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「私の居ない間にそんな事が……つぶす。絶対に潰す。完膚無きまでに潰す」 
 5日ぶりに登校して来たイレーニアとジェネジオにくだんの事件を説明すると、怒りまくったジェネジオの口から呪詛のような低い声が漏れた。
 それを聞いて、フェデリーカとオズヴァルドは顔を見合わせる。

「……えぇと、もう潰れてます」
 なぜか申し訳無い気持ちになりながら、オズヴァルドが言う。
「え?」
「は?」
「はぁ!?」
 一緒に聞いていたロザリアまで驚きの声を出す。
 それはそうだろう。
 昨日両親から説明を聞いたフェデリーカとオズヴァルドも、三人と同じ反応をした。

「早過ぎません?」
 イレーニアが皆の思っているであろう事を代表して口にする。
「内容が悪質なのと、くつがえしようの無い映像での証拠があるのと、それを用意したのが王家の影だった事で、早急に裁判が行われて即日刑が決まったらしい」
 オズヴァルドが昨夜、父親のフランチェスコから聞いたままに説明する。


「えいぞう?って何?」
 ロザリアが聞いてくる。
 それに答えたのはオズヴァルドでは無い。
「これですわね」
 イレーニアがポケットから魔導具を取り出すと、昨日の青年と同じ呪文を呟く。
 映し出されたのは、可愛い猫の映像だった。

「ウルバーノ様が開発した魔導具で、その場に起きた事を記録出来るのです」
 この子はうちのウィルちゃん、可愛いでしょ?とペット自慢をする事も忘れない。
 ちなみにウルバーノとはこの国の第三王子で、イレーニアが研究馬鹿と言った婚約者である。

「スティーグ様とそのお仲間、そして侯爵令嬢が犯罪計画を話している現場が映像でありましたので」
 フェデリーカが補足すると、ジェネジオが眉間に皺を寄せて何やら考え込む。
 小さく「侯爵令嬢?」と呟いている。
 それが聞こえたフェデリーカは、更に補足する。
「侯爵令嬢は、ジェネジオ様を婿に迎えるつもりだと言ってました」


 ジェネジオの顔がフェデリーカの説明を聞いて、更に歪んだ。
 台詞を付けるなら「ウヘェ」だろうか。
「やはりあの勘違い侯爵令嬢か……。どうりで今日は平和だと思った」
 聞けば、侯爵令嬢は犯罪に近い付きまとい行為をしていたらしい。

 承諾もしていない婚約の契約書を押し付けてきたり、他の令嬢がジェネジオに近付くのを邪魔したり、陰ではジェネジオの婚約者だと勝手に名乗っていた。
 お決まりの台詞が「侯爵家に逆らうと、どうなるかしらね?」だった。
 さすが爵位至上主義者である。

 実はそろそろ本気で、公爵家から侯爵家へ抗議しようとしていたらしい。
 手紙は何度も送っていたのに改善されないので、法的手段を取る手続き中だったのだ。
 その情報を侯爵令嬢はどこからか手に入れたのかもしれない。


 それにしても、なぜ仲介を頼んだ相手がよりによってスティーグなのだろうか。
 ジェネジオの妹イレーニアがフェデリーカと仲が良い事を知っていれば、間違ってもスティーグには頼まないだろう。
 悪手である。
 まだオズヴァルドやジェネジオのクラスメートに頼んだ方が可能性があっただろうに……。


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