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第八章
第130話 エルウッドの覚悟
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考え込む俺を横見に、シドがエルウッドの頭を撫でていた。
「エルウッドよ。君も真の角を生やして成体になるか? 紫雷石はあるぞ。成体になればアルのことを守れる。リスクもあるが、もっと強くなれるぞ」
「ウォン!」
「そうか、ではやろう」
何やら勝手に話が進んでいる。
「ま、待て! エルウッドに何をする!」
「聞いていただろう。エルウッドに真の角を生やすのだよ」
「だ、だめだ!」
「エルウッドがやると言ってるんだ。そもそもエルウッドは君より長寿で、知能だって高いぞ?」
「そ、そうは言っても……」
「大丈夫だ。エルウッドに危険はない。むしろ私の心配をして欲しいものだ。ハッハッハ」
「ど、どういうこと?」
「まあ見ていろ。君たちを帝都に呼んだ理由の一つが、エルウッドを成体にすることだからな」
シドは紫雷石を取り出す。
まさか、また紫雷石を見るとは思ってもいなかった。
「父さんから渡された紫雷石は破壊したけど、まだ紫雷石っていくつもあるの?」
「私の手元にあるのは、もうこれが最後だ。発掘しようと思えば世界のどこかにあるかもしれない。だがレア十だし、手に入らないと思うがな」
「レ、レア十!」
「そうだ。これ以上のレア度は存在しないぞ」
鉱石のレア度は十が最高値となっている。
しかし、実際にレア十の鉱石なんて聞いたことがない。
まさか紫雷石がレア十だったとは知らなかった。
シドは話しながら、エルウッドの額に紫雷石を近近付けた。
角が抜き取られて傷跡が残っている場所だ。
「エルウッド。君も知っての通り、強烈な雷が発生する。頑張れよ」
「ウォン!」
「アルも直接光を見ないように気をつけろ。耳も塞いでおけ」
「わ、分かった」
エルウッドの額に紫雷石が触れる。
一瞬の静寂のあとに強烈な閃光。
その直後、空気を引き裂くような轟音が発生した。
「うわっ!」
耳を塞いでなお、耳鳴りがするほどの轟音だ。
まるで目の前で雷が落ちたような現象だった。
シドに言われてなかったら、閃光で目が焼かれていただろう。
目の前にいたシドとエルウッドは白煙に包まれている。
「エルウッド!」
白煙が徐々に薄くなっていくと、エルウッドの姿が見えてきた。
額には……。
「角だ! 角が生えている!」
しかもその角は薄っすらと光っている。
これは以前、イエソン城で暗部と戦った時に発光した時と同じだ。
「成功したな。これでお前は成体だ。真の銀狼牙になったぞ。エルウッド・デル・ザナドゥよ」
「ウォン!」
「角の光は明日までに落ち着くだろう」
「ウォウ」
「知ってると思うが、むやみに雷を放出するのではないぞ? 溜めるのに時間がかかるからな」
「ウォンウォン!」
シドとエルウッドが話していた。
だがよく見ると、シドの様子がおかしい。
「シ、シド! み、右腕が!」
「あれだけの衝撃だ。右腕くらい吹き飛ぶさ。不老不死になりたての頃は何度かやらされたものさ」
シドの右腕が肩から完全になくなっていた。
「で、でも、右腕がなくなったら……」
「心配するな。私の場合、明日には復活する。今日はこのマントで隠すがな」
「い、痛くないのか?」
「そりゃ痛いさ。しかし慣れたよ。まあ最後にこれをやったのは約二千年前だがな。ハッハッハ」
右腕を失ってもシドは笑っていた。
そしてマントで右半身を隠す。
「アルよ。成体になったことで、エルウッドから直接不老不死の石が作れるようになったぞ」
「そうか! 成体の角があれば紫雷石は不要になるのか」
「うむ、君は賢いな」
成体となった銀狼牙の角、心臓、血液、つまりエルウッドだけで不老不死の石を作ることができる。
「この世で不老不死の石を知っているのは、王国で事件に携わった者たちだけだ」
「宰相やその一族は全員死刑になったよ」
「だが、刑を逃れた人間がいるかもしれない。復讐心を持つ者だっているかもしれない。それに女王陛下やレイ、リマだって知ってるだろう?」
「レイは俺のパートナーだ! それに陛下やリマだって大丈夫だ!」
「私もそう思ってるよ。だが人間は分かん。裏切りなぞ当たり前の種族だ。二千年も生きてるのだぞ、私は」
その言葉を聞いて何も言えなくなった。
「私が言いたいのは、別に女王陛下やリマを疑えということではない。それに私だってレイは信用している」
「じゃ、じゃあ……」
「成体となったエルウッドは、この世で唯一不老不死の石の素材になるということだ。用心に越したことはない。エルウッドを狙う者に気を付けろと言っているんだ」
「わ、分かった」
「だが、もちろんエルウッドも強くなった。狙われるリスクがあっても、エルウッドは君を守るための強さを選んだ。まあ君も守られるほど弱くはないけどな。ハッハッハ」
シドの言う通り用心に越したことはないだろう。
それに、俺の唯一の家族であるエルウッドを狙う者は、誰であろうと絶対に許さない。
「エルウッドよ。君も真の角を生やして成体になるか? 紫雷石はあるぞ。成体になればアルのことを守れる。リスクもあるが、もっと強くなれるぞ」
「ウォン!」
「そうか、ではやろう」
何やら勝手に話が進んでいる。
「ま、待て! エルウッドに何をする!」
「聞いていただろう。エルウッドに真の角を生やすのだよ」
「だ、だめだ!」
「エルウッドがやると言ってるんだ。そもそもエルウッドは君より長寿で、知能だって高いぞ?」
「そ、そうは言っても……」
「大丈夫だ。エルウッドに危険はない。むしろ私の心配をして欲しいものだ。ハッハッハ」
「ど、どういうこと?」
「まあ見ていろ。君たちを帝都に呼んだ理由の一つが、エルウッドを成体にすることだからな」
シドは紫雷石を取り出す。
まさか、また紫雷石を見るとは思ってもいなかった。
「父さんから渡された紫雷石は破壊したけど、まだ紫雷石っていくつもあるの?」
「私の手元にあるのは、もうこれが最後だ。発掘しようと思えば世界のどこかにあるかもしれない。だがレア十だし、手に入らないと思うがな」
「レ、レア十!」
「そうだ。これ以上のレア度は存在しないぞ」
鉱石のレア度は十が最高値となっている。
しかし、実際にレア十の鉱石なんて聞いたことがない。
まさか紫雷石がレア十だったとは知らなかった。
シドは話しながら、エルウッドの額に紫雷石を近近付けた。
角が抜き取られて傷跡が残っている場所だ。
「エルウッド。君も知っての通り、強烈な雷が発生する。頑張れよ」
「ウォン!」
「アルも直接光を見ないように気をつけろ。耳も塞いでおけ」
「わ、分かった」
エルウッドの額に紫雷石が触れる。
一瞬の静寂のあとに強烈な閃光。
その直後、空気を引き裂くような轟音が発生した。
「うわっ!」
耳を塞いでなお、耳鳴りがするほどの轟音だ。
まるで目の前で雷が落ちたような現象だった。
シドに言われてなかったら、閃光で目が焼かれていただろう。
目の前にいたシドとエルウッドは白煙に包まれている。
「エルウッド!」
白煙が徐々に薄くなっていくと、エルウッドの姿が見えてきた。
額には……。
「角だ! 角が生えている!」
しかもその角は薄っすらと光っている。
これは以前、イエソン城で暗部と戦った時に発光した時と同じだ。
「成功したな。これでお前は成体だ。真の銀狼牙になったぞ。エルウッド・デル・ザナドゥよ」
「ウォン!」
「角の光は明日までに落ち着くだろう」
「ウォウ」
「知ってると思うが、むやみに雷を放出するのではないぞ? 溜めるのに時間がかかるからな」
「ウォンウォン!」
シドとエルウッドが話していた。
だがよく見ると、シドの様子がおかしい。
「シ、シド! み、右腕が!」
「あれだけの衝撃だ。右腕くらい吹き飛ぶさ。不老不死になりたての頃は何度かやらされたものさ」
シドの右腕が肩から完全になくなっていた。
「で、でも、右腕がなくなったら……」
「心配するな。私の場合、明日には復活する。今日はこのマントで隠すがな」
「い、痛くないのか?」
「そりゃ痛いさ。しかし慣れたよ。まあ最後にこれをやったのは約二千年前だがな。ハッハッハ」
右腕を失ってもシドは笑っていた。
そしてマントで右半身を隠す。
「アルよ。成体になったことで、エルウッドから直接不老不死の石が作れるようになったぞ」
「そうか! 成体の角があれば紫雷石は不要になるのか」
「うむ、君は賢いな」
成体となった銀狼牙の角、心臓、血液、つまりエルウッドだけで不老不死の石を作ることができる。
「この世で不老不死の石を知っているのは、王国で事件に携わった者たちだけだ」
「宰相やその一族は全員死刑になったよ」
「だが、刑を逃れた人間がいるかもしれない。復讐心を持つ者だっているかもしれない。それに女王陛下やレイ、リマだって知ってるだろう?」
「レイは俺のパートナーだ! それに陛下やリマだって大丈夫だ!」
「私もそう思ってるよ。だが人間は分かん。裏切りなぞ当たり前の種族だ。二千年も生きてるのだぞ、私は」
その言葉を聞いて何も言えなくなった。
「私が言いたいのは、別に女王陛下やリマを疑えということではない。それに私だってレイは信用している」
「じゃ、じゃあ……」
「成体となったエルウッドは、この世で唯一不老不死の石の素材になるということだ。用心に越したことはない。エルウッドを狙う者に気を付けろと言っているんだ」
「わ、分かった」
「だが、もちろんエルウッドも強くなった。狙われるリスクがあっても、エルウッドは君を守るための強さを選んだ。まあ君も守られるほど弱くはないけどな。ハッハッハ」
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