鉱夫剣を持つ 〜ツルハシ振ってたら人類最強の肉体を手に入れていた〜

犬斗

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第十一章

第183話 軽い空気の探索

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 俺とシドが話をしていると、オルフェリアが木槌を持って歩いてきた。

「アル、シド。まずはここに小屋を建てますよ」
「ごめんオルフェリア! 今からやるよ!」

 俺たちはトーマス工房の組み立て式の簡易小屋を用意していた。
 これはトーマス兄弟に依頼して、通常販売しているものよりも大きくて頑丈に作ってもらったものだ。

 俺とシドで組み立てる。
 想像以上に簡単な工程で完成。
 さすがトーマス工房製だ。

 隣にもう一つ小さな小屋を建て、ここには組み立て式の簡易風呂を作った。
 目の前には広大な湖があり水は豊富だ。

「さあ、女性陣は風呂に入るが良い。ここまでよく我慢してくれたな。ありがとう」
「ふふふ、シドも人に気を使えるようになったのね」
「そうだぞ。私も妻帯者となったからな。ハッハッハ」

 レイとオルフェリアが風呂に入る。
 その後、俺も続く。

「シドは入らないの?」
「ん? あ、ああ、先に地図を書きたい。終わったら入るぞ」

 結局シドは風呂に入らなかったので、俺はオルフェリアに聞いてみた。

「ねえオルフェリア、シドって風呂嫌いなの?」
「そういえば滅多に見ませんね。不潔だと病気になりやすいのですが、シドは病気にならないから……」
「アハハ、迷惑なやつだなあ」
「フフ、本当ですね。でも、サルガでは疫病を発生させないように入っていたみたいですけどね。私も夫がお風呂に入らないのは嫌なので、後で入るように叱っておきます。フフ」

 オルフェリアは世界で唯一シドに注意できる人物だ。
 いや、もう一人いた。

「ちょっと、シド! お風呂に入りなさい! あなたが平気でも私たちが嫌なのよ!」
「わ、分かったよレイ。す、すまん。すぐ入るよ」

 レイだった。

 二十三歳に怒られる二千歳。
 俺とオルフェリアとエルウッドは、その姿を見て笑っていた。

 その後、全員で夕食を取り就寝。
 俺が見張りをしていると、シドが起きてきた。

「アル、交代だ」
「ありがとう」
「どうだ、この土地は?」
「凄いよ。夜でも火山は薄っすらと明るくて噴煙が見える。広大な湖と樹海。壮大な景色だ」
「うむ。数千年前に大噴火があってな。その影響で大地が割れ、大きな湖ができたんだ。湖の向こうに流れ出た溶岩は、長い年月をかけて樹海を作り、独特な生態系を作っている」
「これだけ自然が豊富な場所だ。食材だってあるだろうし、人が住むには最適じゃないか?」
「確かにそうだが、ヴェルギウスがいるからな」
「そ、そうだった……」
「人が定住すると自然を破壊する。もしかしたら竜種は自然を守っているのかもしれん」

 シドの発言に俺は言葉が出なかった。
 自然の姿と、人の生活は相反するのだろうか。
 より便利に、より快適に暮らすため文明は発達して行く。
 そのための犠牲は人間から見ると当たり前だが、原住種から見れば侵略だ。

「アルよ。文明の進化は自然の破壊でもあるのだ。覚えておくがいい」
「……分かった」

 だが人間だって、ヴェルギウスによってたった一日で二万人近い犠牲者が出たのだ。

「この世は弱肉強食。勝った方が正義か……」

 俺は呟いた。

 その後、シドと見張りを交代して就寝。
 翌朝、周辺の調査を行った。

「うむ。やはりここは基地建設に最適な土地だな」

 シドが周辺を見渡している。

「次は軽い空気の調査だ。私の研究によると、軽い空気は火山の地下で作られており空洞に溜まってる。それが裂け目から漏れるのだ。その噴出口を基地に最も近い場所で見つけたい」
「分かった。ちなみに、その軽い空気は人体に害はないのか?」
「それがな……分からんのだ。私は死なないからな。ハッハッハ」
「そうだったな。アハハ」
「念のために防毒マスクを持ってきている。マスクをして探そう」

 俺とレイとシドは防毒マスクを着用。
 オルフェリアは解体師特有のモンスターの皮で作ったマスクを着用している。
 エルウッドは素のままだ。

「エルウッド、無理するなよ」
「ウォン」

 基地建設予定地から五百メデルトほど歩くと、足元が岩場に変わる。
 火山の麓に入った。
 岩場は緩い斜面だ。
 植物の姿はなく、黒灰色の滑らかな岩が広がっている。

「流れ出た溶岩が固まったのだ。緩い斜面になっているのはそのせいだ」

 シドが説明してくれた。

 さっそく軽い空気を探す。
 だが、広大な岩場で特に目印となるものもない。
 午前中は痕跡すら発見できず、一旦昼食を取ることにした。

 俺たちは輪になって岩場へ直に座る。
 俺の横では、伏せて干し肉を食べているエルウッド。
 俺がエルウッドの頭を撫でていると、オルフェリアがスープを入れてくれた。

「ありがとう、オルフェリア」

 乾燥パンとオルフェリアが作ったスープを食べながら、岩場の景色を見渡す。

「見せない空気を探すのは難しいなあ」
「うむ、私も数百年前のことだがら、正確な場所までは覚えてないのだ」
「それは仕方がないさ」

 岩場は遮るものがないので、風の影響を受けやすい。
 風が吹くと砂埃が舞う。

「風が鬱陶しいな」

 シドが呟く。

 少し強い風が吹き砂埃が舞う。
 すると一箇所だけ、砂が落ちる速度が遅い場所があった。

「シド! あそこだけ様子がおかしい」
「でかしたぞ、アル!」

 食事を中断し、百メデルトほど先まで走る。

「それにしても、よく百メデルト先の砂が見えますね」

 オルフェリアが驚いてた。
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