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第八章
第128話 シドの秘密
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シドはエルウッドと面識がある?
俺は思わず声が出た。
「え! ど、どういうことですか?」
「私はエルウッドと家族同然なのだよ。それとな、私に敬語は不要だ。友人と思って接してくれ」
「し、しかし」
「まあ座るがよい。君の地元ラバウトから取り寄せた珈琲だ」
俺はソファーに座り、珈琲に口をつけた。
確かにラバウト産の珈琲だ。
「アルよ。私はな、君の父親と友人だったのだよ。まさか君という子供ができるとは思わなかったがな」
「え? 父さんと友人!」
「ああ。バディはギルドで医師をやっていた」
衝撃的な話を聞いた。
バディ・パートが父の名前だ。
「バディは医療機関の局長だった。その前は帝国の宮廷医師だったぞ。バディが帝国やギルドの医療レベルを引き上げたんだ」
父さんがギルドの医師?
さらに宮廷医師だった?
薬師とは聞いていたが、医師だったとは知らなかった。
局長ということはシグ・シックスのトップだし、宮廷医師ともなると国家の要職だ。
それより驚いたのが、ギルドにいた頃の父さんと友人という点だ。
シドはどう見ても俺と同年代だ。
当然ながら、父さんがギルドにいた頃なんて俺は生まれていない。
シドは若く見えるだけで相当な年齢なのか?
頭が混乱してきた。
「アルよ。君はエルウッドの秘密を知ったようだな」
「え?」
「イーセ王国での事件の真相は知っているぞ」
「な、なぜ!」
「私も色々とツテがあるのさ」
シドはエルウッドと家族同然で、エルウッドの秘密も知っている?
ダメだ、突然過ぎて全く理解できない。
「銀狼牙の角、心臓と血液、そして紫雷石が揃うと、雷の道が発生し不老不死の石を作ることができる」
「なぜそれを! ぶ、文献を読んだのか?」
王都での事件では、首謀者である宰相が偶然文献を発見し、取り憑かれたように不老不死を求めたのだった。
「ハッハッハ。文献も何も、あれを書いたのは私だ。ただの日記なので恥ずかしい限りだがな」
「え? ……ど、どういう」
「しかしな、あの日記は本当にただのメモに過ぎぬ。全くもって不完全なのだよ。銀狼牙の角は生え変わるんだ。角が生え変わることで銀狼牙は成体となる。成体の銀狼牙ではないと不老不死の石は発生しない」
「な、何を言って?」
「実はな、エルウッドはまだ幼体なんだ。角が生え変わっていない。だからあの時、角を抜いたのはある意味正解とも言える。抜いた角の場所に、紫雷石を埋め込むと新たな角に変化する。自然の生え変わりを待てない場合は、これで強制的に成体へ進化させるのだ」
「ちょっ、ちょっと……」
「落ち着け、アルよ」
落ち着けと言われても無理だ。
シドは俺の顔を真っ直ぐ見つめている。
「改めて名乗ろう。シド・フロイド・バレーが私の名だ」
「フロイド?」
「ああ、フォルド帝国の国名は私の名から来てるのだよ」
「ま、ま、ま、ま、まさか……まさか……」
「そのまさかだ。私は不老不死だ」
「バカな!」
「私は二千年前に不老不死となった」
「ほ、本当……なのか?」
「何だったら証拠を見せてもいいぞ」
あまりにも衝撃の内容だった。
俺は騙されているのだろうか。
しかし、父さんの話は信憑性があるし、不老不死の石の話は、あの事件で宰相が言っていたこと以上の内容だ。
「アルよ。現在、この世界に残ってる銀狼牙はエルウッドだけだ。しかし、二千年前には小さな群れがあった。そのうちの一頭を使って私は実験台にされたのだ」
「え? 自らの意志じゃないのか?」
「もちろんだ。誰が好んで不老不死になると思う?」
「でも、先王と宰相が不老不死になろうと……」
「彼らは知らないのだよ。不老不死の本当の不幸をな」
シドがエルウッドを見つめた。
「私の不老不死を確認して、当時の為政者たちは銀狼牙を狩った。しかし全員失敗した。簡単なものではないからな。身体との相性もある。私は最後の一頭となったエルウッドと必死に逃げた。人々が私のことを忘れるまで、約五百年間はエルウッドと逃げ回ったものだ。なあエルウッド」
「ウォン!」
「三十年前にエルウッドがバディと出ていくまで、私は二千年間エルウッドと一緒にいたぞ。ハッハッハ」
「ウォウォウォ!」
「じゃ、じゃあ、エルウッドの年齢は本当に……」
「ああ、私が生まれる前から生きている。二千五百歳は超えているはずだ。それでもまだ幼体だがな。エルウッドは私も分からない部分が多い。よく分からん。ハッハッハ」
シドが珈琲を飲むと部屋に静寂が訪れた。
話が急すぎて理解が追いつかない。
あまりにも非現実的なことばかりだ。
だが俺はシドの話を信じることにした。
王国での事件は当事者しか知らないし、父の話にしても不審な点は一つもない。
そもそも、俺にこんな嘘をつくメリットがない。
それにエルウッドの様子を見ても分かる。
エルウッドは人語を完全に理解している。
そのエルウッドが、シドの話を聞いて一切反論しない。
エルウッドが嘘をつくわけないから、全て本当のことだろう。
それにしても……。
この世に不老不死の人間が存在したとは……。
俺は珈琲を飲み、大きく深呼吸する。
飲み慣れた地元の珈琲を飲むと少し落ち着く。
きっとシドがこうなることを予想して、ラバウト産の珈琲を用意してくれたのだろう。
俺は思わず声が出た。
「え! ど、どういうことですか?」
「私はエルウッドと家族同然なのだよ。それとな、私に敬語は不要だ。友人と思って接してくれ」
「し、しかし」
「まあ座るがよい。君の地元ラバウトから取り寄せた珈琲だ」
俺はソファーに座り、珈琲に口をつけた。
確かにラバウト産の珈琲だ。
「アルよ。私はな、君の父親と友人だったのだよ。まさか君という子供ができるとは思わなかったがな」
「え? 父さんと友人!」
「ああ。バディはギルドで医師をやっていた」
衝撃的な話を聞いた。
バディ・パートが父の名前だ。
「バディは医療機関の局長だった。その前は帝国の宮廷医師だったぞ。バディが帝国やギルドの医療レベルを引き上げたんだ」
父さんがギルドの医師?
さらに宮廷医師だった?
薬師とは聞いていたが、医師だったとは知らなかった。
局長ということはシグ・シックスのトップだし、宮廷医師ともなると国家の要職だ。
それより驚いたのが、ギルドにいた頃の父さんと友人という点だ。
シドはどう見ても俺と同年代だ。
当然ながら、父さんがギルドにいた頃なんて俺は生まれていない。
シドは若く見えるだけで相当な年齢なのか?
頭が混乱してきた。
「アルよ。君はエルウッドの秘密を知ったようだな」
「え?」
「イーセ王国での事件の真相は知っているぞ」
「な、なぜ!」
「私も色々とツテがあるのさ」
シドはエルウッドと家族同然で、エルウッドの秘密も知っている?
ダメだ、突然過ぎて全く理解できない。
「銀狼牙の角、心臓と血液、そして紫雷石が揃うと、雷の道が発生し不老不死の石を作ることができる」
「なぜそれを! ぶ、文献を読んだのか?」
王都での事件では、首謀者である宰相が偶然文献を発見し、取り憑かれたように不老不死を求めたのだった。
「ハッハッハ。文献も何も、あれを書いたのは私だ。ただの日記なので恥ずかしい限りだがな」
「え? ……ど、どういう」
「しかしな、あの日記は本当にただのメモに過ぎぬ。全くもって不完全なのだよ。銀狼牙の角は生え変わるんだ。角が生え変わることで銀狼牙は成体となる。成体の銀狼牙ではないと不老不死の石は発生しない」
「な、何を言って?」
「実はな、エルウッドはまだ幼体なんだ。角が生え変わっていない。だからあの時、角を抜いたのはある意味正解とも言える。抜いた角の場所に、紫雷石を埋め込むと新たな角に変化する。自然の生え変わりを待てない場合は、これで強制的に成体へ進化させるのだ」
「ちょっ、ちょっと……」
「落ち着け、アルよ」
落ち着けと言われても無理だ。
シドは俺の顔を真っ直ぐ見つめている。
「改めて名乗ろう。シド・フロイド・バレーが私の名だ」
「フロイド?」
「ああ、フォルド帝国の国名は私の名から来てるのだよ」
「ま、ま、ま、ま、まさか……まさか……」
「そのまさかだ。私は不老不死だ」
「バカな!」
「私は二千年前に不老不死となった」
「ほ、本当……なのか?」
「何だったら証拠を見せてもいいぞ」
あまりにも衝撃の内容だった。
俺は騙されているのだろうか。
しかし、父さんの話は信憑性があるし、不老不死の石の話は、あの事件で宰相が言っていたこと以上の内容だ。
「アルよ。現在、この世界に残ってる銀狼牙はエルウッドだけだ。しかし、二千年前には小さな群れがあった。そのうちの一頭を使って私は実験台にされたのだ」
「え? 自らの意志じゃないのか?」
「もちろんだ。誰が好んで不老不死になると思う?」
「でも、先王と宰相が不老不死になろうと……」
「彼らは知らないのだよ。不老不死の本当の不幸をな」
シドがエルウッドを見つめた。
「私の不老不死を確認して、当時の為政者たちは銀狼牙を狩った。しかし全員失敗した。簡単なものではないからな。身体との相性もある。私は最後の一頭となったエルウッドと必死に逃げた。人々が私のことを忘れるまで、約五百年間はエルウッドと逃げ回ったものだ。なあエルウッド」
「ウォン!」
「三十年前にエルウッドがバディと出ていくまで、私は二千年間エルウッドと一緒にいたぞ。ハッハッハ」
「ウォウォウォ!」
「じゃ、じゃあ、エルウッドの年齢は本当に……」
「ああ、私が生まれる前から生きている。二千五百歳は超えているはずだ。それでもまだ幼体だがな。エルウッドは私も分からない部分が多い。よく分からん。ハッハッハ」
シドが珈琲を飲むと部屋に静寂が訪れた。
話が急すぎて理解が追いつかない。
あまりにも非現実的なことばかりだ。
だが俺はシドの話を信じることにした。
王国での事件は当事者しか知らないし、父の話にしても不審な点は一つもない。
そもそも、俺にこんな嘘をつくメリットがない。
それにエルウッドの様子を見ても分かる。
エルウッドは人語を完全に理解している。
そのエルウッドが、シドの話を聞いて一切反論しない。
エルウッドが嘘をつくわけないから、全て本当のことだろう。
それにしても……。
この世に不老不死の人間が存在したとは……。
俺は珈琲を飲み、大きく深呼吸する。
飲み慣れた地元の珈琲を飲むと少し落ち着く。
きっとシドがこうなることを予想して、ラバウト産の珈琲を用意してくれたのだろう。
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