鉱夫剣を持つ 〜ツルハシ振ってたら人類最強の肉体を手に入れていた〜

犬斗

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第六章

第103話 クエストの新しい形

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 王鰐ルクコスの捕獲から二週間。
 秋も深まり、肌寒さを感じる日々となってきた。
 フォルド帝国に来てから初めての秋だ。

 俺の地元であるイーセ王国のラバウトは、温暖な気候なため秋でも比較的暖かかった。
 ウグマはラバウトよりも北にあるので、間違いなく寒いはずだ。

「そういえば冬服を持ってない。買いに行かなきゃな」

 俺がリビングのソファーでくつろいでいると、メイドのエルザが紅茶を淹れてくれた。

 今日の紅茶はいつもと違う特別な紅茶だそうだ。
 とてもいい香りがする。
 もちろん美味しい。
 エルザの流れるような所作を見て、ふと思いついた。

「ねえ、エルザ。今度一緒に冬服を買いにつき合ってくれないかな?」
「え? わ、私がですか?」
「うん。レイもいないし、俺は服とか分からないから……」
「もももも、もちろんです!」
「ありがとう! 助かるよ!」

 紅茶を飲んでいると、キッチンの方から「ズルい!」というマリンの叫び声が聞こえてきた。
 何だったのだろう。
 しばらくすると、執事のステムが声をかけてきた。

「アル様、ギルドから連絡員が来ました」
「連絡員? 分かった。ありがとうステム」

 内容を聞くと、ギルドの支部長リチャードからの呼び出しだった。
 さっそくギルドへ向かい、支部長室へ入る。

「アルよ。ウグマの郊外で、お前たちがクエストの出発地点にしている場所があるだろう?」
「はい。運び屋の荷車で出発するので、なるべく人目につかない場所を選びました」
「それがな、お前たちの影響で、あの場所がクエスト出発地として流行っているんだ」
「ええ! た、確かに最近は屋台が出てたり、妙に発展してると思いましたが……」
「うむ。まあギルドとしても好都合だから、あの場所に出張所を作ったんだ」
「出張所? 凄いですね」
「あそこは近い将来、ウグマのクエスト基地になるだろう。これはギルドとしてもケースモデルとして検証していきたい案件だ」

 あの場所がクエスト基地に発展するのか。
 まさかそんなことが起こるなんて信じられない。

「さらにな、冒険者が解体師や運び屋とパーティーを組むことも流行ってきているんだ」
「え! 本当ですか?」
「ああ、これもお前の影響だ。我々ギルドは、解体師や運び屋への偏見をどうやってなくすか検討している最中だったが、お前の影響ですんなり進みそうだよ」
「良かったです」
「全く、本当に信じられん」
「でもこれは必然的な流れですよ。この方が絶対に効率的ですから」
「うむ、そうだな。今や腕の良い解体師や運び屋を取り込もうと、争奪戦も起こってるらしいぞ」
「それは凄いですね」
「ああ。これで解体師や運び屋を目指す若者が増えていくだろう」

 部屋にノックの音が響き、受付嬢が珈琲を持ってきてくれた。
 珈琲を飲むと、リチャードが思い出したような表情を浮かべる。

「ああ、そうだ。クエスト報酬の形態を変更したんだ」
「え? どういうことですか?」
「これまではのクエストは、全ての素材をギルドが買い取る前提で報酬を支払っていたが、それを撤廃したんだ。基本報酬を支払い、素材は別途状態を見て買い取ることにした」
「じゃあ、クエスト報酬は下がるんですか?」
「そういうことになる。しかし、素材の状態が良ければ、結果的に報酬は上がるぞ」
「なるほど……。つまり、腕の良い解体師や運び屋がいれば報酬は上がるということですね?」
「そうだ! 解体師や運び屋の重要性が上がるようにしたのだ!」
「おお! それは凄いですね!」
「だから素材の買い取りができるよう、広場には買取窓口も作っているのだよ」

 解体師や運び屋の地位が上がるのは俺も嬉しい。
 特にオルフェリアは本当に凄い技術を持っているのだから、もっと認められて欲しいと思っていた。

「さらにな、人事機関シグ・フォーが、解体師や運び屋にもランク制を導入しようと検討している」
「え! ランク制ですか?」
「そうだ。ユリア・スノフ局長の仕事は恐ろしく早いからな。すぐにでもルールが整備されていくだろう」

 解体師や運び屋にもランクができると、これまでよりも明確に実力勝負の世界となる。
 もちろん反対する人たちいるだろう。
 しかし、将来のことを考えるとメリットの方が大きいはずだ。

「アルよ。オルフェリアは今や講師をしているほどの実力者だ。他の冒険者から、たくさん声がかかってるんじゃないか?」
「もしそうなら嬉しいですね」
「いいのか? お前の解体師がいなくなるぞ」
「そうなったらまた考えます。アハハ」
「お前は呑気だな。わっはっは」

 話が終わると、リチャードは一枚の書類を取り出した。

「さて、ここに呼んだのは世間話だけではない。クエスト依頼だ」
「分かりました。今回の内容は?」
「この依頼書を見るがいい」

 ◇◇◇

 クエスト依頼書

 難度 Bランク
 種類 狩猟 および 採取
 対象 大挟甲蟹アキュラータ 
 内容 アキュラータ一匹の狩猟 全ての食材
 報酬 金貨五枚
 期限 一ヶ月以内

 編成 Bランク三人以上
 解体 ギルド負担
 運搬 ギルド負担
 特記 出現場所は指示書参照 詳細は契約書記載 冒険者税徴収済み

 ◇◇◇

大挟甲蟹アキュラータですか?」
「そうだ。今回は討伐ではなく狩猟だ。そして全ての素材を持ち帰ってくるんだぞ」
「あの、リチャードさん。今さらなんですが、討伐と狩猟の違いって……」
「わっはっは。そうか、ネームドを一人で倒すAランクの冒険者でも、経験が少なすぎるからな。師匠のレイもいないし分からなくて当然か」

 リチャードが討伐と狩猟の違いを説明してくれた。

 ◇◇◇

 討伐 
 出現したモンスターによる被害がある場合、もしくは被害が出そうな時に、その特定の個体を駆除すること。

 狩猟
 モンスターの素材が必要な時などに、同種の中から不特定の個体を狩ること。

 ◇◇◇

「そういうことだったんですね」
「そうだ。特定の個体を討伐するより、不特定の狩猟の方が難易度は低い」
「じゃあ今回は、アキュラータなら何でもいいんですね?」
「ああ、そういうことになるな。そういえば、お前は節足型のクエストは初めてじゃないか?」
「はい、そうです」
「ふむ。では研究機関シグ・セブンで話を聞くがいい」
「そうですね。そうします」

 モンスター学によると、モンスターは大きく三つの型に分類されている。
 竜骨型、四肢型、節足型だ。
 そこからさらに分類されていく。

 アキュラータは節足型殻類に該当するモンスターだ。

「ちなみに、このクエストの依頼主を聞いて驚くなよ?」
「え? どなたですか?」
「冒険者ギルドだ!」
「え!?」
「つまり、我々だ」
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