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アルの採掘潜入編
第3話 食堂でパーティー
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近衛隊の本部を出た俺は、エルウッドを引き連れアフラの商業区へ出た。
俺は普段からよく外出するので、街の人々も大して驚かない。
俺に気づくと敬礼する程度だ。
服飾店や道具屋で、クエストに使用する品々を購入。
国王が一人で安価な服や道具を買っている姿を見て、さすがに店主たちは驚いていた。
いくつもの買い物袋を抱えながら王城への道を歩く。
「あれ? アル様?」
「リマ! どうしたの? レイの警護じゃないの?」
「レイ様は会議に入ったので、アタシは騎士団本部の視察をしてました」
アフラ郊外に騎士団の本部を建設中だ。
広大な敷地には訓練場や空港まで設ける。
リマやウィルの希望を取り入れ、シドが設計図を書き、ラルシュ工業が建築を担当。
すでに完成間際となっていた。
「それより、アル様こそどうされたんですか? 買い物袋なんて持って」
リマが俺の荷物をいくつか持ってくれた。
「クエストで使うんだ。あ、そうだ、リマに聞きたいことがあったんだよ」
「アタシに? 何ですか? 金なら貸せませんよ? フハハハ」
冗談とばかりに大笑いするリマ。
だが実は、リマの言うことは正解だった。
「えーと、まさにそれなんだよ」
「は? 嘘でしょ? アル様がアタシに借金?」
「いや、そうじゃないんだけど、借金する人の気持ちが知りたい」
「気持ち? どういう……。え? アル様が借金するの?」
「しないって!」
俺たちは場所を王城の食堂に移した。
職員たちが使用する食堂は、一度に数百人が座れるほど広い。
俺もたまに利用する。
安くて美味いと有名だ。
それもそのはず、メニューは料理長でもあるメイドのエルザが考案していた。
珈琲を二つ注文し、一つをリマに渡す。
そして、長テーブルにリマと向き合って座る。
俺が食堂を利用する時の支払いは、全て後払いにしてもらっていた。
ラルシュ産の珈琲を一口含むと、香ばしさが鼻に抜ける。
「クエストで金が必要な鉱夫を演じるつもりなんだよ」
「なるほど。金が必要な鉱夫ね」
腕を組み天井を見上げるリマ。
「じゃあ、ギャンブルで借金を作ったって設定はどうですか?」
「そうか。リマをそのまま演じればいいのか」
「な! 今は借金ありません! それにギャンブルだってやってませんよ!」
「アハハ、そうだった」
ラルシュ王国には街が二つある。
首都アフラと、もう一つはイーセ王国の国境の街サルガとアフラを結ぶ街道、奉呈の道にある宿場町ルルドだけだ。
どちらも賭博場はない。
もしギャンブルをするなら、最も近い街でも国境を超えてサルガまで行く必要がある。
もちろんリマにそんな暇はない。
その後も話を聞き、ギャンブル狂いで借金を抱えた鉱夫を演じることに決まった。
「リマ、ありがとう。今日はご馳走するから好きなものを食べなよ」
「え! いいんですか!」
「うん。もう夕方だし今日は終わりでしょ?」
「じゃ、じゃあ……」
リマが葡萄酒の棚に視線を向けた。
「分かったよ。葡萄酒もつける」
「やった!」
リマは一切の遠慮なく、新鮮なアフラ産野菜のサラダ、猛火犖の肉厚ステーキ、巻角山羊のシチュー、大虹鱒の塩焼き、水角牛のチーズを使ったピッツァを注文。
そしてイーセ王国産の葡萄酒を一本。
葡萄酒を開け二つのグラスに波々と注ぐリマ。
「おいリマ! 何やってんだよ!」
乾杯してグラスに口をつけようとした瞬間、リマを呼ぶ声が聞こえた。
「おお、ウィルじゃないか。お疲れ」
「アンタなんでこんな豪華な飯食ってるんだよ。オイラは一日中書類を見てたんだぞ!」
「フハハハ、アタシは陛下の役にたったから褒美だよ」
食堂を通りかかったウィルが、俺に敬礼しながらリマの横に座った。
「オマエも食ってけよ。陛下の奢りだぞ」
「え? いいんですか?」
リマが勝手なことをいい出すと、ウィルの目が輝く。
今さらダメとは言えないだろう
「いいよ。ウィルも好きなもの食べなよ」
「うわー、アル様ありがとうございます!」
「まあしばらく皆と会えないからな」
ウィルが受付へ行き、注文を始めた。
この食堂は自分で食器を運ぶ。
シドが考案したこの方式はセルフサービス式と呼ばれ、従業員の人数を抑えることができる。
大人数が利用するこの食堂に最も適した方式だ。
「むっ、陛下。こんなところで酒盛りですか?」
「シド! まあそんなところだな。アハハ」
シドが珈琲を注文し、俺の隣りに座った。
シドは現在自由な立場で、特に役職を設けていない。
基本的には様々な研究をしているが、国政を見ることもあれば、ラルシュ工業で開発したり、冒険者ギルドにアドバイスすることもある。
とはいえ形式上の役職は必要なので、ラルシュ王国名誉顧問というよく分らない役職を名乗っていた。
シドがニヤついた表情で、俺の顔を覗き込んでいる。
「……はあ。分かったよ。シドもいいよ」
シドの言いたいことはすぐに分かった。
「ハッハッハ。ありがたく頂戴しましょう」
「別にいいけどさ、ここで夕食にしたらオルフェリアが怒るでしょ?」
「それは大丈夫です。今日はオルフェリアも王城にいるのでね。ここで夕食を食べようと話していたのですよ」
「そうか。じゃあ、オルフェリアも来るのか」
「ええ、そうです」
しばらくすると、シドの言う通りオルフェリアが参加。
さらには何人かの大臣や、宰相ユリアまでテーブルについていた。
こうなったら仕方がない。
「皆、明日から俺はクエストに出るから不在だ。今日はもう好きなだけ食べて飲んでくれ。俺の奢りだ」
歓声が上がると、リマとウィルがハイタッチしていた。
「ねえ、なんでここでパーティーしてるの?」
噂を聞きつけたのか、レイが呆れた表情を受かべながら食堂に入ってきた。
全員が一斉に起立し敬礼する。
「レイ様! 今日はアル様の壮行会です!」
葡萄酒を抱えたリマがレイに答えた。
「もう……」
溜め息をつきながらも、レイは優しい笑みを浮かべている。
「アルがいるなら私もここで食事を済ませるわ」
「おお! レイ様の参加だ! 今日はアル様の奢りですよ!」
リマが満面の笑みを浮かべ大騒ぎしている。
レイが俺の隣りに座った。
「一体どうしたのよ?」
「リマに夕食を奢ったら、なぜか皆集まってきてこの通りだよ」
「ふふふ、あなたの回りには本当に人が集まってくるのね」
「明日からクエストに行くし、まあいいかなって」
「じゃあ私もご馳走になるわね」
「はいはい。好きなものをどうぞ」
その後も人は増えていった。
俺は普段からよく外出するので、街の人々も大して驚かない。
俺に気づくと敬礼する程度だ。
服飾店や道具屋で、クエストに使用する品々を購入。
国王が一人で安価な服や道具を買っている姿を見て、さすがに店主たちは驚いていた。
いくつもの買い物袋を抱えながら王城への道を歩く。
「あれ? アル様?」
「リマ! どうしたの? レイの警護じゃないの?」
「レイ様は会議に入ったので、アタシは騎士団本部の視察をしてました」
アフラ郊外に騎士団の本部を建設中だ。
広大な敷地には訓練場や空港まで設ける。
リマやウィルの希望を取り入れ、シドが設計図を書き、ラルシュ工業が建築を担当。
すでに完成間際となっていた。
「それより、アル様こそどうされたんですか? 買い物袋なんて持って」
リマが俺の荷物をいくつか持ってくれた。
「クエストで使うんだ。あ、そうだ、リマに聞きたいことがあったんだよ」
「アタシに? 何ですか? 金なら貸せませんよ? フハハハ」
冗談とばかりに大笑いするリマ。
だが実は、リマの言うことは正解だった。
「えーと、まさにそれなんだよ」
「は? 嘘でしょ? アル様がアタシに借金?」
「いや、そうじゃないんだけど、借金する人の気持ちが知りたい」
「気持ち? どういう……。え? アル様が借金するの?」
「しないって!」
俺たちは場所を王城の食堂に移した。
職員たちが使用する食堂は、一度に数百人が座れるほど広い。
俺もたまに利用する。
安くて美味いと有名だ。
それもそのはず、メニューは料理長でもあるメイドのエルザが考案していた。
珈琲を二つ注文し、一つをリマに渡す。
そして、長テーブルにリマと向き合って座る。
俺が食堂を利用する時の支払いは、全て後払いにしてもらっていた。
ラルシュ産の珈琲を一口含むと、香ばしさが鼻に抜ける。
「クエストで金が必要な鉱夫を演じるつもりなんだよ」
「なるほど。金が必要な鉱夫ね」
腕を組み天井を見上げるリマ。
「じゃあ、ギャンブルで借金を作ったって設定はどうですか?」
「そうか。リマをそのまま演じればいいのか」
「な! 今は借金ありません! それにギャンブルだってやってませんよ!」
「アハハ、そうだった」
ラルシュ王国には街が二つある。
首都アフラと、もう一つはイーセ王国の国境の街サルガとアフラを結ぶ街道、奉呈の道にある宿場町ルルドだけだ。
どちらも賭博場はない。
もしギャンブルをするなら、最も近い街でも国境を超えてサルガまで行く必要がある。
もちろんリマにそんな暇はない。
その後も話を聞き、ギャンブル狂いで借金を抱えた鉱夫を演じることに決まった。
「リマ、ありがとう。今日はご馳走するから好きなものを食べなよ」
「え! いいんですか!」
「うん。もう夕方だし今日は終わりでしょ?」
「じゃ、じゃあ……」
リマが葡萄酒の棚に視線を向けた。
「分かったよ。葡萄酒もつける」
「やった!」
リマは一切の遠慮なく、新鮮なアフラ産野菜のサラダ、猛火犖の肉厚ステーキ、巻角山羊のシチュー、大虹鱒の塩焼き、水角牛のチーズを使ったピッツァを注文。
そしてイーセ王国産の葡萄酒を一本。
葡萄酒を開け二つのグラスに波々と注ぐリマ。
「おいリマ! 何やってんだよ!」
乾杯してグラスに口をつけようとした瞬間、リマを呼ぶ声が聞こえた。
「おお、ウィルじゃないか。お疲れ」
「アンタなんでこんな豪華な飯食ってるんだよ。オイラは一日中書類を見てたんだぞ!」
「フハハハ、アタシは陛下の役にたったから褒美だよ」
食堂を通りかかったウィルが、俺に敬礼しながらリマの横に座った。
「オマエも食ってけよ。陛下の奢りだぞ」
「え? いいんですか?」
リマが勝手なことをいい出すと、ウィルの目が輝く。
今さらダメとは言えないだろう
「いいよ。ウィルも好きなもの食べなよ」
「うわー、アル様ありがとうございます!」
「まあしばらく皆と会えないからな」
ウィルが受付へ行き、注文を始めた。
この食堂は自分で食器を運ぶ。
シドが考案したこの方式はセルフサービス式と呼ばれ、従業員の人数を抑えることができる。
大人数が利用するこの食堂に最も適した方式だ。
「むっ、陛下。こんなところで酒盛りですか?」
「シド! まあそんなところだな。アハハ」
シドが珈琲を注文し、俺の隣りに座った。
シドは現在自由な立場で、特に役職を設けていない。
基本的には様々な研究をしているが、国政を見ることもあれば、ラルシュ工業で開発したり、冒険者ギルドにアドバイスすることもある。
とはいえ形式上の役職は必要なので、ラルシュ王国名誉顧問というよく分らない役職を名乗っていた。
シドがニヤついた表情で、俺の顔を覗き込んでいる。
「……はあ。分かったよ。シドもいいよ」
シドの言いたいことはすぐに分かった。
「ハッハッハ。ありがたく頂戴しましょう」
「別にいいけどさ、ここで夕食にしたらオルフェリアが怒るでしょ?」
「それは大丈夫です。今日はオルフェリアも王城にいるのでね。ここで夕食を食べようと話していたのですよ」
「そうか。じゃあ、オルフェリアも来るのか」
「ええ、そうです」
しばらくすると、シドの言う通りオルフェリアが参加。
さらには何人かの大臣や、宰相ユリアまでテーブルについていた。
こうなったら仕方がない。
「皆、明日から俺はクエストに出るから不在だ。今日はもう好きなだけ食べて飲んでくれ。俺の奢りだ」
歓声が上がると、リマとウィルがハイタッチしていた。
「ねえ、なんでここでパーティーしてるの?」
噂を聞きつけたのか、レイが呆れた表情を受かべながら食堂に入ってきた。
全員が一斉に起立し敬礼する。
「レイ様! 今日はアル様の壮行会です!」
葡萄酒を抱えたリマがレイに答えた。
「もう……」
溜め息をつきながらも、レイは優しい笑みを浮かべている。
「アルがいるなら私もここで食事を済ませるわ」
「おお! レイ様の参加だ! 今日はアル様の奢りですよ!」
リマが満面の笑みを浮かべ大騒ぎしている。
レイが俺の隣りに座った。
「一体どうしたのよ?」
「リマに夕食を奢ったら、なぜか皆集まってきてこの通りだよ」
「ふふふ、あなたの回りには本当に人が集まってくるのね」
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