上 下
7 / 9

第漆話(閑話)

しおりを挟む



 これは、前にも出て来た従姉の話。

 怖くは無い。
 いや、ある意味とても怖い。

 とにかく、幽霊の話では無い。


【猫と幽霊】


「猫ってさあ、時々1点を見つめて動かなくなるよね」
 突然遊びに来た従姉が、前置きも無くそんな事を言い出した。

「こう、天井に近い壁をさ、ジーッと見つめて動かないの」
 もしやあれか?
 猫は人間には見えない物を見ているって話。
 主に幽霊とかね。

「何で、あんな天井に高い位置に居るのに気が付くんだろうね」
 ん?
「その前に、何であんな位置に居たんだろうね!」
 はい?話が見えない。

「居たのよ!猫の視線の先に!黒いアイツが!」
 はあ!?
「しかも私の座ってる席の後ろの壁によ!?」
 それって……もしや。
「悲鳴上げて立ち上がったら、飛びやがったのよ!そんで、襲って来たのよ!」
 ゲッ。

「猫抱えて逃げたわよ~!そしたら追って来たのよ~」
 さっきからハッキリとは口にしないが、絶対にアレだよな。
 黒光りして、太古からいる生物……てか、害虫。

「猫全員を玄関脇の部屋に閉じ込めて、ここに来たの」
「え?何で閉じ込めるの?」
「猫には良い玩具なのよ!追い掛けるのよ!猫パンチとかしちゃうの!ウッカリ齧ったりしたら、猫ごと捨てちゃうかもしれないぃ!!」
 まぁ、この従姉は重度の猫好きだから捨てはしないだろうけど、動物病院へ連れて行って歯磨きはさせるだろうな。

「今から家に来て」
 従姉が僕の手を握る。
 これが目的か。
「無理です」
 正直、僕も黒光りするGは大の苦手です。


 その後、従姉は最終兵器のうちの母を連れて帰って行った。
 ものの5分で終わったらしい。
「見付けるまでが大変だった」とは、母の談。
 汚れている訳ではないけど、物が多いらしい。
 趣味に生きてる人だからね。


 後日、菓子折を持った従姉がお礼に来た。
「本当、あのジーッと1点を見つめるの止めて欲しいわ~。前はムカデが居たのよ!?」
 従姉が言う。
「え?何も居ない方が嫌じゃない?」
 理由が判らない方が、幽霊とか居そうで怖くない?

「はぁ!?別に何の影響も無い幽霊なんかより、実害の有る害虫のがよっぽど嫌だわ」
 言われて、確かに……と納得してしまった。

 実害があったら、幽霊も嫌だけどね。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

禁じられた遊び-醜悪と性愛の果て-

柘榴
ホラー
ある少女の家族の中では、『禁じられた遊び』があった。 それはあまりにも歪で、忌々しく、醜悪な遊び。そして、その遊びは少女の弟の精神を蝕み続け、やがて弟を自殺に追いやる事となる。 殺したのだ、実の姉であるその少女が。 実の弟・由宇に対し、『禁じられた遊び』を強要し続けていた真奈と加奈の二人。 しかし、ある時、由宇はその苦痛と屈辱に耐えきれずに自殺してしまう。 由宇の自殺から十五年。真奈と加奈は再会し、愛と狂気と憎しみが再び交差する。 究極かつ醜悪な『近親愛』がこの物語に。

吸収

玉城真紀
ホラー
この世には説明がつかない事が沢山ある。その中の一つ「胎児」に焦点を当ててみよう。

同窓会

sgru3
ホラー
初めての方もそうでない方も、改めまして「sgru3」です。 今作品「同窓会」は「自己紹介作品」として、数々のサイトにて掲載歴がある作品です。 「いじめ」をテーマとした短編のホラー作品です。 もう15年は内容をほとんど変えていない作品ですが、自己紹介作品として今でも愛用している作品です。 拙い部分も当時のままですが、よければ一読してみてください。 ※この作品はフィクションであり、登場する人物名・団体名は全て架空のものです。

ねえ、魚のエサにしちゃおっか

南極
ホラー
ーー明日が来るのが怖かった。 今日もまた眠れない。 寝たって寝なくたって未来は続くのに。 僕こんなに頑張ったし死んでもいいよね。 本当は誰か助けてほしかった。 自殺する勇気がない高校一年生の立川スズキ(男)と殺人が日常生活の一部になりつつある中学二年生の山田翔太(男)。 ある日、スズキは翔太の立ち上げた闇サイトにたどり着く。 2020年12月 構想 2021年1月 設定作り 2021年2月 書き始め 2021年10月 手直し、完結 2023年10月 アフターストーリー執筆開始

牡丹は愛を灯していた

石河 翠
ホラー
夫の浮気現場を目撃した主人公。彼女は、動揺のあまりとある化粧品売り場に駆け込んだ。売り場の美容部員は、経済DVにより身なりを整えることもできない彼女にお試しメイクを施す。 気乗りしないまま化粧をされた主人公だが、美容部員とのやり取りから、かつての自分を思い出し始める。そして、自分の幸せのために戦うことを決意するのだった。 ところが夫はなかなか離婚に応じようとしない。疲れはてた彼女は、美容部員から渡されたとあるアロマキャンドルを取り出してみた。疲労回復効果があるというアロマキャンドルに火をともすと、目の前に広がったのは怪談「牡丹灯籠」の世界だった。 彼女は牡丹灯籠を下げ、夫の元へ歩きだす。きっぱりと別れを告げるために。 虐げられていた女性が自分を取り戻し、幸せに向かって歩きだすまでのお話。 扉絵は、貴様二太郎さまのイラストをお借りしています。 この作品は、小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。

白蛇の化女【完全版】

香竹薬孝
ホラー
 舞台は大正~昭和初期の山村。  名家の長男に生まれた勝太郎は、家の者達からまるでいないもののように扱われる姉、刀子の存在を不思議に思いつつも友人達と共に穏やかな幼少期を過ごしていた。  しかし、とある出来事をきっかけに姉の姿を憑りつかれたように追うようになり、遂に忌まわしい一線を越えてしまいそうになる。以来姉を恐怖するようになった勝太郎は、やがて目に見えぬおぞましい妄執の怪物に責め苛まれることに――  というようなつもりで書いた話です。 (モチーフ : 宮城県・化女沼伝説) ※カクヨム様にて掲載させて頂いたものと同じ内容です   

全ての者に復讐を

流風
ホラー
「ちょっとだけならいいよね?」 始まりは、女神の暇つぶしだった。 女神により幸運値を最低限まで下げられた15歳の少女。そのため人生最悪。学校で、SNS上でイジメにあった。 最終的に妊娠してしまい、そのまま生埋め。 恨みを持って死んでしまった少女の復讐が始まる。その復讐相手は誰なのか、神以外知らない。 ※卑猥な単語と残虐な表現があるため、R-15にしています。 ※全4話

【完結】わたしの娘を返してっ!

月白ヤトヒコ
ホラー
妻と離縁した。 学生時代に一目惚れをして、自ら望んだ妻だった。 病弱だった、妹のように可愛がっていたイトコが亡くなったりと不幸なことはあったが、彼女と結婚できた。 しかし、妻は子供が生まれると、段々おかしくなって行った。 妻も娘を可愛がっていた筈なのに―――― 病弱な娘を育てるうち、育児ノイローゼになったのか、段々と娘に当たり散らすようになった。そんな妻に耐え切れず、俺は妻と別れることにした。 それから何年も経ち、妻の残した日記を読むと―――― 俺が悪かったっ!? だから、頼むからっ…… 俺の娘を返してくれっ!?

処理中です...