。好きにしても一年。吹っ切れたクレアは・・・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる