上 下
9 / 21

08:増えました!

しおりを挟む



 おぉ!
 ワインと炭酸!
 これはスプリッツァーを作れという事ですね!?
 炭酸2本だけ持って来たのは、私の反応を見る為だったのでしょうか?
 もう、一度ガッカリさせておいて持ち上げるなんて、憎い演出ですね、カリナン様ってば!

「こんなにいっぱいじゃ、二人だけじゃ残っちゃうでしょう?ペレ~、親友の私達が手伝ってあげるわね!」
 料理とアルコールを前にホクホクなので、すっかり存在を忘れてました。
 阿婆擦れさんと、元婚約者です。
 貴女とは、親友どころか友人だった事も無いですけどね。

 阿婆擦れさんが椅子を引いて座ろうとしました。
 婚約者のはずの豹の獣人は放置ですか?
 私から奪うほど愛していたのでは?
 もしかしたら婚約はしてないのかしら。
 それでも恋人ではあるはずですよね。


「そこは友人が来るので、座らないでくれ」
 カリナン様が冷たく言い放ちました。
 友人?と首を傾げた時、横でカリナン様が指を鳴らしました。

「うおぁ!」
「は?」
「ん?呼び出しか」
 突然、目の前に人が現れました!
 カリナン様に負けず劣らずの美貌の持ち主が二人!更にタイプの違う美丈夫が一人です!
 角!角が生えてる方が居ますよ!
 捻れ角と黒光りする角なので、種類……種族が違うのでしょう。
 そしてカリナン様とは違う、透けていてキラキラ虹色に輝く羽が背中にある方も居ます!

 現れた瞬間は驚いていた御三方でしたが、カリナン様を認めて納得した後に、溜め息を吐き出しました。

「こう、まずは先触れという物をだのう」
 言いながら席に座ったのは、キラキラの羽で淡い緑の長い髪と濃い緑の瞳の方です。
 カリナン様もですが、羽を傷付けないように器用に席に座りますよね。
 そして優しい笑顔を私に向けてくれました。
 口調がちょっとうちの祖父みたいで、見た目との差異が凄いです。

 水色の真っ直ぐな清流のような髪に、捻れた角を持っている方は、無言で炭酸とワインのグラスを確保してから、席に座りました。
 不思議な青い色をした瞳は、瞳孔が縦に入っています。
 もしかして、何かの獣人なのでしょうか?

 他の方よりも体格の良い美丈夫な彼は、炎のように紅くうねった髪に、黒光りする角がとても似合っています。
 無言で席に着き、近くにあったワインと鳥串を自分の元に引き寄せました。
 あぁ、私の鳥串が!
 あ、目が合いました。3本ある鳥串のうちの1本を、無言で差し出されました。
「ありがとうございます」
 お礼を言うと、口元が微かに緩みました。



「え?何?魔法?えぇ?何よ、何でよ」
 阿婆擦れさんが叫んでいます。
 煩いですね。
 騒いだって起きた現象は変わりませんよ?
 私も魔法は初めて見ましたけど、現れた人の美しさに驚きましたけど、そこで騒ぐのは違うと思いますよ。

「俺のオススメの屋台料理!足りないだろうから、ひとまず食べたら屋台で買って来てね」
 カリナン様が三人へと挨拶をしました。
 挨拶?
 でも誰も何も気にしていないようです。
 それぞれが飲み物を手にしています。
 私も慌てて目の前のワインに炭酸を入れ、グラスを手に持ちました。
 片手にスプリッツァー、片手に鳥串。
 とても飲兵衛のんべぇな見た目です。

「はい!俺の運命に乾杯!」
 カリナン様がグラスを高くかかげました。
「何!?天人の!それは誠か?」
「鬼人の。それは後で、まずは乾杯だのう」
「妖精の!そうは言うが」
「鬼人のに妖精の、煩いぞ」
「竜人のは冷たいのう」
 はいはいはいはい。
 ちょっと待ってくださいね。
 とても不穏な単語が飛び交ってますよ。

「……乾杯」
 小さく呟いてから、私はスプリッツァーを口に含みました。
 唐揚げからいきたいところですが、渡された鳥串をまずは消費しなくては。
「あ、美味しい」
 塩ダレに柚子胡椒を足して正解でした。
 ポン酢ダレと甘辛ダレも気になりますが、今日は「鬼人の」と呼ばれていた彼に譲りましょう。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

くだらない冤罪で投獄されたので呪うことにしました。

音爽(ネソウ)
恋愛
<良くある話ですが凄くバカで下品な話です。> 婚約者と友人に裏切られた、伯爵令嬢。 冤罪で投獄された恨みを晴らしましょう。 「ごめんなさい?私がかけた呪いはとけませんよ」

その瞳は囚われて

豆狸
恋愛
やめて。 あの子を見ないで、私を見て! そう叫びたいけれど、言えなかった。気づかなかった振りをすれば、ローレン様はこのまま私と結婚してくださるのだもの。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。

ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。 ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も…… ※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。 また、一応転生者も出ます。

どんなに私が愛しても

豆狸
恋愛
どんなに遠く離れていても、この想いがけして届かないとわかっていても、私はずっと殿下を愛しています。 これからもずっと貴方の幸せを祈り続けています。 ※子どもに関するセンシティブな内容があります。

(完結)私が貴方から卒業する時

青空一夏
恋愛
私はペシオ公爵家のソレンヌ。ランディ・ヴァレリアン第2王子は私の婚約者だ。彼に幼い頃慰めてもらった思い出がある私はずっと恋をしていたわ。 だから、ランディ様に相応しくなれるよう努力してきたの。でもね、彼は・・・・・・ ※なんちゃって西洋風異世界。現代的な表現や機器、お料理などでてくる可能性あり。史実には全く基づいておりません。

誰ですか、それ?

音爽(ネソウ)
恋愛
強欲でアホな従妹の話。

【完】ある日、俺様公爵令息からの婚約破棄を受け入れたら、私にだけ冷たかった皇太子殿下が激甘に!?  今更復縁要請&好きだと言ってももう遅い!

黒塔真実
恋愛
【2月18日(夕方から)〜なろうに転載する間(「なろう版」一部違い有り)5話以降をいったん公開中止にします。転載完了後、また再公開いたします】伯爵令嬢エリスは憂鬱な日々を過ごしていた。いつも「婚約破棄」を盾に自分の言うことを聞かせようとする婚約者の俺様公爵令息。その親友のなぜか彼女にだけ異様に冷たい態度の皇太子殿下。二人の男性の存在に悩まされていたのだ。 そうして帝立学院で最終学年を迎え、卒業&結婚を意識してきた秋のある日。エリスはとうとう我慢の限界を迎え、婚約者に反抗。勢いで婚約破棄を受け入れてしまう。すると、皇太子殿下が言葉だけでは駄目だと正式な手続きを進めだす。そして無事に婚約破棄が成立したあと、急に手の平返ししてエリスに接近してきて……。※完結後に感想欄を解放しました。※

処理中です...