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第十五章
第263話 非公式の会合
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突然来訪してきたキルスとファステル。
キルスがヴィクトリアに一礼。
「ヴィクトリア女王陛下。無礼をお許しください。陛下がアルとレイとお茶会をしていると聞き、ぜひとも参加させていただきたいと参ったのです」
「問題ございませんわ。キルス皇帝陛下」
マリアがすぐに椅子を用意。
テーブルにはキルス、ファステル、ヴィクトリア、レイ、俺の五人。
一つのテーブルに皇帝、皇后、女王がいるなんて信じられない。
ヴィクトリアが瞳を閉じ、紅茶カップに口をつける。
「キルス殿、これは公式な場ですか?」
「いえ、ヴィクトリア殿。当然非公式です。私としても、半ば強引にファステルを皇国に連れてきているので、友人や王国の方々との時間を大切にしてほしいのです。ですから、ここからは全てイーセ語でお願いいたします」
その言葉を聞いたヴィクトリアが突然吹き出した。
「うふふふ。へえ、キルスおじさんもそういうことが言えるようになったのね」
「当たり前だろうヴィッキー」
「あの自由奔放なキルスがね。人は変わるものね」
「お前も恋愛すれば分かるぞ、ヴィッキー。わははは」
「もう! 意地悪ね!」
突然、口調が変わった二人。
俺とレイはその変化に驚く。
「え? ヴィクトリアとキルスってそういう関係なの?」
「レイもキルス呼びしてるのね。全くおじさんはすぐ人の懐に入り込むのだから。うふふふ」
ヴィクトリアが笑いながら話を続ける。
「王国と皇国は過去に戦争をしたこともあったけど、今は友好関係にあるわよ。キルスは特に変人だったから、皇太子時代に一人でふらっと王城に遊びに来たりしてたもの」
「おいおい、変人って……。だが、そうだな。ジョンアー様には良くしてもらった。剣も教わったんだ。だから私の剣の師匠はジョンアー様なのだよ」
なるほど。
キルスの剣筋がジョンアー前陛下に似ている理由が分かった。
だが、俺が前陛下と戦ったことは極秘中の極秘だ。
「さて、この場に来たのはファステルのためと、あとはアルの建国の話をするためだ。非公式ながら国の代表が揃っているからな」
「そうね。私も明日のキルスとの会談では、アルの建国でお願いしたいことがあったもの」
落ち着いた雰囲気で話が始まった。
だが、さすがにヴィクトリアを前にして、ファステルは緊張している様子だ。
その様子に気付いたヴィクトリア。
「ファステル皇后陛下。そう緊張しないでください。今は同じ立場ですから」
「そ、そうは言っても、祖国の女王陛下です。き、緊張します。ヴィクトリア様。もし失礼があっても、どうかお許しください」
ファステルが深々とお辞儀をする。
すると、レイが声を漏らして笑っていた。
「ふふふ、大丈夫よファステル。そもそもこの子は私に失礼ばかり働くから」
「ちょっと! レイ! あなただってそうでしょ!」
言い合うレイとヴィクトリアを見ていて、俺は気付いたことがあった。
ファステル含め、三人の年齢は近いはずだ。
「そういえば、ヴィクトリアは二十二歳で、レイは二十四歳、ファステルは二十三歳でしょ。皆年齢が近いじゃん。仲良くなれるでしょ?」
「ア、アル君? あのね、女性に年齢は言わないのよ?」
「アル、いつも言ってるでしょう? 気をつけなさいって」
「もうアルは本当に天然なんだから。でも、私は好きよ?」
ヴィクトリアとレイが俺の顔を睨む。
ファステルだけは呆れつつも笑顔だった。
「皆さん、ありがとうございます。平民の私にとって、ヴィクトリア様は本当に天上人です。温かいお気遣いに感謝いたします」
「じゃあ、ファステルと呼ぶから、あなたもヴィクトリアと呼びなさい」
「そ、それは!」
「ダメよ? それにアルのことを好き同士なんだから、すぐに仲良くなれるわ」
「え? ヴィクトリア様も?」
「ヴィクトリアね。そうよ、アルのことが好きなんだけど、レイが譲ってくれないのよ」
レイがヴィクトリアを睨む。
「当たり前でしょう!」
「ふふ、分かったわ。ヴィ、ヴィクトリア。私たちは本当に仲良くなれそうね」
ファステルは笑っていた。
場の空気が和やかになったところで、キルスが右手を上げる。
本題に入るようだ。
「さて、アルの建国に関してだが、すでにイーセ王国とフォルド帝国が認めている。あと一ヶ国の承認で建国が認められる」
「ええそうよ。だからエマレパ皇国が認めれば承認されるの。私はそれをお願いに来たのよ」
「そうは簡単にいかんのだよ、ヴィッキー。アルの国は脅威だ。元ギルマスのシド殿や帝国議会にいた女帝ユリアが建国に関わっている上、神の金槌のローザ、モンスター学の権威ジョージだぞ。何より君主が竜種殺しのアルとレイだ。世界最高峰の頭脳と武力を持っている。しかも最近話題のトーマス工房も国営企業になるそうじゃないか。現存する国家の国力を簡単に超えていくだろう。世界のバランスが崩れる」
「じゃあ、キルスは認めないの?」
「私の一存で決められることではない。議会を通す必要がある。もちろん、私個人はアルとレイを応援したいがな。皇帝という立場では難しいのだよ」
キルスとヴィクトリアが話していると、ファステルが驚いた表情を浮かべていた。
「え? アルって王様になるの?」
ファステルが美しい翠色の瞳を俺に向ける。
建国に関しては極秘事項だから、ファステルが知らないのも無理はない。
キルスがヴィクトリアに一礼。
「ヴィクトリア女王陛下。無礼をお許しください。陛下がアルとレイとお茶会をしていると聞き、ぜひとも参加させていただきたいと参ったのです」
「問題ございませんわ。キルス皇帝陛下」
マリアがすぐに椅子を用意。
テーブルにはキルス、ファステル、ヴィクトリア、レイ、俺の五人。
一つのテーブルに皇帝、皇后、女王がいるなんて信じられない。
ヴィクトリアが瞳を閉じ、紅茶カップに口をつける。
「キルス殿、これは公式な場ですか?」
「いえ、ヴィクトリア殿。当然非公式です。私としても、半ば強引にファステルを皇国に連れてきているので、友人や王国の方々との時間を大切にしてほしいのです。ですから、ここからは全てイーセ語でお願いいたします」
その言葉を聞いたヴィクトリアが突然吹き出した。
「うふふふ。へえ、キルスおじさんもそういうことが言えるようになったのね」
「当たり前だろうヴィッキー」
「あの自由奔放なキルスがね。人は変わるものね」
「お前も恋愛すれば分かるぞ、ヴィッキー。わははは」
「もう! 意地悪ね!」
突然、口調が変わった二人。
俺とレイはその変化に驚く。
「え? ヴィクトリアとキルスってそういう関係なの?」
「レイもキルス呼びしてるのね。全くおじさんはすぐ人の懐に入り込むのだから。うふふふ」
ヴィクトリアが笑いながら話を続ける。
「王国と皇国は過去に戦争をしたこともあったけど、今は友好関係にあるわよ。キルスは特に変人だったから、皇太子時代に一人でふらっと王城に遊びに来たりしてたもの」
「おいおい、変人って……。だが、そうだな。ジョンアー様には良くしてもらった。剣も教わったんだ。だから私の剣の師匠はジョンアー様なのだよ」
なるほど。
キルスの剣筋がジョンアー前陛下に似ている理由が分かった。
だが、俺が前陛下と戦ったことは極秘中の極秘だ。
「さて、この場に来たのはファステルのためと、あとはアルの建国の話をするためだ。非公式ながら国の代表が揃っているからな」
「そうね。私も明日のキルスとの会談では、アルの建国でお願いしたいことがあったもの」
落ち着いた雰囲気で話が始まった。
だが、さすがにヴィクトリアを前にして、ファステルは緊張している様子だ。
その様子に気付いたヴィクトリア。
「ファステル皇后陛下。そう緊張しないでください。今は同じ立場ですから」
「そ、そうは言っても、祖国の女王陛下です。き、緊張します。ヴィクトリア様。もし失礼があっても、どうかお許しください」
ファステルが深々とお辞儀をする。
すると、レイが声を漏らして笑っていた。
「ふふふ、大丈夫よファステル。そもそもこの子は私に失礼ばかり働くから」
「ちょっと! レイ! あなただってそうでしょ!」
言い合うレイとヴィクトリアを見ていて、俺は気付いたことがあった。
ファステル含め、三人の年齢は近いはずだ。
「そういえば、ヴィクトリアは二十二歳で、レイは二十四歳、ファステルは二十三歳でしょ。皆年齢が近いじゃん。仲良くなれるでしょ?」
「ア、アル君? あのね、女性に年齢は言わないのよ?」
「アル、いつも言ってるでしょう? 気をつけなさいって」
「もうアルは本当に天然なんだから。でも、私は好きよ?」
ヴィクトリアとレイが俺の顔を睨む。
ファステルだけは呆れつつも笑顔だった。
「皆さん、ありがとうございます。平民の私にとって、ヴィクトリア様は本当に天上人です。温かいお気遣いに感謝いたします」
「じゃあ、ファステルと呼ぶから、あなたもヴィクトリアと呼びなさい」
「そ、それは!」
「ダメよ? それにアルのことを好き同士なんだから、すぐに仲良くなれるわ」
「え? ヴィクトリア様も?」
「ヴィクトリアね。そうよ、アルのことが好きなんだけど、レイが譲ってくれないのよ」
レイがヴィクトリアを睨む。
「当たり前でしょう!」
「ふふ、分かったわ。ヴィ、ヴィクトリア。私たちは本当に仲良くなれそうね」
ファステルは笑っていた。
場の空気が和やかになったところで、キルスが右手を上げる。
本題に入るようだ。
「さて、アルの建国に関してだが、すでにイーセ王国とフォルド帝国が認めている。あと一ヶ国の承認で建国が認められる」
「ええそうよ。だからエマレパ皇国が認めれば承認されるの。私はそれをお願いに来たのよ」
「そうは簡単にいかんのだよ、ヴィッキー。アルの国は脅威だ。元ギルマスのシド殿や帝国議会にいた女帝ユリアが建国に関わっている上、神の金槌のローザ、モンスター学の権威ジョージだぞ。何より君主が竜種殺しのアルとレイだ。世界最高峰の頭脳と武力を持っている。しかも最近話題のトーマス工房も国営企業になるそうじゃないか。現存する国家の国力を簡単に超えていくだろう。世界のバランスが崩れる」
「じゃあ、キルスは認めないの?」
「私の一存で決められることではない。議会を通す必要がある。もちろん、私個人はアルとレイを応援したいがな。皇帝という立場では難しいのだよ」
キルスとヴィクトリアが話していると、ファステルが驚いた表情を浮かべていた。
「え? アルって王様になるの?」
ファステルが美しい翠色の瞳を俺に向ける。
建国に関しては極秘事項だから、ファステルが知らないのも無理はない。
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