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01:子爵家と伯爵家

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 アンドレオッティ子爵家は、国内外問わず事業を展開する大財閥だった。
 元は隣国の公爵家とも王族とも言われているが、どれも噂の域を出ない。
 親戚には自国の公爵や伯爵もいるのに、本家は未だに子爵位のままだった。
 国からは何度も陞爵しょうしゃくを打診されていたが、なぜか固辞している。

 実は単純な理由で、伯爵位以上の高位貴族になると、貴族としても義務として夜会等の社交への参加強制が増える。
 お茶会開催回数も、著しく増える。
 それを貴族の優越感として感じるのならば、何も影響は無かっただろう。
 しかし仕事大好きな子爵家の血筋は、陞爵による利点より不利益を重要視したのだ。

 子爵としての領地に対する納税は、大した額ではない。
 しかし財閥としての納税額は、国内最高額だった。


 アンドレオッティ子爵家には、一人娘がいる。
 蝶よ花よと育てられたが、我儘で高慢なところは一切無い、素直な令嬢だった。
 ちょっとおっとりとし過ぎているきらいはあるが、商売人としての確かな眼力も持ち合わせているので、それほど心配はされていない。

 そんな一人娘のジュリアに、12歳の時に婚約者が出来た。
 リディオ・ザンテデスキ伯爵令息だ。
 ジュリアの一つ上で、既に貴族学園に入学している。
 その為に、婚約が成立してから顔合わせまで、半年ほどの期間が開いた。
 ジュリアが貴族学園の入学準備の為に王都へ行った際に、初めて会う事になったのだ。


 リディオがジュリアの婚約者になったのは、ザンテデスキ伯爵がテーブルに頭を擦りつけて懇願したからだった。
 そこでは一応保留にしたのだが、そのまま話を続けていたら、伯爵は床で土下座をしていただろう。
 それほどの勢いだった。

 ザンテデスキ伯爵家は、領地に特産品もなく、アンドレオッティ子爵家との取引で何とか借金を作らずに済んでいた。
 それも、伯爵と子爵が学生時代の友人だからと若干の優遇があっての取引だった。
「君の領地は特産が無いのだから、せめて職人とかを育てないと駄目だよ」
 学生時代にカルミネ現子爵が、ドメニコ現伯爵によく言っていた。

「子爵家のアンドレオッティと、伯爵家のザンテデスキは地力が違うから大丈夫なんだよ」
 そう言って笑っていたドメニコ・ザンテデスキ伯爵は、カルミネ・アンドレオッティ子爵へ頼み込んで、自領の安定の為に婚約を結んで貰っていた。
 ちっとも大丈夫では無かったのである。


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