鉱夫剣を持つ 〜ツルハシ振ってたら人類最強の肉体を手に入れていた〜

犬斗

文字の大きさ
上 下
118 / 414
第七章

第114話 隊長会議

しおりを挟む
 翌日、朝から騎士団隊長による三番隊ピーター・バルスの騎士団葬を行った。

 ハウが私のために用意してくれた正式な騎士団の鎧に喪章をつけ、騎士団墓地で葬儀。
 私たちは必ず仇を取ることを約束した。
 そして私はザイン・フィリップの墓にも赴き、一輪の花を届けた。

 王城に帰還後、クロトエ騎士団の隊長会議が開始。
 十二人の隊長による敬礼で出迎えられながら、私は会議室へ入室。
 ここにいるのはイーセ王国の最高戦力。
 その姿はまさに圧巻だ。

 その後ヴィクトリアが入室。
 私を含め全員最敬礼で出迎える。
 ヴィクトリアが私の隣に座るのを見て、号令をかけ全員を着席させる。

「すでに知ってると思うが、私は騎士の責務と交換条件アズ・イノー・ディグレスでここにいる。退団した身でこの場にいることを許して欲しい」
「ハッ!」

 隊長全員が一斉に答えた。

 ◇◇◇

 近衛隊 リマ・ブロシオン 二十七歳 女 王室
 一番隊 ハウ・ギブソン  四十六歳 男 イエソン城
 二番隊 アラン・ブラック 三十二歳 男 ロンハー地方
 三番隊
 四番隊 ビル・フォード  三十五歳 男 フースト地方
 五番隊 ウェイク・マーク 二十九歳 男 キーズ地方
 六番隊 シャル・ウッド  三十三歳 女 グラト地方
 七番隊 アリナ・レンデ  二十八歳 女 ルイヤ地方
 八番隊 スティーヴ・ホル 二十七歳 男 ユニオ地方
 九番隊 ジル・ダズ    三十五歳 男 カトル地方
 十番隊 イゴル・コロフ  四十五歳 男 マグニ地方
 十一番隊 ジョディ・ペリー 三十歳 女 ワインド地方
 十二番隊 ケイ・シェプセン 二十五歳 女 ミラザス地方

 前団長 レイ・ステラー    二十二歳 女
 女王  ヴィクトリア・イーセ 二十歳 女

 ◇◇◇

 隊長会議は司会役が順番で回る。
 今回の担当は六番隊だ。

「六番隊のシャル・ウッドです。今回の司会進行役を承りました。皆様、よろしくお願いいたします」

 シャル・ウッドは三十三歳の女性だ。
 六番隊は王国北西部のグラト地方を守護している。
 グラト地方の国境はジェネス王国とクリムゾン王国の二国に接しており、地政学的に国内でも最重要な地方だった。
 その地を任せられている彼女は、判断力と交渉力に優れている。

「今回の議題は三つです。ピーター隊長暗殺の件、王の一撃ヴァリクス紛失の件、次期騎士団団長の件です。皆様、忌憚なきご意見をお願いいたします」

 ジル・ダズが挙手。

「ヴァリクス紛失からピーター隊長暗殺と、これまでの騎士団ではあり得なかった事件が続きました。皆様独自の調査ルートをお持ちでしょうが、今回は自重ください。本件は女王陛下承認のもと、私が全て取り仕切ります。今回は情報戦です。一つの誤情報が命取りとなります」
「うむ、我が騎士団で最も情報に精通しているジルだ。皆も異論あるまい」

 ハウが各隊長に根回ししてくれたおかげで全員賛成だった。

「皆様、ありがとうございます。それでは、ここまでの調査を共有します」

 ◇◇◇

 何者かが隊長室に侵入しピーターを絞殺。
 死因は窒息死だが、首の骨も折れていた。

 内部犯行の調査では問題なし。
 隊長室の前には常に二人の守衛がおり、犯行時に不審者はいなかった。
 隊長室は砦の最上階五階にあり、外からの侵入は不可能。

 ピーターの首の周りに大量の粘液が付着。
 建物の外壁や内壁、天井にも乾いた粘液が付着していた。

 騎士団の砦、それも高階層にある隊長室へ侵入し、隊長暗殺は可能なのか?
 否、人間には不可能である。

 粘液はモンスターの物と思われる。
 そのため、粘液を分析に出した。

 ◇◇◇

 私は気になった点をジル・ダズに質問することにした。

「その粘液はどこへ分析に出したの?」
「冒険者ギルドの研究機関シグ・セブンです。彼らはモンスターのプロですから」
「外部に頼ったのか!」

 反論の声が聞こえるが、私はそれを制する。

「よい、続けろジル・ダズ」
「ハッ! シグ・セブンに提出したところ、どうやら砂潜竜サンキロスの舌の粘膜に似ているという第一報をもらいました。これからさらに解析するそうです」

 リマが挙手した。

「サンキロスはレイと討伐したことがある。体長は三メデルトほどだ。侵入すれば気付かないわけないだろう? それに剣の達人のピーターさんだぞ?」

 私は一つ思い当たる点があった。

「待ってリマ。心当たりがある」

 全員が私の顔を見る。

「サンキロスのネームドにいるのよ。身体を周囲の景色と同化させることができる個体が。確か名前はシーク・ド・トロイ」
「な、なんだって! じゃあそいつが侵入して暗殺したってことか? でも五階だぞ?」

 リマの疑問はもっともだ。

「シーク・ド・トロイは壁どころか天井も歩くことができるわ。壁に残っていた粘液の跡がその証拠よ。それにシーク・ド・トロイの名前の意味は、見えない侵入者だもの」

 ジル・ダズが呆れたような表情を浮かべている。

「レイ様が全て説明してくださいました。シグ・セブンの資料には、シーク・ド・トロイの名がありました」

 隊長たちがざわつく。

「ど、どうやってネームドを使役するのだ?」
「そもそも、ネームドを使役することなんてできるのか?」

 そこでジル・ダズが挙手した。

「恐らく高等な使役師の仕業でしょう」

 モンスターを使役する使役師という職業がある。
 甲犀獣ケラモウムを使って運搬する運び屋も使役師だし、ネームドのエルウッドを従えるアルも、広義の意味では使役師に該当するだろう。

 何者かがそのシーク・ド・トロイを使って、ピーターを暗殺したのは間違いないようだ。

「分かったわ。シグ・セブンへの調査依頼は今後も進めてちょうだい。何かあれば私の名前を出していいわ。というか、出した方が早いわね」
「承知いたしました。ご配慮ありがとうございます」

 私はジル・ダズに指示を出した。
 すると、ハウが口髭を触りながら挙手をする。

「ジルよ。暗殺方法が分かったとして、王の一撃ヴァリクス盗難はどうなんだ?」
「恐らくは同一犯でしょう。方法は分かりませんが、シーク・ド・トロイを使って王城に忍び込み、ヴァリクスを持ち去ったかと思われます。現在、王城内に痕跡が残っていないか調査中です」
「目的は何なんだ?」

 ハウの疑問はもっともだろう。
 だが、確実な答えなんて不明だ。

「目的なんてたくさんありすぎで分からないわ。犯罪組織にとって騎士団は恨みの対象ですもの」
「確かにな……レイの言う通りか」

 ハウも、さすがに納得せざるを得ないという表情を浮かべていた。
 するとジル・ダズが再度挙手。

「今回は犯罪組織による犯行で間違いないですが、どうやら新たな犯罪組織のようです」
「それって、以前私たちが討伐した霧大蝮ネーベルバイパーと関連のある組織かしら?」
「ハッ、その可能性が高いと思われます」

 ジル・ダズが全員を見渡す。

「皆様、警備を厳重にしてください。敵は目に見えないモンスターです。それもネームドです。隊長格を狙ってるのは間違いないでしょう。最大限の警戒をお願いいたします」
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

処理中です...