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第漆話(閑話)
しおりを挟むこれは、前にも出て来た従姉の話。
怖くは無い。
いや、ある意味とても怖い。
とにかく、幽霊の話では無い。
【猫と幽霊】
「猫ってさあ、時々1点を見つめて動かなくなるよね」
突然遊びに来た従姉が、前置きも無くそんな事を言い出した。
「こう、天井に近い壁をさ、ジーッと見つめて動かないの」
もしやあれか?
猫は人間には見えない物を見ているって話。
主に幽霊とかね。
「何で、あんな天井に高い位置に居るのに気が付くんだろうね」
ん?
「その前に、何であんな位置に居たんだろうね!」
はい?話が見えない。
「居たのよ!猫の視線の先に!黒いアイツが!」
はあ!?
「しかも私の座ってる席の後ろの壁によ!?」
それって……もしや。
「悲鳴上げて立ち上がったら、飛びやがったのよ!そんで、襲って来たのよ!」
ゲッ。
「猫抱えて逃げたわよ~!そしたら追って来たのよ~」
さっきからハッキリとは口にしないが、絶対にアレだよな。
黒光りして、太古からいる生物……てか、害虫。
「猫全員を玄関脇の部屋に閉じ込めて、ここに来たの」
「え?何で閉じ込めるの?」
「猫には良い玩具なのよ!追い掛けるのよ!猫パンチとかしちゃうの!ウッカリ齧ったりしたら、猫ごと捨てちゃうかもしれないぃ!!」
まぁ、この従姉は重度の猫好きだから捨てはしないだろうけど、動物病院へ連れて行って歯磨きはさせるだろうな。
「今から家に来て」
従姉が僕の手を握る。
これが目的か。
「無理です」
正直、僕も黒光りするGは大の苦手です。
その後、従姉は最終兵器のうちの母を連れて帰って行った。
ものの5分で終わったらしい。
「見付けるまでが大変だった」とは、母の談。
汚れている訳ではないけど、物が多いらしい。
趣味に生きてる人だからね。
後日、菓子折を持った従姉がお礼に来た。
「本当、あのジーッと1点を見つめるの止めて欲しいわ~。前はムカデが居たのよ!?」
従姉が言う。
「え?何も居ない方が嫌じゃない?」
理由が判らない方が、幽霊とか居そうで怖くない?
「はぁ!?別に何の影響も無い幽霊なんかより、実害の有る害虫のがよっぽど嫌だわ」
言われて、確かに……と納得してしまった。
実害があったら、幽霊も嫌だけどね。
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