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最終章

第354話 各国の到着

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 旅する宮殿ヴェルーユが帰還した翌日、早朝にも関わらずイーセ王国の旗艦女神の六翼リリオンを中心に、大型船サンシェル級の船団三十隻が到着。
 レイとシルヴィアが出迎えた。

「レイ!」
「ヴィクトリア! 来てくれてありがとう!」
「もちろんよ。我がクロトエ騎士団が誇る対モンスターの精鋭、討伐隊を連れてきたわ」

 レイと挨拶を交わしたヴィクトリアは、シルヴィアと挨拶を交わす。
 その後ろで、クロトエ騎士団団長のジル・ダズと、討伐隊隊長デイヴ・ジョンソンが最敬礼していた。
 レイはかつての部下である二人に笑顔を向ける。

「ジル・ダズとデイヴもありがとう」
「ハッ! レイ陛下の麗しき御尊顔を拝し奉り、恐悦至極に存じます」
「ふふふ。ジル・ダズは変わらないわね」

 レイがジル・ダズの肩に軽く手を置いた。
 レイに憧れる者からしたら、レイに触れられるなんて気絶してもおかしくないほどの出来事だろう。
 長年のつき合いがあるジル・ダズですら、辛うじて耐えているほどだ。

 伝説の団長だったレイを目の前に、緊張して声も出せないデイヴ。

「デイヴ。そう緊張するなって」
「リ、リマさん!」

 デイヴはリマに告白した過去を持つ。
 その精悍な容姿から、現在の騎士団で最も女性人気が高いデイヴだが、恋愛に興味がないリマのことを今でも好きだった。

「これから一緒に戦うんだ。よろしくな」
「は、はい! よろしくお願いいたします!」

 デイヴの肩に手を置くリマ。
 顔を真っ赤にしたデイヴだが、恐ろしいほど鈍感なリマは全く気付かない。
 その様子を見ていたレイは、リマの恋愛に対する鈍感力に溜め息をついていた。

 イーセ王国は、クロトエ騎士団千五百人を派遣。
 指揮官はジル・ダズ団長と、討伐隊隊長デイヴ・ジョンソンだ。

 その後、クリムゾン王国の船団三十五隻が到着。
 旗艦である神々の詩グローリーからロート王が下船。
 現在の君主の中で最年長のロートに対し、レイとシルヴィアが丁重に出迎えた。

 コート騎士団二千人を引き連れてきたロート。
 それもコート騎士団が誇る精鋭中の精鋭、蒼き盾騎士フォルーザだった。
 さすがのレイも驚きを隠せない。

「まさか蒼き盾騎士フォルーザとは。ロート陛下、よろしいのですか? 門外不出の精鋭と聞き及んでおりますが」
「世界の危機じゃ。国が崩壊すれば精鋭なども意味がない。それに、あのノルンには儂も頭にきておるのでの」

 世界会議ログ・フェスでノルンに小僧呼ばわりされていたロート。
 レイはその理由を知っているが、説明はできない。
 精鋭を引き連れてきたことへ感謝し、笑顔を浮かべた。

 そして、レイと面識のあるコート騎士団団長イアン・ドルドと、初対面の蒼き盾騎士フォルーザの将軍ビルズ・ブラフォと挨拶を交わす。

「レイ様。お久しぶりです」
「イアン団長。お元気そうで何より」

 実はイアンは、レイに求婚した過去を持つ。
 当時のイアンは三十歳、レイは二十一歳でクロトエ騎士団団長時代のことだ。
 レイは当然ながらアル以外に全く興味がなく、丁重に断っていた。
 イアンも紳士的に接しており、恋愛的には一切引きずっていない。
 だがイアンはレイを、騎士として、剣士として、人として尊敬している。

蒼き盾騎士フォルーザが来てくれるなんて、本当に驚いたわ」
「陛下を説得しました。さすがに今回はレイ様に負担がかかりすぎますから」
「相変わらず優しいわね、イアン団長」
「ありがたきお言葉。アル陛下にもご挨拶させていただきたいと存じます」
「ふふふ。今は別の場所にいるのよ。帰ってきたら紹介するわね」
「ありがとうございます。ではレイ様、蒼き盾騎士フォルーザの将軍を紹介させていただきます。ビルズ・ブラフォです」

 イアンはレイに将軍ビルズ・ブラフォを紹介した。
 だが、少し様子がおかしいビルズ。

「おは、おは、お初にお目に、かか、かかります」
「ふふふ、そう緊張しないで。ビルズ将軍」

 ビルズは、イアンがレイに求婚したことを知っていた。
 いくら尊敬する上司でも、他国の騎士団長に求婚するなんてあり得ないと思っていたビルズ。
 だが、その考えを即座に改める。
 その強さと美しさが伝説となっているレイを目の前にしたビルズは、あまりに緊張して全く動けず。
 クリムゾン王国でも屈指の騎士は、むしろレイに求婚したビルズをこれまで以上に尊敬の眼差しで見つめることになった。

 そして、日の出直後にエマレパ皇国が到着。
 国家が保有している全てのサンシェル級で船団を組んでいた。
 その数、四十隻の大船団。
 旗艦獅子の双翼マルティラから、皇帝キルスと皇后ファステルが下船。

「なんだ、レイが出迎えか?」
「何だはないでしょうキルス」
「はっはっは、すまぬ。アルはどうしたのだ?」
「それは追って話すわ」
「うむ、分かった」

 続いてレイは、ファステルに視線を向けた。
 一切の装飾がない動きやすく質素な服装のファステルだが、美しさは全く損なわれていない。
 むしろその自然な姿は、輝いてすら見える。

「ファステルもよく来てくれたわね。アルが喜ぶわよ」
「レイ。ごめんなさい。私は役に立たないと思ったのだけど、心配で来てしまったわ」
「そんなことないわよ。あなたがいてくれるだけで、皇軍の士気は常に最高だもの。っていうか、あなたまた綺麗になったわね」
「え? 本当? レイに言われると嬉しいわ」

 頬を少し赤らめたファステルは、レイと挨拶の抱擁を交わす。
 二人が離れたタイミングで、キルスがレイに向かって手を挙げた。

「レイ。我が皇軍の精鋭を引き連れてきた。役に立てると思うぞ」
「助かるわ。ありがとうキルス」

 新設した部隊砂漠の太陽デルルソは、皇軍内で能力が高い兵士で編成している特殊部隊だ。
 それはアルとの地獄の訓練がきっかけになっていた。

 名のある将軍たちが束になっても、アルの訓練についていけなかった皇軍。
 たった一人の人間に軍隊を崩さ荒れる可能性があることを知った。
 その反省から、アルや竜種のような人知を超えた存在にも対抗し得る部隊の設立を目指し、編成されたという経緯を持つ砂漠の太陽デルルソ

 アルの存在は一国の軍隊すら変えてしまった。
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