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21:王太子 Ⅲ 18歳
しおりを挟む『災害』と『疫病』と『殺戮』が国内に蔓延した。
おかしな言い方だが、他に表現のしようがなかった。
聖女が俺の子を身籠り、産んだ。
三つ子の男児で、予定よりも大分早く生まれた子の誕生日は、奇しくも12月31日だった。
神の巫女が神聖国へ行ってしまったので、神の国を名乗る事が出来なくなってしまった。
それもこれも、俺に振られた腹いせに、国を出て行ったあの女のせいだ。
しかも実家の公爵まで、他国に身売りしやがった。
この国の高位貴族は、殆どがこの国の建国前から自領を治めていた者達だ。
国から与えた物では無いので、他国へ身売りしてもどうしようもない。
しかも今回は、神聖国が絡んでいた。
もし咎めようものなら、神聖国と関わりのある全ての国を相手に戦争をする、くらいの覚悟を決めなくてはいけなくなるだろう。
「神の国がなんだ。今度は救世主の国だ!」
父は友香の話を聞いて、召喚された聖女だと信じた。
そして三つ子の映像を全世界に配信した。
みるみる成長していく我が子達。
さすがの俺でも解る。
この成長速度は異常だ。
これは、異世界の聖女の血が入っているから、で済ませて良いものだろうか?
まだ名付けていなかった我が子達が、自己紹介した。
凶事だった。
神の御告げ通りの、間違いの無い凶事だった。
配信の為に王宮へ呼ばれていた魔法使いの中の一人が「邪神の聖女の子だ」と呟いて、部屋を飛び出した。
そのせいで、世界各国への我が子の配信は終わった。
でも、それで良かったかもしれない。
この後の出来事は、地獄絵図だったから。
『災害』の姿が煙のようになり、空へ昇った。
すると外が急に真っ暗になり、激しい嵐が吹き荒れた。
建物を崩す程の嵐だ。
『疫病』の姿が溶けるように床に広がり、それに触れた者は皆、目が虚ろになり、肌の色は赤黒く変色し、バタバタと倒れた。
『殺戮』が霧のように広がり、室内の人間を包んだ。
霧から出て来た者は、目は焦点を結んでおらず、残忍な笑顔を浮かべていた。
魔法使いは魔法で、護衛騎士は剣で、周りに居る人間を殺していった。
『凶事が生まれる。年末には其の者の世界が滅びるだろう』
突然、あの女の言葉が脳裏によみがえった。
「最後は貴方と共に滅ぶ国を、私はしっかりと見届けますわね。それが神の巫女の責任だと思いますから」
ここには居ない、女の声が聞こえた。
俺はどこで間違えたのだろうか。
あのまま、神の巫女と結婚してやれば良かった。
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