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第十六章
第267話 二人の帰還
しおりを挟む 俺とレイはアフラに帰還した。
七ヶ月ぶりだ。
街の前まで来ると、街には柵と門が作られていることに驚く。
「凄い! レイ、柵と門だよ! うわー、街らしくなってきたな!」
「ふふふ、そうね。これでモンスターの侵入も防げるわね」
以前のアフラはモンスターの侵入があり、その都度俺やレイ、駐留している騎士団が対応していた。
門は幅十メデルトで両開きの扉タイプだ。
木製だが鉄の枠で補強されており、シンプルで美しい模様の彫刻がされている。
細部まで手を抜かない仕事は、間違いなくトーマス工房製だ。
「アル! レイ! おかえりなさい!」
「オルフェリア! ただいま!」
門まで出迎えに来てくれたオルフェリア。
俺たちはサルガの街で手紙を書き、帰還予定日を知らせていた。
「無事に帰ってきてくれて嬉しいです!」
「ふふふ、オルフェリア久しぶりね」
オルフェリアはレイに抱きつき、そして俺に抱きついてきた。
「君たち、もっとゆっくりしても良かったのだぞ?」
シドの声だ。
オルフェリアの後ろから、シドがゆっくりと歩いてきた。
「シド! ただいま!」
「ああ、おかえり」
俺はシドと握手をする。
「長旅ご苦労だったな。疲れただろう。今日はゆっくり休んでくれ。また明日改めてゆっくりと……」
「ウォウウォウ!」
シドが話している最中、物凄いスピードで走り寄ってくる銀色の影。
そのまま俺の身体に飛び込んできた。
「エルウッド!」
「ウォウウォウ!」
俺はエルウッドを抱きかかえる。
「エルウッド! 久しぶりだ! 元気だったか!」
「ウォンウォン!」
エルウッドの頭をくしゃくしゃに撫でた。
レイも手を伸ばし、エルウッドの頭を撫でている。
「エルウッド! 元気だった?」
「クゥゥゥゥン」
レイが言葉をかけると、エルウッドは甘えるようにレイへ近付く。
「あら? エルウッド、少し大きくなってない?」
「そうなんだよ。今抱えたら、以前より重いことに気付いたよ」
「ウォウウォウ!」
すると、シドが俺とレイの肩に手を乗せた。
「ハッハッハ、オルフェリアの美味い料理をたくさん食べたからな」
「まるで俺の料理が不味かったみたいな言い方だな」
「ウォンウォン!」
「そんなことはないと言ってるぞ。ハッハッハ」
街に入ると、作業中の騎士たちが手を止め敬礼し、俺とレイを迎えてくれた。
しかしその顔は若干恐怖というか強張っている。
「君たち、王都で色々とやらかしただろ? 騎士団の中で君たちの噂が恐ろしいことになってるぞ?」
「どういうこと?」
「騎士団大会でレイが圧倒的な優勝。アルとレイの人間を越えた戦い。さらにアルにいたっては団長含めて全隊長を瞬殺したとな」
「な! なんでそれを!」
「目撃者がいるからな。ハッハッハ」
レイが大きな溜め息をつく。
「……リマね。全くしょうがないわ。あとできっちり叱っておかなくちゃ」
俺たちはアフラの中心部にある事務所へ入った。
リビングのソファーに座り込むと、オルフェリアが珈琲を淹れるためキッチンへ向かう。
「君たちの結婚式の様子を聞いたぞ。結婚の承認は女王陛下で、宰相と大司教が立会人なぞ前代未聞だ。ハッハッハ」
「ヴィクトリアが張り切ったのよ。それでも大事にならないようにしたつもりなのよ? もし前もって知ってたら、あの子は各国に招待状を送るところだったんだから」
「ハッハッハ。まあヴィクトリア陛下はレイを慕っているからな。嬉しいじゃないか」
「そうね。気持ちは嬉しいわよ」
オルフェリアがキッチンから戻ってきた。
俺とレイ、シドとオルフェリアの四人が揃う。
久しぶりだ。
「アルは珈琲ですけど、レイも珈琲でいいですか?」
「もちろんよ。旅の間、オルフェリアの珈琲が飲みたくなっていたのよ」
「フフ、レイにそう言ってもらえるなんて嬉しいです」
オルフェリアが焙煎した珈琲は本当に美味い。
紅茶好きなレイも、オルフェリアの珈琲は好んで飲んでいた。
俺はもちろんオルフェリアの珈琲が大好物だ。
「あ、そうだシド。イーセ王国にシドの年齢は百五十歳で、寿命が二百年と伝えたよ」
「そうか。やはり疑っていたか。上手く騙せたのか?」
「ああ、レイが良い反応してくれたからね」
シドの顔を恨めしそうに見つめているレイ。
「全く……アルが不老不死をバラすんじゃないかと思って一瞬驚いたわよ」
「すまんすまん、これはアルにだけ伝えていたことなんだ」
「まあでも、結果として上手く行ったから良かったわよ」
「ああ、ありがとう。今後も他国にバレそうならこの話をする」
「分かったわ」
「さて、君たちが不在だった間の要点だけ伝える。今日は帰ってゆっくり休んでくれ。明日改めて会議を行う」
「分かったわ」
シドがその内容を教えてくれた。
飛空船は二ヶ月後に完成予定。
エマレパ皇国で竜種の活動確認。
新国家の基盤となる憲法が完成。
騎士団を退団したリマが到着。
そして、俺たちの結婚祝いが、続々と到着しているとのことだ。
「そうだ。ウグマで君たちの使用人だった四人も到着してるぞ。君たちの家をトーマス兄弟が張り切って増築したから、住み込みで働いてもらっている」
「本当に! それは嬉しいな」
「彼らの給与はちゃんと払ってるぞ」
「え? 給与は俺たちが払うよ?」
「いや、大丈夫だ。国家の予算から出す。給与体系も決まったから、それも明日話す」
「分かった」
俺とレイは事務所を出て自宅に帰る。
事務所と自宅の距離は五十メデルトほどだ。
「あれは?」
視力が良い俺は、玄関前に立つ四人の姿に気付く。
帝国のウグマで、俺とレイの使用人をやってくれていた四人だ。
執事で財産管理をしているステム・ソーガン。
メイドのエルザ・ルーイとマリン・バイスキン。
庭師で馬の世話ががりのミック・ケイド。
「うわー! 皆久しぶり!」
「アル様、レイ様。お久しぶりでございます!」
代表して執事のステムが挨拶してくれた。
そして自宅に入り、全員でテーブルにつく。
「竜種の討伐おめでとうございます! そして、ご結婚おめでとうございます!」
「ありがとう!」
「私たちは今後もアル様とレイ様にお仕えしたく、許可をいただければと存じます」
「もちろんだよ! 本当にありがとう! でもいいの? 辺境の地だよ? 皆の生活もあるでしょ?」
「問題ございません。全員がお仕えしたいという意志で参っております。しかし驚きました。まさか建国されるとは」
「そうなんだよ。俺たちは国家の代表になるんだけど、皆にも色々と協力してもらうし、大変なこともあるかもしれない。だからさ、何かあったらすぐに言ってね」
「ご配慮ありがとうございます」
皆の表情は笑顔だった。
こうして皆とまた一緒に過ごせることがとても嬉しい。
その夜は、エルザとマリンが腕によりをかけてご馳走を作ってくれた。
久しぶりに味わう二人の料理に感動。
使用人とはいえ大切な仲間だ。
全員で食卓を囲み夜を過ごした。
七ヶ月ぶりだ。
街の前まで来ると、街には柵と門が作られていることに驚く。
「凄い! レイ、柵と門だよ! うわー、街らしくなってきたな!」
「ふふふ、そうね。これでモンスターの侵入も防げるわね」
以前のアフラはモンスターの侵入があり、その都度俺やレイ、駐留している騎士団が対応していた。
門は幅十メデルトで両開きの扉タイプだ。
木製だが鉄の枠で補強されており、シンプルで美しい模様の彫刻がされている。
細部まで手を抜かない仕事は、間違いなくトーマス工房製だ。
「アル! レイ! おかえりなさい!」
「オルフェリア! ただいま!」
門まで出迎えに来てくれたオルフェリア。
俺たちはサルガの街で手紙を書き、帰還予定日を知らせていた。
「無事に帰ってきてくれて嬉しいです!」
「ふふふ、オルフェリア久しぶりね」
オルフェリアはレイに抱きつき、そして俺に抱きついてきた。
「君たち、もっとゆっくりしても良かったのだぞ?」
シドの声だ。
オルフェリアの後ろから、シドがゆっくりと歩いてきた。
「シド! ただいま!」
「ああ、おかえり」
俺はシドと握手をする。
「長旅ご苦労だったな。疲れただろう。今日はゆっくり休んでくれ。また明日改めてゆっくりと……」
「ウォウウォウ!」
シドが話している最中、物凄いスピードで走り寄ってくる銀色の影。
そのまま俺の身体に飛び込んできた。
「エルウッド!」
「ウォウウォウ!」
俺はエルウッドを抱きかかえる。
「エルウッド! 久しぶりだ! 元気だったか!」
「ウォンウォン!」
エルウッドの頭をくしゃくしゃに撫でた。
レイも手を伸ばし、エルウッドの頭を撫でている。
「エルウッド! 元気だった?」
「クゥゥゥゥン」
レイが言葉をかけると、エルウッドは甘えるようにレイへ近付く。
「あら? エルウッド、少し大きくなってない?」
「そうなんだよ。今抱えたら、以前より重いことに気付いたよ」
「ウォウウォウ!」
すると、シドが俺とレイの肩に手を乗せた。
「ハッハッハ、オルフェリアの美味い料理をたくさん食べたからな」
「まるで俺の料理が不味かったみたいな言い方だな」
「ウォンウォン!」
「そんなことはないと言ってるぞ。ハッハッハ」
街に入ると、作業中の騎士たちが手を止め敬礼し、俺とレイを迎えてくれた。
しかしその顔は若干恐怖というか強張っている。
「君たち、王都で色々とやらかしただろ? 騎士団の中で君たちの噂が恐ろしいことになってるぞ?」
「どういうこと?」
「騎士団大会でレイが圧倒的な優勝。アルとレイの人間を越えた戦い。さらにアルにいたっては団長含めて全隊長を瞬殺したとな」
「な! なんでそれを!」
「目撃者がいるからな。ハッハッハ」
レイが大きな溜め息をつく。
「……リマね。全くしょうがないわ。あとできっちり叱っておかなくちゃ」
俺たちはアフラの中心部にある事務所へ入った。
リビングのソファーに座り込むと、オルフェリアが珈琲を淹れるためキッチンへ向かう。
「君たちの結婚式の様子を聞いたぞ。結婚の承認は女王陛下で、宰相と大司教が立会人なぞ前代未聞だ。ハッハッハ」
「ヴィクトリアが張り切ったのよ。それでも大事にならないようにしたつもりなのよ? もし前もって知ってたら、あの子は各国に招待状を送るところだったんだから」
「ハッハッハ。まあヴィクトリア陛下はレイを慕っているからな。嬉しいじゃないか」
「そうね。気持ちは嬉しいわよ」
オルフェリアがキッチンから戻ってきた。
俺とレイ、シドとオルフェリアの四人が揃う。
久しぶりだ。
「アルは珈琲ですけど、レイも珈琲でいいですか?」
「もちろんよ。旅の間、オルフェリアの珈琲が飲みたくなっていたのよ」
「フフ、レイにそう言ってもらえるなんて嬉しいです」
オルフェリアが焙煎した珈琲は本当に美味い。
紅茶好きなレイも、オルフェリアの珈琲は好んで飲んでいた。
俺はもちろんオルフェリアの珈琲が大好物だ。
「あ、そうだシド。イーセ王国にシドの年齢は百五十歳で、寿命が二百年と伝えたよ」
「そうか。やはり疑っていたか。上手く騙せたのか?」
「ああ、レイが良い反応してくれたからね」
シドの顔を恨めしそうに見つめているレイ。
「全く……アルが不老不死をバラすんじゃないかと思って一瞬驚いたわよ」
「すまんすまん、これはアルにだけ伝えていたことなんだ」
「まあでも、結果として上手く行ったから良かったわよ」
「ああ、ありがとう。今後も他国にバレそうならこの話をする」
「分かったわ」
「さて、君たちが不在だった間の要点だけ伝える。今日は帰ってゆっくり休んでくれ。明日改めて会議を行う」
「分かったわ」
シドがその内容を教えてくれた。
飛空船は二ヶ月後に完成予定。
エマレパ皇国で竜種の活動確認。
新国家の基盤となる憲法が完成。
騎士団を退団したリマが到着。
そして、俺たちの結婚祝いが、続々と到着しているとのことだ。
「そうだ。ウグマで君たちの使用人だった四人も到着してるぞ。君たちの家をトーマス兄弟が張り切って増築したから、住み込みで働いてもらっている」
「本当に! それは嬉しいな」
「彼らの給与はちゃんと払ってるぞ」
「え? 給与は俺たちが払うよ?」
「いや、大丈夫だ。国家の予算から出す。給与体系も決まったから、それも明日話す」
「分かった」
俺とレイは事務所を出て自宅に帰る。
事務所と自宅の距離は五十メデルトほどだ。
「あれは?」
視力が良い俺は、玄関前に立つ四人の姿に気付く。
帝国のウグマで、俺とレイの使用人をやってくれていた四人だ。
執事で財産管理をしているステム・ソーガン。
メイドのエルザ・ルーイとマリン・バイスキン。
庭師で馬の世話ががりのミック・ケイド。
「うわー! 皆久しぶり!」
「アル様、レイ様。お久しぶりでございます!」
代表して執事のステムが挨拶してくれた。
そして自宅に入り、全員でテーブルにつく。
「竜種の討伐おめでとうございます! そして、ご結婚おめでとうございます!」
「ありがとう!」
「私たちは今後もアル様とレイ様にお仕えしたく、許可をいただければと存じます」
「もちろんだよ! 本当にありがとう! でもいいの? 辺境の地だよ? 皆の生活もあるでしょ?」
「問題ございません。全員がお仕えしたいという意志で参っております。しかし驚きました。まさか建国されるとは」
「そうなんだよ。俺たちは国家の代表になるんだけど、皆にも色々と協力してもらうし、大変なこともあるかもしれない。だからさ、何かあったらすぐに言ってね」
「ご配慮ありがとうございます」
皆の表情は笑顔だった。
こうして皆とまた一緒に過ごせることがとても嬉しい。
その夜は、エルザとマリンが腕によりをかけてご馳走を作ってくれた。
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