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13:獣人の国 sideルーフリア

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 ソーベルビアがペレーザをしようとして、本能に任せて飛び掛かった。
 今の腑抜けたソーベルビアに対して未練はほぼ無く、噂の『美しい天人』に乗り換える気満々だったルーフリアは止める気も無かった。

 しかしルーフリアの予想とは違う、勿論襲い掛かったソーベルビアにも予想外の結果だったに違いない。
 飛び掛かった格好のまま、ソーベルビアの体が動かなくなったのだ。
 動かないというよりは、動けない、が正しい。


 獣化したソーベルビアがペレーザに飛び掛かった。
 そこまではルーフリアも理解していたし、見ていて密かに「ざまあみろ」と思っていた。
 尖った爪のソーベルビアに掴まれれば、痕の残る傷が付くのは間違い無いだろうと。
 しかしそのソーベルビアは、ビクともしていない。

「何?なんなの!何で止まってるのよ!」
 ルーフリアが叫ぶと、服のボタンが飛んだ。
 自分のを最大限に見せつけようと、胸の強調される小さめの服を選んでいたせいだろう。
 いつもは下着で多少胸を押さえ付けるのを、天人を虜にしたらすぐにに及べるように、直接着用していたのも悪かったのだろう。


 ルーフリアの目当ての天人は、邪魔者のペレーザを腕に抱き込んでおり、ソーベルビアを睨み付けている。
 その天人と遜色無い麗人達にも嫌悪の視線を向けられ、さすがのルーフリアも唇を噛んで黙り込んだ。
 1番の理由は、最後に来た亜人の雰囲気に呑まれたせいもある。

 そしてその漆黒の亜人が連れていた女は、肉食系獣人の好みと合致するたぐいの人間で、その上ルーフリアとは格が違った。
 雲泥の差である。
 言うまでもなく、相手が雲だ。

「あんな女に見慣れてるから、私をないがしろにしてたのか……」
 亜人達が自分に冷たい態度を取る理由を、ルーフリアは勝手に納得した。

「でも、あんなみすぼらしい女ペレーザなんかを相手にする人なら、誤解が解ければ私を選ぶわよね」
 天人がルーフリアよりペレーザを選んでいる理由は、自分をソーベルビアの婚約者だと誤解しているからだとルーフリアは思っていた。
 ルーフリアの中では、ペレーザは格下の存在で、絶対に負けるはずが無い相手だったからだ。




「私はソーベルビアの婚約者では無いのよ!」
 ルーフリアは、自慢の巨乳を寄せて、声を大きくして主張した。
「え?」
 そして、気付く。
 声を発する前と後では、見えている景色が違う。

 公園内で周りには屋台が並び、目の前には大きなテーブルと人外の美しさを持った亜人達が居たはずだった。
 約1名チンクシャが混じって居たが……。
 しかし今、目の前にあるのは荒れた広場だった。

 元は美しい彫刻だったろう像は腕が折れ、所々崩れ落ち、苔むしている。
 噴水だったのか、折れた腕の少し上辺りからチョロチョロと水が落ちている。
 下の溜池部分は、池というよりも沼に近い。
 下を見ると、石畳だった痕跡はあるが、長年放置されている状態だ。

「え?何これ。どこよここ」
 ルーフリアが呟いた瞬間、その肩に何者かの手が置かれた。
「ヒッ!!」
 悲鳴を飲み込み、横へ飛び退ずさる。
 ルーフリアの肩のあった位置に間抜けに手を伸ばしている、獣化の解けたソーベルビアが呆けた顔でルーフリアを見ていた。


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