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第八章

第124話 クエスト出発

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 開発機関シグ・ナインに到着。
 受付嬢とは顔馴染みなので、挨拶してそのままウォルターの支部長室へ進む。

「お! レイじゃないか! やっと帰ってきたな!」
「ええ、昨日帰ってきたわ」
「そうか。じゃあさっそくレイの装備を調整しよう」

 ウォルターがレイの新装備を出してきた。
 ダーク・ゼム・イクリプスとウォール・エレ・シャットのネームド二頭から作られた剣と鎧だ。

 まず鎧から調整となった。

「レイの鎧も性能はアルの黒靭鎧ウォルムと一緒だ。各パーツをレイのパーソナルカラーである碧で染めた。縁や繋ぎの革は素材のまま黒色だ。この鎧の名は碧靭鎧アズールだ」

 レイが鎧を着る。

「こ、これは凄い……。今の鎧より断然軽いわね。それに可動域が広いから動きやすい」
「ガハハハハ。そうだろ。シグ・ナインの技術を全て注ぎ込んだ自信作だ。レイの代名詞である神速の突きも、さらに速くなるだろう」
「ええ、そうね。この色も素敵。本当に凄いわ。ありがとう」

 ウォルターはそのまま鎧の最終調整を行った。

「完全にフィットしたわね」
「そうだろう。もし体型が変わっても調整できるから安心しろ。ガハハハハ」
「ふふふ、気をつけるわ」

 続いて剣を取り出す。

「こちらの素材もアルの黒爪の剣レリクスと全く一緒だ。形状は細剣レイピア。レイの戦い方に合わせてチューニングしてある」

 レイが剣を受け取り、その場で軽く振る。
 空気を切り裂く音だけが響き、切っ先は目に見えない。

「か、軽い。そして硬いのに良くしなる。剛性と柔性のバランスが恐ろしく秀逸だわ。クリスの剣も素晴らしかったけど、正直レベルが違うわね」

 剣を見つめるレイの表情から笑みがこぼれている。
 武器を見て喜ぶレイを見るのは初めてだ。
 こういう場面を見ると、やはりレイも剣士なんだと思う。

「我が弟クリスの剣も凄いが、これは局長がレイの特性に合わせて打った剣だからな」
神の金槌シャイオンのローザね」
「よく知ってるな」
「もちろんよ。ローザの剣を持つことは、剣士として最高の誉れよ」
「そうだろ! アルはその凄さに全然気付いてないけどな。ガハハハハ」

 俺の黒爪の剣レリクスは凄まじい性能を誇る。
 だが、ローザの作る剣が、それほどまでに価値があるものだとは知らなかった。

「こ、今度ローザにお礼しなきゃ」
「ガハハハハ。帝都へ行くんだろ? 局長にも会いに行ってくれ」
「分かったよ」

 そして、ウォルターはレイの剣のグリップを調整した。

「これでどうだ?」
「ええ、完璧よ」
「うむ。この剣はアルの黒爪の剣レリクスと対になる星爪の剣ライックだ。ちょうどここに星の模様があるだろう? ダーク・ゼム・イクリプスの爪についていた模様をそのまま使った。爪の星模様は幸運を呼ぶと言われているからな。ガハハハハ」
「とても素敵ね。本当に素晴らしいわ。ありがとう、ウォルター」
「ガハハハハ。気にするな。これでレイモデルも発売できる。レイモデルは剣も鎧も発売する。売れるぞ!」
「アルモデルの鎧が売れてるみたいね」
「そうなんだよ。儲けさせてもらってるぞ。ガハハハハ」

 その後も少しウォルターを世間話をしてシグ・ナインを出た。

 レイは俺と違って鎧を着ていない。
 専用のキャリーバッグに入れている。
 このバッグもとても洒落ているものだった。

 そして最後にギルドへ向かう。
 クエスト依頼書をもらい契約書に記入。
 これで正式にオルフェリアの護衛クエストを受諾した。

 ◇◇◇

 クエスト依頼書

 難度 Aランク
 種類 【指名】護衛
 対象 オルフェリア・コルトレ
 内容 ウグマからサンドムーンまでの護衛
 報酬 金貨十六枚
 期限 別途指示

 編成 アル・パート、レイ・ステラー指名
 解体 不要
 運搬 不要
 特記 詳細は契約書記載 冒険者税徴収済み

 ◇◇◇

「久しぶりにレイとクエストだね」
「ええ。楽しみだわ。よろしくね、凄腕冒険者のアル・パートさん」
「ちょっと!」

 レイと久しぶりのクエスト。
 さらにそれがオルフェリアの護衛ということで、俺はとても楽しみだった。

 ――

 一週間後、俺たちは予定通りウグマを出発。
 俺とレイとオルフェリアはそれぞれ馬に乗り、エルウッドはいつものように徒歩だ。

 帝都サンドムーンまで十日の行程。
 今回は研究機関シグ・セブンやギルマスからの招待ということで、宿泊費もギルドが支払ってくれることになった。

 帝都の街道は治安が良いとは言えない。
 出発から三日目。
 四人組の盗賊に襲われた。

「おいおい、女二人に男一人か。良い身分だな。しかも女二人はえれー良い女だぞ!」
「はあ、どうして盗賊って同じことしか言わないのかしら」

 レイが呆れながら呟く。

「それは仕方がないよ。やっぱり二人は綺麗だもん」
「アル。こんな状況なのに、なぜそんな余裕なのですか?」

 オルフェリアが俺に話しかけてきた。

「え? だってレイがいれば大丈夫だもん。問題ないよオルフェリア」
「ねえ、やめてくれる? アルがいれば大丈夫でしょう?」

 襲われているというのに、呑気に話し込む俺たち三人。

「おい! 何くっちゃべってんだ! 殺されたくなかったら金を置いていけ!」

 盗賊が怒鳴りながら一斉に剣を抜き、四人全員で襲ってきた。

「オルフェリア下がって。アル、そっちは任せたわ」
「分かった」

 レイは二人に向かって神速の突きを放つ。
 俺は一振りで二人を斬り捨てた。
 突如として発生した四人の盗賊の死体。

「ふ、二人とも凄すぎますね。一瞬で四人の盗賊を始末してしまうなんて……」

 オルフェリアが驚いている。
 実は俺もレイの剣技を見て気付いたことがあった。

「ねえレイ。突きの速度が上がってない? しかも今のは三段突きってやつでしょ。盗賊二人に六箇所も傷があるんだけど……」
「あら、よく見えたわね」
「王国から帰ってきて、また強くなったようだね。凄いな」
「アルほどじゃないわよ。たった一振りで二人を斬るなんて、どうかしてるわ?」

 俺はレイの剣技に驚いたのだが、逆に驚かれてしまった。
 それでもレイは確実に強くなっている。
 史上最高の冒険者と呼ばれるレイだが、改めてレイの凄さを目の当たりにしたのだった。
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