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第六章
第90話 告白
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夕食後、酔ったリマをなだめて客室へ押し込む。
そしてレイが俺の部屋に来た。
「アル、私は明日出発するわ。一日でも早く帰った方が良さそうだから」
「そうだね。分かったよ」
「アルも一緒に来る?」
「いや、騎士団のことは部外者だし、製作中の装備もあるから俺はここに残るよ」
「そうね……。ここから王都は往復で約二ヶ月。解決にどのくらい時間がかかるか分からないけど、最低でも三ヶ月は帰って来れないと思う」
「そんなに?」
「寂しい?」
「あ……う、うん。寂しいかも」
「ふふふ、私も寂しいわ」
レイが抱きついてきた。
酒も入っていて、少し大胆になっているようだ。
「レイ。エルウッドを護衛につけるから一緒に行って」
「え? エルウッドはアルと離れないわよ?」
「大丈夫。エルウッドはレイのことも家族だと思っているから」
「本当! 嬉しいわ。じゃあ、お言葉に甘えてエルウッドに来てもらおうかしら」
レイが俺の胸に頬を寄せる。
「ふふふ、あなたと一緒に旅をして約五ヶ月。ずっと一緒だったものね」
「そうだね。毎日一緒だった。レイがいたからここまでやってこれたんだ」
たった五ヶ月だけど、レイといた時間はとても濃厚だった。
長年フラル山で一人暮らしをしてきた俺にとって、両親が死んでからこれほど誰かと一緒にいたことはない。
レイには師匠としてたくさんのことを教えてもらった。
そして、楽しい時も、苦しい時も、悲しい時も、命の危険を感じた時も、レイはずっと横にいてくれた。
レイがいたからここまでやってこれたのは間違いない。
抱き付いているレイの顔を見ると、宝石のような紺碧色の瞳に惹き込まる。
あまりに……美しい。
「レイ」
「なあに?」
「俺、レイが好きだ」
「え? な、何? ど、どうしたの突然?」
「あっ! いや、ご、ごめん! ……その、レイを見ていたら言葉が出てきた」
なぜこんな言葉が出てきたのか、自分でも驚く。
レイも驚いた表情だったが、すぐに微笑みへと変わった。
「嬉しい。私はずっとアルのことが好きだったのよ?」
「え? 本当に?」
「あなた、もしかして何も気付いてなかったの?」
「あ、あの……ごめん」
「ふふふ、あなたらしいわね」
「レイ、いつも一緒にいてくれてありがとう」
「もう、離れるのが寂しくなっちゃったじゃない」
「ごめん」
「バカ」
少しの静寂。
そして、俺はレイにキスをした。
「ふふふ、嬉しい」
「俺……、山でレイにキスされたのが初めてだったんだ」
「私もよ? アルとだけよ? あなたはモテるけどね」
「そ! ……そんなこと……な、ないよ」
「ふふふ、別にいいのよ。アル、大好きよ」
「俺もだよ。好きだ、レイ」
もう一度キスをした。
「レイ、明日は見送るね」
「ええ、ありがとう」
少しの言葉を交わし、レイは部屋に戻った。
「ふう。言葉って自然と出てくるんだな……」
顔が真っ赤になっているのが分かる。
以前ファステルに、人を好きになる気持ちがまだ分からないと伝えたことがあったが、今ようやく分かった。
俺はレイが好きだ。
自分の気持ちにはっきりと気付いた。
心臓の鼓動が速い。
ドキドキして眠れない。
眠れな……。
――
翌朝、日の出とともに目を覚ます。
庭へ出ると、エルウッドが何やら運動していた。
最近は踊りにハマっているらしく、暇さえあれば踊っている。
しかし、どう見ても変な踊りだった。
一体誰に教わったんだろう?
「エルウッド、おはよう」
「ウォン」
「レイがイーセ王国に帰ることになった。レイを守ってもらえる?」
「ウォン!」
「ありがとう!」
「エルウッドとはしばらく離れるけど、俺は三ヶ月間クエスト禁止だし何も心配いらないからね」
「ウォウウォウ!」
「レイの護衛を頼んだよ」
「ウォン!」
足音が聞こえた。
「エルウッドがいれば寂しくないわ」
「ウォウウォウ!」
声の持ち主はレイだった。
「おはよう、アル」
「おはよう、レイ」
俺はレイの顔を見るのが恥ずかしかった。
「何照れてるの?」
「て、照れてなんかないよ!」
「ふふふ、顔が赤いわよ」
「あ、いや、その。……レイが綺麗だから」
「ちょっと急に。や、やだ」
レイが下を向いた。
顔が真っ赤だ。
その横で、エルウッドは変な踊りを続けている。
ちょうどそのタイミングでリマが起きてきた。
「おはよう、レイ、アル君」
「お、おはようリマ」
「ん? レイ顔が赤いぞ? どうした?」
「え? そ、そうかしら」
「風邪か? 春とはいえ体調は気をつけろよ。フハハハ」
リマは勘違いしたまま、踊っているエルウッドを見る。
「お! エルウッドはダンスもできるのか!? かっこいい踊りだな!」
「ウォン!」
あの変な踊りをかっこいいというリマのセンスって……。
その後、朝食を取り、レイとリマの出発を見送る。
使用人たちも家の外まで出てきてくれた。
「ステム、私が不在の間はアルをよろしくね」
「はい、レイ様。お任せください」
メイドのエルザがレイに一礼した。
「レイ様、お帰りをお待ちしております。道中お気をつけて行ってらっしゃいませ」
「ありがとう。帰ってきたら、真っ先にエルザの紅茶を飲ませてね」
続いてメイドのマリン。
「レイ様、イーセ王国のお土産をお待ちしてます!」
「ふふふ、マリンったら。分かってるわよ。代わりにケーキを作って待っててね」
最後に庭師のミック。
「レイ様、馬の手入れは万全です。無事に帰ってきでくだせえ」
「ええ、もちろんよミック。帰ったらまた馬をよろしくね」
レイは全員の顔を見渡した。
「じゃあ皆、行ってきます!」
俺はウグマの城壁の外まで、レイとリマを送ることにした。
街を出てしばらく進む。
「アル、ここら辺で大丈夫よ?」
「そうか。これ以上進むと自宅に戻るのが夜になるか」
俺たちは一度立ち止まる。
「レイ、気をつけてね」
「ふふふ、エルウッドがいるから平気よ」
「エルウッド、レイを頼んだぞ」
「ウォン」
エルウッドがいれば安心だ。
そして最後に二人の顔を見た。
「じゃあ、レイ、リマ。本当に気をつけて」
「ありがとう。行ってくるわね」
「アル君、ありがとう。レイのことは任せろ」
数百メデルト進むと、振り返って手を振るレイ。
俺はしばらくの間、レイとリマ、そしてエルウッドの後ろ姿を馬上から眺めていた。
そしてレイが俺の部屋に来た。
「アル、私は明日出発するわ。一日でも早く帰った方が良さそうだから」
「そうだね。分かったよ」
「アルも一緒に来る?」
「いや、騎士団のことは部外者だし、製作中の装備もあるから俺はここに残るよ」
「そうね……。ここから王都は往復で約二ヶ月。解決にどのくらい時間がかかるか分からないけど、最低でも三ヶ月は帰って来れないと思う」
「そんなに?」
「寂しい?」
「あ……う、うん。寂しいかも」
「ふふふ、私も寂しいわ」
レイが抱きついてきた。
酒も入っていて、少し大胆になっているようだ。
「レイ。エルウッドを護衛につけるから一緒に行って」
「え? エルウッドはアルと離れないわよ?」
「大丈夫。エルウッドはレイのことも家族だと思っているから」
「本当! 嬉しいわ。じゃあ、お言葉に甘えてエルウッドに来てもらおうかしら」
レイが俺の胸に頬を寄せる。
「ふふふ、あなたと一緒に旅をして約五ヶ月。ずっと一緒だったものね」
「そうだね。毎日一緒だった。レイがいたからここまでやってこれたんだ」
たった五ヶ月だけど、レイといた時間はとても濃厚だった。
長年フラル山で一人暮らしをしてきた俺にとって、両親が死んでからこれほど誰かと一緒にいたことはない。
レイには師匠としてたくさんのことを教えてもらった。
そして、楽しい時も、苦しい時も、悲しい時も、命の危険を感じた時も、レイはずっと横にいてくれた。
レイがいたからここまでやってこれたのは間違いない。
抱き付いているレイの顔を見ると、宝石のような紺碧色の瞳に惹き込まる。
あまりに……美しい。
「レイ」
「なあに?」
「俺、レイが好きだ」
「え? な、何? ど、どうしたの突然?」
「あっ! いや、ご、ごめん! ……その、レイを見ていたら言葉が出てきた」
なぜこんな言葉が出てきたのか、自分でも驚く。
レイも驚いた表情だったが、すぐに微笑みへと変わった。
「嬉しい。私はずっとアルのことが好きだったのよ?」
「え? 本当に?」
「あなた、もしかして何も気付いてなかったの?」
「あ、あの……ごめん」
「ふふふ、あなたらしいわね」
「レイ、いつも一緒にいてくれてありがとう」
「もう、離れるのが寂しくなっちゃったじゃない」
「ごめん」
「バカ」
少しの静寂。
そして、俺はレイにキスをした。
「ふふふ、嬉しい」
「俺……、山でレイにキスされたのが初めてだったんだ」
「私もよ? アルとだけよ? あなたはモテるけどね」
「そ! ……そんなこと……な、ないよ」
「ふふふ、別にいいのよ。アル、大好きよ」
「俺もだよ。好きだ、レイ」
もう一度キスをした。
「レイ、明日は見送るね」
「ええ、ありがとう」
少しの言葉を交わし、レイは部屋に戻った。
「ふう。言葉って自然と出てくるんだな……」
顔が真っ赤になっているのが分かる。
以前ファステルに、人を好きになる気持ちがまだ分からないと伝えたことがあったが、今ようやく分かった。
俺はレイが好きだ。
自分の気持ちにはっきりと気付いた。
心臓の鼓動が速い。
ドキドキして眠れない。
眠れな……。
――
翌朝、日の出とともに目を覚ます。
庭へ出ると、エルウッドが何やら運動していた。
最近は踊りにハマっているらしく、暇さえあれば踊っている。
しかし、どう見ても変な踊りだった。
一体誰に教わったんだろう?
「エルウッド、おはよう」
「ウォン」
「レイがイーセ王国に帰ることになった。レイを守ってもらえる?」
「ウォン!」
「ありがとう!」
「エルウッドとはしばらく離れるけど、俺は三ヶ月間クエスト禁止だし何も心配いらないからね」
「ウォウウォウ!」
「レイの護衛を頼んだよ」
「ウォン!」
足音が聞こえた。
「エルウッドがいれば寂しくないわ」
「ウォウウォウ!」
声の持ち主はレイだった。
「おはよう、アル」
「おはよう、レイ」
俺はレイの顔を見るのが恥ずかしかった。
「何照れてるの?」
「て、照れてなんかないよ!」
「ふふふ、顔が赤いわよ」
「あ、いや、その。……レイが綺麗だから」
「ちょっと急に。や、やだ」
レイが下を向いた。
顔が真っ赤だ。
その横で、エルウッドは変な踊りを続けている。
ちょうどそのタイミングでリマが起きてきた。
「おはよう、レイ、アル君」
「お、おはようリマ」
「ん? レイ顔が赤いぞ? どうした?」
「え? そ、そうかしら」
「風邪か? 春とはいえ体調は気をつけろよ。フハハハ」
リマは勘違いしたまま、踊っているエルウッドを見る。
「お! エルウッドはダンスもできるのか!? かっこいい踊りだな!」
「ウォン!」
あの変な踊りをかっこいいというリマのセンスって……。
その後、朝食を取り、レイとリマの出発を見送る。
使用人たちも家の外まで出てきてくれた。
「ステム、私が不在の間はアルをよろしくね」
「はい、レイ様。お任せください」
メイドのエルザがレイに一礼した。
「レイ様、お帰りをお待ちしております。道中お気をつけて行ってらっしゃいませ」
「ありがとう。帰ってきたら、真っ先にエルザの紅茶を飲ませてね」
続いてメイドのマリン。
「レイ様、イーセ王国のお土産をお待ちしてます!」
「ふふふ、マリンったら。分かってるわよ。代わりにケーキを作って待っててね」
最後に庭師のミック。
「レイ様、馬の手入れは万全です。無事に帰ってきでくだせえ」
「ええ、もちろんよミック。帰ったらまた馬をよろしくね」
レイは全員の顔を見渡した。
「じゃあ皆、行ってきます!」
俺はウグマの城壁の外まで、レイとリマを送ることにした。
街を出てしばらく進む。
「アル、ここら辺で大丈夫よ?」
「そうか。これ以上進むと自宅に戻るのが夜になるか」
俺たちは一度立ち止まる。
「レイ、気をつけてね」
「ふふふ、エルウッドがいるから平気よ」
「エルウッド、レイを頼んだぞ」
「ウォン」
エルウッドがいれば安心だ。
そして最後に二人の顔を見た。
「じゃあ、レイ、リマ。本当に気をつけて」
「ありがとう。行ってくるわね」
「アル君、ありがとう。レイのことは任せろ」
数百メデルト進むと、振り返って手を振るレイ。
俺はしばらくの間、レイとリマ、そしてエルウッドの後ろ姿を馬上から眺めていた。
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