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20:大人達の話
しおりを挟む時は少し遡り、スティーグとフェデリーカの婚約がスティーグ有責での破棄が決定された後。
予定通り立会人欄の署名は、エルヴィディオ・ダヴォーリオ公爵令息とディーノ・ザンドナーイ公爵令息の二人が行った。
ダヴォーリオ公爵本人は、慰謝料等が記載された書類を作成し、ベッラノーヴァ侯爵とスティーグに署名させていた。
「はい。ではベッラノーヴァ侯爵家の皆様さようなら。私はティツィアーノ伯爵と話があるのでね」
書類が完成したのを確認した公爵は、自身の護衛騎士へ命令して、三人をティツィアーノ伯爵邸から追い出してしまった。
応接室に沈黙が落ちる。
どちらかと言うと、呆気に取られていると言った方が正しいかもしれない。
「ここからは大人の話し合いだからね。子供達は好きに過ごしなさい。あぁ、君達は仕事へ戻りなさいね」
ティツィアーノ伯爵邸なのだが、なぜかダヴォーリオ公爵が仕切っていた。
「えぇと、お言葉に甘えて?私達はお庭でも見せていただこうかしら?」
イレーニアがフェデリーカへ引き攣った笑顔を向ける。
「そ、そうね。別室で待ってるリアと合流しましょうか」
フェデリーカも愛想笑いを浮かべる。
二人の後を続こうとしたジェネジオの腕を、オズヴァルドが掴む。
「男は男同士で」
オズヴァルドは嬉々としてジェネジオを訓練場へと連れて行った。
フェデリーカとイレーニアとロザリアの三人が庭園での急遽決まったお茶会を満喫し、オズヴァルドとジェネジオが充分な鍛錬を堪能した頃。
大人達が応接室から出て来た。
三人の顔も満足気で、良い話が出来たようである。
「婚約破棄の書類は、エルヴィディオに出すように言っておいたので、即日受理されるはずだよ」
その頃、「くれぐれもよろしく、と父が申しておりました」と一言添えて提出されている事を、ティツィアーノ伯爵家は勿論知らない。
「さぁジェネジオ、イレーニア、帰ろうか」
父親に促されて、二人は挨拶をする。
「今日は良い時間を過ごせました」
「またお茶会に誘ってくださいましね」
三人が踵を返す前に、フェデリーカか1歩前に進み出る。
「今日は本当にありがとうございました」
フェデリーカが三人に頭を下げた。
「友達だもの。当然よ」
「これからも、遠慮無く頼って欲しい」
返された二人の言葉に、フェデリーカは更に笑顔を返した。
「これから長い付き合いになるかもしれないからねえ」
意味深なダヴォーリオ公爵の台詞には、フェデリーカは首を傾げた。
そしてこの翌日、ティツィアーノ伯爵家はカルカテルラ子爵家に対して、膨大な金額の慰謝料を請求するのである。
そこには、単なる婚約破棄の慰謝料だけでなく、業務提携によって得られたであろう金額も上乗せされていた。
浮気は男の甲斐性だなどと、本気で言っている貴族はまだ多い。
そのような前時代的な貴族は、第二夫人を娶るのに正妻の許可が必要になった事など知らないだろう。
その法案と共に、不貞行為をされた場合には、不貞相手にも慰謝料を請求出来るように法改正された事は、あまり知られていない。
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