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大事な友人

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 夕食後私とジェイラスは、リオンくんにリンメルに旅立つことを告げた。

 するとリオンくんはいつになく難しい表情をして、じっと私たちを見つめた。

「僕はずっと言いたいことがありました」

 そう真面目な口調で告げられてドキリとする。

 ここはリオンくんの私室で、グレタさんも居る。

「そろそろ僕らを巻き込んでください、と」

 ……巻き込む?
 リオンくんの台詞に、私とジェイラスは顔を見合わせた。

「……お二人が何かを隠しているだろうことは、最初から気付いていました。何もかも話して欲しいなんて思ってません。けれど、僕らはもう友人であると……そう思っています。友人に何かがあれば手を貸します。友人が危ない目に遭っていれば助けに行きます。例えば、お二人がリンメルから戻られなければ、僕らは探しに行きます。大切なお二人のために、僕らは心を砕くほどには、もう親しくさせて頂いているのです」

 リオンくんはまだ子供と言える歳だ。
 なのに何も伝えていなかったのに、こんなにもたくさんのことを考えてくれていたんだって知る。

「もしも、少しでも同じ気持ちを抱いてくれているのなら……あなた方の困難の手助けをさせて下さい」

 ジェイラスを見上げると、リオンくんを探るように見つめている。

 感情なんて伝わってこなくても、ジェイラスの気持ちがわかる気がした。彼はこんな台詞を言われたことがきっとないんだ。だから、驚いて、言葉の裏がないか考えて、真意を探ろうとしてる。

 でも私は知ってる。
 リオンくんは私と同じ人種だ。
 つまり、ジェイラスが大好きな人なのだ!

「……ジェイラス」

 呼びかけるとジェイラスが私を見つめる。

「私は、リオンくんとグレタさんに聞いてもらいたい。お二人が大好きだから、私たちのことを分かってもらいたい。迷惑を掛けてしまうことが心配だけど、それ以上に気持ちに応えたい」
「……」

 ジェイラスは瞳を揺らしながら見つめ返してくれる。

「僕も、お二人が大好きですよ」
「恥ずかしながら、私もです」

 そう言ってくれる2人の感情を……きっとジェイラスは感じ取っているのだろう。

 戸惑うようにジェイラスは立ち尽くす。

 そっと手を握り、私からも大好きな気持ちを念を込めて送ってみた。

 するとジェイラスが少し身動いで私を見下ろす。その目が言ってる。『何を伝えるんだ』と。少し頬を朱に染めて。

 私は余計に大好きな気持ちが膨らんで微笑んでしまう。

「ジェイラス……どうしたい?あなたの好きなように」

 私は彼の人生の、一時の添え物だ。これからも続いていく彼らの関係に口出しなんて出来ない。

「……良いのか?お前は、お前のことを話しても」

 私のことを気にしてくれていたらしい。やっぱりジェイラスは優しい。

「うん……」

 嬉しくて満面の笑みで答える。
 ジェイラスはそんな私を、少しだけ優しく目を細めて見つめた。







 リオンくん達に今までのことを話した。


 ジェイラスの背中にあった悪魔の証のこと。
 それが私に移ったこと。
 私は記憶を失った貴族の娘だろうこと。
 追放された身の上のこと、魔法が使えること、もう1人の私が存在すること。
 私のこれからの安全を確保するために、過去のことを調べに行く予定だということ。


 話している間に、ジェイラスは度々2人の様子を窺うように見つめていた。2人の心の動きを気にしていたのかもしれない。だけど私には何も変わったようには思えなかったし、ジェイラスの表情も変わっていなかった。

 ジェイラスは感情が伝わってきていることや、ルシアから聞いた思考を左右することが出来ることは話さなかった。

 きっとそれはとても大事なことだからなんだろうな、と思う。

 とても長い話になった。

 けれどリオンくんは、時々質問をしながら、真摯な態度で話しを聞いてくれた。

 疑っている様子も、否定する様子もなかった。それはグレタさんも一緒だ。

 長い話が終わると、2人は話し合ってから少し考えているようだった。

 リオンくんは私に向き直ると言った。

「ルーシーさん……いえ、ルシアさん」
「あ、えっと、ルーシーで良いです」
「はい、ルーシーさん……」

 リオンくんはにっこりと笑う。

「僕はお二人を大事な友人だと思っています」
「私もです。ルーシーさん」

 グレタさんも同意する。

「リンメルに行く時、是非僕たちも同行させて下さい」
「お供いたします」

 思わず、えっと声を上げてしまう。

 見上げると、ジェイラスも呆気に取られている。

 リオンくんとグレタさんはとても良い笑顔を私たちに向けていた。
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