2 / 49
01:子爵家と伯爵家
しおりを挟むアンドレオッティ子爵家は、国内外問わず事業を展開する大財閥だった。
元は隣国の公爵家とも王族とも言われているが、どれも噂の域を出ない。
親戚には自国の公爵や伯爵もいるのに、本家は未だに子爵位のままだった。
国からは何度も陞爵を打診されていたが、なぜか固辞している。
実は単純な理由で、伯爵位以上の高位貴族になると、貴族としても義務として夜会等の社交への参加強制が増える。
お茶会開催回数も、著しく増える。
それを貴族の優越感として感じるのならば、何も影響は無かっただろう。
しかし仕事大好きな子爵家の血筋は、陞爵による利点より不利益を重要視したのだ。
子爵としての領地に対する納税は、大した額ではない。
しかし財閥としての納税額は、国内最高額だった。
アンドレオッティ子爵家には、一人娘がいる。
蝶よ花よと育てられたが、我儘で高慢なところは一切無い、素直な令嬢だった。
ちょっとおっとりとし過ぎているきらいはあるが、商売人としての確かな眼力も持ち合わせているので、それほど心配はされていない。
そんな一人娘のジュリアに、12歳の時に婚約者が出来た。
リディオ・ザンテデスキ伯爵令息だ。
ジュリアの一つ上で、既に貴族学園に入学している。
その為に、婚約が成立してから顔合わせまで、半年ほどの期間が開いた。
ジュリアが貴族学園の入学準備の為に王都へ行った際に、初めて会う事になったのだ。
リディオがジュリアの婚約者になったのは、ザンテデスキ伯爵がテーブルに頭を擦りつけて懇願したからだった。
そこでは一応保留にしたのだが、そのまま話を続けていたら、伯爵は床で土下座をしていただろう。
それほどの勢いだった。
ザンテデスキ伯爵家は、領地に特産品もなく、アンドレオッティ子爵家との取引で何とか借金を作らずに済んでいた。
それも、伯爵と子爵が学生時代の友人だからと若干の優遇があっての取引だった。
「君の領地は特産が無いのだから、せめて職人とかを育てないと駄目だよ」
学生時代にカルミネ現子爵が、ドメニコ現伯爵によく言っていた。
「子爵家のアンドレオッティと、伯爵家のザンテデスキは地力が違うから大丈夫なんだよ」
そう言って笑っていたドメニコ・ザンテデスキ伯爵は、カルミネ・アンドレオッティ子爵へ頼み込んで、自領の安定の為に婚約を結んで貰っていた。
ちっとも大丈夫では無かったのである。
121
お気に入りに追加
3,533
あなたにおすすめの小説
お姉さまは最愛の人と結ばれない。
りつ
恋愛
――なぜならわたしが奪うから。
正妻を追い出して伯爵家の後妻になったのがクロエの母である。愛人の娘という立場で生まれてきた自分。伯爵家の他の兄弟たちに疎まれ、毎日泣いていたクロエに手を差し伸べたのが姉のエリーヌである。彼女だけは他の人間と違ってクロエに優しくしてくれる。だからクロエは姉のために必死にいい子になろうと努力した。姉に婚約者ができた時も、心から上手くいくよう願った。けれど彼はクロエのことが好きだと言い出して――
今世は好きにできるんだ
朝山みどり
恋愛
誇り高く慈悲深い、公爵令嬢ルイーズ。だが気が付くと粗末な寝台に横たわっているのに気がついた。
鉄の意志で声を押さえ、状況・・・・状況・・・・確か藤棚の下でお茶会・・・・ポットが割れて・・・侍女がその欠片で・・・思わず切られた首を押さえたが・・・・首にさわった手ががさがさ!!!?
やがて自分が伯爵家の先妻の娘だと理解した。後妻と義姉にいびられている、いくじなしで魔力なしの役立たずだと・・・・
なるほど・・・今回は遠慮なく敵をいびっていいんですわ。ましてこの境遇やりたい放題って事!!
ルイーズは微笑んだ。
いつまでも甘くないから
朝山みどり
恋愛
エリザベスは王宮で働く文官だ。ある日侯爵位を持つ上司から甥を紹介される。
結婚を前提として紹介であることは明白だった。
しかし、指輪を注文しようと街を歩いている時に友人と出会った。お茶を一緒に誘う友人、自慢しちゃえと思い了承したエリザベス。
この日から彼の様子が変わった。真相に気づいたエリザベスは穏やかに微笑んで二人を祝福する。
目を輝かせて喜んだ二人だったが、エリザベスの次の言葉を聞いた時・・・・
王妃はわたくしですよ
朝山みどり
恋愛
王太子のやらかしで、正妃を人質に出すことになった。正妃に選ばれたジュディは、迎えの馬車に乗って王城に行き、書類にサインした。それが結婚。
隣国からの迎えの馬車に乗って隣国に向かった。迎えに来た宰相は、ジュディに言った。
「王妃殿下、力をつけて仕返ししたらどうですか?我が帝国は寛大ですから機会をたくさんあげますよ」
『わたしを退屈から救ってくれ!楽しませてくれ』宰相の思惑通りに、ジュディは力をつけて行った。
一年で死ぬなら
朝山みどり
恋愛
一族のお食事会の主な話題はクレアをばかにする事と同じ年のいとこを褒めることだった。
理不尽と思いながらもクレアはじっと下を向いていた。
そんなある日、体の不調が続いたクレアは医者に行った。
そこでクレアは心臓が弱っていて、余命一年とわかった。
一年、我慢しても一年。好きにしても一年。吹っ切れたクレアは・・・・・
くだらない冤罪で投獄されたので呪うことにしました。
音爽(ネソウ)
恋愛
<良くある話ですが凄くバカで下品な話です。>
婚約者と友人に裏切られた、伯爵令嬢。
冤罪で投獄された恨みを晴らしましょう。
「ごめんなさい?私がかけた呪いはとけませんよ」
ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。
元王妃は時間をさかのぼったため、今度は愛してもらえる様に、(殿下は論外)頑張るらしい。
あはははは
恋愛
本日わたくし、ユリア アーベントロートは、処刑されるそうです。
願わくは、来世は愛されて生きてみたいですね。
王妃になるために生まれ、王妃になるための血を吐くような教育にも耐えた、ユリアの真意はなんであっただろう。
わあああぁ 人々の歓声が上がる。そして王は言った。
「皆の者、悪女 ユリア アーベントロートは、処刑された!」
誰も知らない。知っていても誰も理解しない。しようとしない。彼女、ユリアの最後の言葉を。
「わたくしはただ、愛されたかっただけなのです。愛されたいと、思うことは、罪なのですか?愛されているのを見て、うらやましいと思うことは、いけないのですか?」
彼女が求めていたのは、権力でも地位でもなかった。彼女が本当に欲しかったのは、愛だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる