鉱夫剣を持つ 〜ツルハシ振ってたら人類最強の肉体を手に入れていた〜

犬斗

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第十三章

第228話 隊長たちの食事会

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 レストランに到着。
 店は貸し切りとなっていたが、レイと面識のあるオーナーが俺たちを店に入れてくれた。
 その際、結婚も祝っていただき、改めて王国内でのレイの影響力を知る。

 店内のバーカウンターで珈琲を飲んで待っていると、店に入ってくる集団の気配を察知。
 同時に、二十人以上の給仕係が一斉に店内の入口付近に並び、オーナーが集団を迎え入れた。
 全員鎧ではなく平服に帯剣しているが、剣士としてただならぬ空気を感じる。

「ようこそ、おいでくださいました!」
「オーナー、今日もよろしくお願いします」

 先頭にいる見覚えのある男性がオーナーへ挨拶。
 その男性はカウンターに座る俺たちに気付いたようだ。

「レ、レイ様! アルさん!」
「ジル・ダズ、ごめんなさいね。全隊長にアルを紹介したくて連れてきたのよ」
「そうでしたか。なるほど、今日はザインの墓参りでしたね。その帰りですか?」
「ええ、そうよ。一緒に食事をしてもいいかしら?」
「もちろんです! 来てくださって感謝いたします!」

 団長のジル、近衛隊長のリマ、一番隊から十二番隊の隊長、そして新設された討伐隊の隊長、合計十五人の騎士はレイの突然の訪問に喜んでいた。

 ジルはオーナーに二人追加を指示。
 シェフも快く受け入れてくれた。

 俺は隊長一人一人と挨拶を交わす。
 そして、食事が始まると、改めて俺たちの結婚を祝福してくれた。

 一番隊のハウ・ギブソンが、給仕を呼び耳打ちしている。
 ハウは隊長の中で最年長の四十八歳だそうだ。
 レイが教えてくれたが、王国の伯爵という驚くほど高貴な貴族階級でもあった。

「ジル団長、今日は全てギブソン家で受け持とう」
「いいのですか? ハウ隊長」
「もちろんだ。儂もレイのことは娘のように思っているのだ。皆も遠慮なく好きなものを注文してくれ」

 その言葉を聞いて、リマが大喜びしていた。
 きっと本当に遠慮しないだろう。
 ハウは最高級の葡萄酒や、滅多に飲めない発泡性葡萄酒を注文してくれた。

「これは我が家で作っている葡萄酒です。アル殿、気に入ったら後日送らせますぞ」
「あ、ありがとうございます」

 ギブソン家は王国で最も大きな葡萄酒生産者だそうだ。
 伯爵ともなると規模が違う。

 最高級の葡萄酒と料理を楽しみ、会話が盛り上がる。
 皆に質問されたので、俺はネームド討伐やヴェルギウス討伐の話を披露。
 新設された討伐隊の隊長デイヴ・ジョンソンは、熱心に耳を傾けていた。

 一通り話した後、俺が皆の質問に答えていると、レイが突然手を叩く。

「そうだ! 私も明日の大会は出場するわよ。楽しみね」
「な、なんですって!」

 ジルとリマ以外、レイの出場を知らなかったようだ。
 皆一様に驚いている。

「レイも出場するだと? 儂とイゴルは参加しないが……。これは血が騒ぐな」

 最年長のハウと、十一番隊隊長で四十七歳のイゴル・コロフは不参加のようだ。

「そうねえ。大会とは別に、全隊長と試合してもいいわよ?」
「な、なんだと! レイ、本気なのか?」

 ハウが驚いている。

「ふふふ、私にとってこれが最後の出場ですもの。騎士団へ恩返しよ。でも負けないわよ?」

 ジルがグラスの葡萄酒を静かに飲み干した。
 レイの顔を見ながら苦笑いしている。

「私はサルガでレイ様とアルさんの稽古に参加して、散々な目にあいました。遠慮したいところです……が、やりましょう。団長命令です。全隊長がレイ様と試合をするように」

 ジルの一言で、大会後にレイと全隊長の一騎打ちが決まった。
 さらにジルは俺の顔を見る。

「アルさんは参加されないのですか?」
「私は部外者ですし、陛下と一緒に見学する約束をしております」
「そうでしたか。私やリマはアルさんの理不尽な強さを知ってますが、もし希望者がいれば胸を貸してあげてください」

 ジルの発言に俺は戸惑った。
 だが、横に座るレイが笑っている。 

「ふふふ、いいわよ」
「ちょ、ちょっと! レイ!」
「丁度いい機会だし、皆にも知ってもらうわ。私の旦那様は世界一強いのよ?」

 レイが自慢気の表情を浮かべている。
 酒が入って少し高揚しているようだ。

「フハハハ、レイ。そんなこと皆知ってるぞ? しかしな、レイが旦那様なんて言う日が来るとは。アル君が羨ましいな」

 レイの発言を聞いたリマが笑いながら、勝手に注文した超高級葡萄酒を自分でグラスに注いでいる。
 俺でも知ってる最高級の銘柄の葡萄酒だ。

「ん? 待てよ? もしアル君に勝てば、レイをもらえるのか?」
「バカなこと言わないの!」

 レイが一蹴。
 全員笑っていた。
 だが、ジルは真剣な眼差しで俺を見つめている。

「アルさん、手合わせをお願いできますか?」
「わ、分かりました」
「ありがとうございます。竜種殺しのアルさんと試合ができる機会なんてありません。騎士として剣士として、何ごとにも代え難い経験になるでしょう。皆さん、これも団長命令です。全員参加してください」

 若い隊長たちはやる気に満ち溢れ、ベテラン隊長たちはやれやれといった表情だ。
 結局、俺とレイは全隊長と試合することになった。

 正直なところ、俺も楽しみではある。
 自分の力が騎士団の最高戦力にどこまで通用するのか。
 本気を出そう。
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