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第1章 帝都レベランシア編

第2話 世界創造 ①

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「世界を作れって言われてもなぁ……。こんな感じのを、広めてけばいいの?」

 新しく作った家の、真新しいソファに寝そべりながら、俺は目の前に浮かぶ巻グソ精霊――『チロ』に言った(名無しの精霊だったため、便宜上、チロという昔飼っていた犬の名前をつけたのだが、予想に反してめっちゃ喜んでくれた)。

「うん、そんな感じでいいと思うよ。でも、普通家から作る? まずは大陸とか、海とか、そういう大きなモノから作ってかない?」

「いやそんなモンも作れんのか!?」

「うん、作れるよ。じゃなきゃ世界創造できないじゃん。トーマのエネル残量がゼロになるまではなんでも作れる。まあ、普通は半分くらいは残すと思うけどね」

「エネル? エネルってなんだ?」

 俺は片眉を上げた。

 すぐさま、チロが得意げになって説明を始める。

「転生と同時に与えられた、トーマの力の総量みたいなモノだね。トーマ、気づいてないと思うけど、今、めちゃくちゃ強いよ。富士山だって一撃で壊しちゃうくらい強い」

「マジか!? 富士山壊せんの!?」

「……ごめん、富士山は言い過ぎた。十階建てのビルくらいだった」

「……けっこうショボくなったな」

 いやまあ、それでもじゅうぶんすごいのだが。

「一応、訊くけどさ。これってほかの世界に転生した奴らも同じくらいの力もらえてんの?」

「同じではないよ。不幸度合いが強かったヒトほど、強大な力をもらえてる。トーマは真ん中よりやや低めな感じかな。それでもけっこうな総量だと思うけど。気に入らない?」

「いやまあ、それに関しては全然文句はないんだけど……。けど、俺の場合は世界を創造するのにこっから自分の力減らしてかないといけないんだろ?」

「うん、そうだね。でも、トーマが思ってるほど力減らないと思うよ。大陸とか、海とか、世界の土台を作るだけなら一割くらいのエネルで事足りる。壮大さとはあんまり比例しないから。バンバン作っていっても問題ないと思うよ」

「そうか……なら、まずはワールドマップを作成するか。なんかRPGの世界を作るみたいでワクワクすんな。あ、ちなみに生き物とかも作れんのか?」

「作れるけど、一匹一匹作っていくと、相当時間かかっちゃうと思うよ。面倒くさくない?」

「……まあ確かに、面倒くさいかも。けど、生き物いないってのは世界としてどうなのよ? やっぱここは、面倒くさくない範囲で――」

「あ、じゃあこうしたら? 生き物を生み出す能力を持った生物を最初に作る。それでそのあと、その生き物に勝手にほかの生物バンバン作ってもらう。千年くらい経てば、たぶんヴェサーニアは生物であふれかえってると思うよ」

「……なるほど。そんなことができるなら、それをやったほうが手っ取り早いな。んじゃ、土台を作ったあとにその生物を作るか」

「エネルの量はどれくらい与える? 多ければ多いほど、多種多様な生物を短い時間で作れると思うよ。自分の力を与えて、ほかの生物を作るわけだから」

「ああ……そうだな。半分くらい与えるか。それなら、けっこうにぎやかな世界になるだろ? なんない?」

「いやむしろ与えすぎのレベルだけど。そんなに与えちゃったら、もしその生物が反旗を翻した場合、トーマ負けちゃうじゃん」

「えっ、謀反なんて起こす可能性あるの?」

「生き物だからね。そのリスクはあるよ。そのリスクをなくそうとすれば、莫大なエネルを与えないといけなくなる。加えるよりも削ぐほうがエネルかかるんだよ」

「そう、なのか……」

 それは困った。

 エネルが半分減って、十階建てビル破壊パンチから五階建てビル破壊パンチになってしまうのは別に問題ない。

 が、謀反を起こされるかも、というリスクは考えてなかった。

 そうなったときに、それを沈められないのは『創造主』として情けないことこの上ない。

 神としての威厳ゼロだ。

「うーん、どうするかな……。二割くらいに減らすか……? いやでも、そうすると……」

 俺の望む、多種多様な生き物が生息するにぎやかな世界になるかどうか……。

 それをチロに聞こうとしたところで、ふと俺の脳裏に妙案が駆けた。

「最初の生命体を二体作って、そいつらに二割づつ分け与えるってのはどうよ? そうすれば、一体に謀反を起こされても、もう一体は俺の味方だろ。リスクは減るんじゃないか?」

「二体が結託して謀反起こしたら?」

「まさか。そんな可能性は低いだろ。まあでも、一応犬猿の仲って設定で作るか。この設定を加えるだけならそんなエネルは必要ないだろ? 削ぐんじゃなくて加えるんだから」

「まあ、そうだね。それなら追加エネルはほとんど必要ないと思う。それでいく?」

「ああ、それでいこう。が、まずは土台作りだな。ワールドマップの作成から始める」

 こうして、世界創造の最初の一歩がスタートした。
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