鉱夫剣を持つ 〜ツルハシ振ってたら人類最強の肉体を手に入れていた〜

犬斗

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幕間

第189話 戦士たちの休息1

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 ヴェルギウス討伐のため、アフラ火山の麓に基地を建設中のアルたちパーティー。
 建設には騎士団も派遣され、凄まじい勢いで街が作られていた。

 世界会議ログ・フェスにて街の名前がアフラと決められ、全員高いモチベーションで建設工事を行う。
 とはいえ、娯楽のない場所で建設の日々だ。
 精神まで鍛えられた騎士たちにも息抜きが必要だった。

 そんな時に一つのブームが起こった。
 きっかけは食材だ。

 ◇◇◇

「アル、おはようございます。今日は時間ありますか?」

 俺とレイが滞在している小屋にオルフェリアが訪ねてきた。
 レイは朝早くから騎士団の駐屯地へ出かけて不在だ。

「やあオルフェリア、おはよう。今日は稽古がないから工事を進める予定だよ」
「そうですか。……アル、今日はお休みして私につき合ってください」
「え? いいけど、どうしたの?」
「これです」

 オルフェリアが一本の長い棒を見せてきた。

「これって……もしかして釣竿?」
「そうです。夕食の食材を調達します。釣りにつき合ってください」
「え! 俺は釣りなんてやったことないよ!」
「フフ、大丈夫です。私が教えます。たまには息抜きしましょう」

 オルフェリアは収入の少ない解体師時代、自給自足をしていたそうだ。

「私、釣りが得意なんです」

 アフラのすぐ隣には広大なアフラ湖が広がり、主に大虹鱒オンコリ黒鱗鮭シュラウトが生息しているとのこと。

 アフラには騎士団含めて総勢で三百三十一人が滞在。
 食糧はサルガから取り寄せているが、樹海で狩りをしたり、アフラ湖で漁も行っている。
 最近は畑作も始めた。

 食材が不足することはないと思うが、多いことに越したことはない。
 俺はオルフェリアと釣りをすることにした。

「アル、私達の今日の夕食ですからね。釣れないと食事はありませんよ?」
「え! 責任重大じゃないか!」
「フフ、釣らないとシドがうるさいですよ」

 山育ちの俺は釣りの経験がない。
 一応地元のラバウトにも湖はあり、盛んに漁が行われていた。
 だか鉱夫の俺は見学することはあっても、一度も釣りをしたことがない。

 エルウッドと一緒にアフラ湖へ出発。

「ここが良く釣れるんですよ」

 初心者の俺のために、オルフェリアが釣れるスポットに連れてきてくれた。
 さっそく、オルフェリアに教えてもらい仕掛け作りを開始。
 釣針に糸を結び、浮きをつける。
 餌は土這蚓ロズワムという長さ10セデルトほどの生物だ。
 細くて長い糸状で、虫に分類される。
 はっきり言って見た目は気持ち悪い。

「オ、オルフェリア。これ触らなきゃダメ?」
「もちろんですよ。あ、アルは虫が苦手でしたね。でも、これをつけなければ釣りができません。頑張ってください。フフ」
「わ、分かったよ」

 俺は苦労しながら、何とか土這蚓ロズワムを釣針につけた。
 さっそく釣り開始。

「アル、浮きが沈んだら釣り上げるのですよ。焦ってはダメです。落ち着いて……ゆっくり。あ、私に来た!」

 俺に説明しながらオルフェリアが釣った。
 大きな大虹鱒オンコリだ。

「いきなり釣るとは凄いなオルフェリア」
「まだまだこれからです。フフ」

 オルフェリアが生き生きしている。
 久しぶりに、オルフェリアの安らいだ笑顔を見られて俺は嬉しくなった。

 その後もオルフェリアに教えてもらうが、なかなか釣れない。
 太陽が真上に来たので、二人で昼食を取ることにした。

 俺は燃石で火をおこし、オルフェリアは自分で釣った大虹鱒オンコリを捌く。
 恐ろしいスピードで三枚におろした。
 さすが解体師だ。

「オルフェリアは釣りも得意なんだね」
「私の場合は生きるための技術です。アルだって生きるために採掘の技術を磨いたでしょう?」
「そうだけどさ……」

 オルフェリアは幼少時に虐待され、食事も満足に出してもらえなかったそうだ。
 そのため、自然の中で生き抜く技術を身につけた。
 仕事として習得した俺の採掘技術とは訳が違う。
 そんなオルフェリアを俺は心から尊敬していた。

「そろそろでしょう」

 オルフェリアは大虹鱒オンコリの切り身に塩と胡椒をまぶし、直火で焼く。
 そして薄く切ったパンを少し炙る。

 大虹鱒オンコリの切り身、玉葱の輪切り、香草をパンに挟む。

「アル、これは美味しいですよ。大虹鱒オンコリサンドです」
「うわっ! ほんとだ! 美味っ!」
「フフ、そうでしょう。私の好きな料理の一つなんです」

 あまりにも美味かったため、俺は三つも食べてしまった。
 そして食後の珈琲を飲む。
 そこで俺はふと思いついた。

「オルフェリア、勝負しよう」
「勝負?」
「ああ、午後の釣果を競うんだ」
「いいのですか? アルはまだ一匹も釣ってないですよ?」
「見てろよオルフェリア。午後から本気を出すからな!」
「フフ、いいでしょう。受けて立ちますよ。負けたら罰ですからね」
「いいよ! 何でもやるよ! もちろんオルフェリアが負けたら何でもやるんだぞ?」
「フフ、後悔させますよ! エルウッドが証人ですよ?」
「ウォン!」

 午後の釣りが開始。
 それと同時に勝負が始まった。
 
 開始直後からオルフェリアは何匹も釣り上げている。
 俺はまだ一匹も釣れていない。

 刻々と時間は過ぎ、そろそろ夕焼けを迎えようとしていた。

「夕食分としてはもう十分ですね。あれえ? アルさん、まだ釣れてないんですか?」
「クッ」
「フフ、初めてアルに勝った気がします」
「まだ終わってないよ!」
「無謀な勝負をするんだから、全く……。あ! 今ですよ!!」

 オルフェリアが俺の竿を見て叫んだ。

「よし!」

 俺は力一杯竿を持ち上げる。
 針の先には……何もついてなかった。

「餌だけ取られてしまいましたね」
「ウォウォウォウォ」

 エルウッドに笑われてしまった。

「何だよエルウッド。釣りは難しいんだぞ?」
「フンッ」

 俺の顔を一瞥したエルウッドは、鼻で笑いそのまま湖へダイブ。
 すると湖面が強烈に発光し、水面に稲妻が走った。
 少し遅れて破裂音が発生。
 しばらくすると、湖の水面に数十匹の魚が浮かんできた。

「エルウッドのやつ、水中で雷の道ログレッシヴを出したぞ」
「あらあら、勝負はエルウッドの勝ちですね」

 エルウッドが湖から出て、身体の水を弾き飛ばしている。

「ウォンウォン!」

 勝ち誇った顔をしているエルウッド。

「あーあー、今日はもう釣りなんてできないぞ」
「そうですね。でも大漁です。皆さんに差し入れしましょう」

 大漁の魚を騎士団とトーマス工房に届けた。
 残りを俺たちパーティーの集会所に持ち帰り、オルフェリアが調理を開始。

「なんだ、君たちは釣りに行っていたのか?」
「アルったら、一匹も釣れなかったのですよ、フフ」
「う、うるさいな。初めてだったんだから仕方ないだろう」

 シドが腕を組み、首を傾け不思議そうな顔をしている。

「その割にはたくさんの魚があるじゃないか?」
「オルフェリアが釣ったんだ。凄かったよ」
「そんなことないですよ! エルウッドの雷の道ログレッシヴで大漁だったんです。でも、あれは釣りじゃありませんけどね。フフ」
「ウォン!」

 会話を聞いたレイが笑っている。

「アル、あなたにも苦手なものがあったのね。ふふふ」
「だって初めてだもん。次はたくさん釣るよ」
「ふふふ、楽しそうで何よりだわ」
「レイはやったことある?」
「私も釣りはないわね」
「じゃあ今度行こう」
「ふふふ、いいわね」

 ユリア、ローザ、ジョージが集会場へ来たので、その日は全員でたくさんの魚料理を楽しんだ。
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