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8 新天地2
しおりを挟む一年経った頃、魔法研究所に移らないかと相談があった。
「魔法課所属とはいえ私は事務員ですよ?」
「大丈夫だよ。魔法研究所は、魔法使いを雇っている専門部門なんだけど、君の経歴を見て是非にとお願いされたんだよ。話だけでも聞きに行ったら?給料がかなり上がるはずだよ」
「お給料がですか!」
それなら高級肉も夢ではないかと思い話を聞きに行くと、魔法研究所の所長はイシュハル様だった。
「やぁやぁ、元気だった?」
「え、え、イシュハル様!?」
ふふん、と楽しそうな笑みを浮かべた彼は、「僕が所長だよ~」と言った。
「と言っても、国に戻って来たのは僕も最近。ずっと外交の仕事もさせられてたからね」
「そうだったんですか~」
「君のことも気に掛けてたけど、伝え聞く限り楽しそうにしているみたいだったね?」
「良くしていただいていましたよ~フィリアは良い国ですね。国が豊かなおかげで、皆さん優しくて生き方に余裕があると思います」
「あ~あの国に比べれば多少はねぇ」
「……」
生まれた国は、厳しい階級社会で、貧富の差も激しかったから。
「ずっと会いたかったんだけど、戻って来たことだし、折角だからスカウトしちゃおうかと思って声掛けたんだ」
「はぁ……」
イシュハル様は私の胸のペンダントをじっと見つめた。
「学園でずっと研究していただろう。そのペンダントについて」
「そうですね。いろいろな魔法を魔道具に応用できないかと思って」
「それは魔物除けだけど」
「効果は抜群ですよ!」
お父様の形見は、かつておじいさまが作ったと言われる立派な魔道具なのだ。
「効果範囲はどれくらい?」
「この部屋くらいはありますかね……?触れている者に対しては寄ってこないですよ」
「量産出来るのなら、そういうものでもいいのかもしれないが」
「?」
イシュハル様はため息を吐くようにして言った。
「緊急でね。来るべく災害に向けて対策を練らないといけなくなったんだ」
「……災害ですか?」
「そう。魔物が引き起こす、災害対策」
「魔物がですか?」
「そうだ。魔物をおびき寄せ、洪水だろうが、土砂くずれだろうが、自在に引き起こせるとしたらどうする?」
想像するだけでぞっとした。
「え?本気ですか?おびき寄せた魔物をどうするつもりなんです?自然災害の前に、人も土地も荒らされますよ。死者が出ます」
「それが可能だとしたら?」
「……」
「誰か一人の命を狙うためにおびき寄せた魔物が、そのまま自然災害に繋がったとしたら?」
「それは」
「例え話だよ」
例え話でないと困る。
魔法国家ミーニアムで、先の災害で真っ先に亡くなられたのは第一王子だった。その死に疑いがかけられたら、国が荒れるなんてものじゃない。
イシュハル様はにっこりと笑うと言った。
「協力してくれるよね?」
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