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第五章
第86話 新しいランク
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続いてリチャードが俺の顔を見る。
「アル。討伐スコアを更新する。後ほど人事機関へ行くがいい」
「分かりました」
「そして今後のことだが、アルはもう規格外すぎる。そこで、ギルドはアルに新しいランクの検討を開始した」
「新しいランク?」
「そうだ。Aランクより上はない、そこでSランクを新設する。決定にはもう少し時間がかかるがな。これは他言無用だぞ」
リチャードの発言にレイが反応した。
「そうですね。アルはもうAランクを超えてますもの」
「わっはっは、そう言うがね、レイ。君もSランク候補なのだよ」
「待ってくださいリチャードさん! 私は何もしてません!」
「君だってアルに負けないどころか、それ以上の実績を持っている。それに、アルとパートナーを組んでいけるのは君だけだ」
「最近の私は……何もできてません」
「そう言うな。アルだって師匠の君がいないと何もできまい。それに君は世界的に名が知れている。実績も知名度も申し分ない」
「ふうう、分かりましたわ。ギルドの決定に従います」
「そうしてくれ。もしSランクが決定しても浸透には時間がかかる。恐らくSランクの存在自体、当面は世間に伝わらないだろう。もしかしたらバカにされるかもしれん。そういう意味でも、人格者であるレイとアルが適任なのだよ」
「評価していただいてるのですね」
「もちろんだ。ただし、君たちの評価は人事機関のユリア・スノフ局長とギルマスが担当だがな。わっはっは」
「はああ、面倒事を全部押し付けてるわけですね」
「それも君たちの役目だ。わっはっは」
リチャードが笑いながら一度珈琲を口にする。
そして俺の顔を見た。
「さて、アルはしばらく休むといい。ダーク・ゼム・イクリプスの討伐から二週間後にウォール・エレ・シャットの討伐だ。これは尋常ではない」
「え? だ、大丈夫です!」
「ダメだ。三ヶ月はクエスト禁止だ。ギルドに周知するから支部を変えても無駄だぞ。直請けもダメだ。いいな」
「三ヶ月も?」
「莫大な金貨を稼いだだろう? 初めて来た帝国だ。ゆっくり観光でもどうだ。いい国だぞ。わっはっは」
話し終えると、リチャードとギルは部屋を出ていった。
部屋に残っているのは俺とレイとウォルターだ。
ウォルターが顎を撫でながら、俺の顔を見る。
「ネームドを討伐しすぎてクエスト禁止になる奴なんて初めて見たぞ! お前は本当に凄いな! ガハハハハ」
「悪いことしてないのにクエスト禁止って……」
「いい機会じゃないか。どうせ剣もないことだしな」
「そうだった。新しい剣をどうしよう」
ウォルターが珈琲をすする。
そして、意味深な笑顔を作った。
「アルの新しい剣だが、我々開発機関が作る。それもダーク・ゼム・イクリプスとウォール・エレ・シャットの素材でな」
「え! 本当に?」
「もちろんだ。お前はシグ・ナインとエンドース契約してるんだぞ?」
「そ、そうだけど、なんだか申し訳ないよ」
「気にするな。シグ・ナインにとってもメリットしかないんだからな。ガハハハハ」
「分かったよ。ありがとうウォルター」
「鎧に関してはすでに設計中だったが、改めて一から作り直す。ネームド二頭から作られた剣と鎧なんてこの世にないぞ!」
「話を聞くだけでも凄いよ」
「何を他人事のように言っている! 二頭ともお前が狩ったんだぞ! ガハハハハ」
相棒だった片刃の大剣が使えなくなるのは悲しいけど、新しい剣も鎧も楽しみだ。
さらにウォルターは、片刃の大剣を可能な限り修復すると言ってくれた。
元々歴史に残るほどの素晴らしい剣だったし、ウォルターにとっては双子の弟が打った剣だ。
実戦では使えないが、鑑賞用に修理してくれるとのこと。
「ちなみにな、新しい剣と鎧に関しては、うちの局長が開発に参加するそうだ」
「シグ・ナインの局長って、確かローザ・モーグさん?」
「そうだ。彼女は今でこそ局長をやってるが、天才鍛冶師でもあるんだ」
以前会った時は、確かに自分でも開発したいと言っていた。
続いてウォルターはレイを見る。
「レイよ、お前の剣と鎧も作るぞ」
「剣はこの虹の細剣で十分よ」
「ダメだ。廉価版をレイモデルとして売る。契約書にも書いてあっただろう」
「そうだったわね。分かったわ」
「レイモデルは売れるぞ! ガハハハハ」
確かにレイモデルは売れそうだ。
女性冒険者は欲しがるだろうし、噂によるとレイには熱狂的なファンがいるらしい。
「開発はアルのクエスト禁止期間中に行う。三ヶ月で作ってみせるからな」
「ありがとう!」
「期待しておけ! ガハハハハ」
ウォルターにお礼を伝え、俺たちはシグ・ナインを出た。
そして、数軒先にある人事機関へ向かう。
「こんにちは。討伐スコアの更新に来ました」
「わっ! アル・パート様!」
受付嬢に驚かれながらも、窓口でギルドカードの討伐スコアを更新。
◇◇◇
冒険者ランク A
<討伐スコア>
ネームド
ダーク・ゼム・イクリプス(槍豹獣)
ウォール・エレ・シャット(岩食竜)
Bランク
霧大蝮
大牙猛象
Cランク
腐食獣竜 十頭
◇◇◇
討伐スコアを眺めていると、レイが俺の肩に手を乗せてきた。
「討伐スコアにネームドが二種類って異常よ。私でも一種類なのに」
「ウォウウォウ」
「うっ、エルウッドまで」
これで一通りの手続きが終わった。
レイとエルウッドと街を歩く。
「それにしても、採掘へ行くって出かけて、なぜウォール・エレ・シャットを討伐してるのかしら。意味が分からないわ」
「ウォウウォウ」
「うっ、そ、それは本当にすみません」
「用事のついでにネームドを討伐するのは、世界でもあなただけよ」
「色々と自覚するようにします」
「そうね。あなたは己の実力をもっと知るべきよ。もう私を遥かに超えてるんだから」
「そんなことないよ!」
「あのねえ、自分で言うのもなんだけど、私だって最強と謳われたクロトエ騎士団の団長だったのよ? その私が冷静に分析した結果よ?」
「はい」
「分かればよろしい。ふふふ」
ウグマの重厚で美しい街を歩く、俺とレイとエルウッド。
「そういえば、アルとこうしてゆっくり街を歩くのって初めてね」
「あー、そうかもしれない。いつも馬で移動だし、クエスト中だったからね」
「たまにはいいわね」
「そうだね」
ゆっくりできることは嬉しいけど、俺はクエスト禁止期間中のことを考えていた。
「……ねえ、レイ」
「なあに?」
「三ヶ月も何しようか。レイはクエストできるでしょ?」
「そうね。私は禁止されてないけど、アルと一緒にいるわよ。ふふふ」
レイの言葉が嬉しい。
俺は冒険者として結果を焦ったり、レイに追いつきたいと急いでいたのかもしれない。
しばらくはクエストのことを忘れて、少し立ち止まってもいいだろう。
「レイ。リチャードさんが言っていたように、帝国を観光してもいいかな?」
「もちろんよ。たまにはゆっくりしましょう」
「じゃあさ、今日は家の皆で食事へ行こうよ!」
「いいわね」
「今日は俺がごちそうするよ! 馬車も予約して、皆でレストランへ行こう!」
「ふふふ、楽しそうね。行きましょう」
俺たちは高級商業地区のコンシェルジュへ行き、諸々の手配を依頼した。
そして急いで自宅へ戻る。
夜になり、執事のステム、メイドのエルザとマリン、庭師のミック、俺とレイとエルウッドの全員で、ウグマの高級レストランへ行った。
たまにはこうして皆で外食するのも悪くない。
「アル様、このような機会をいただき感謝いたします」
「とても美味しかったです。今度メニューを真似してみますね」
「アル様ー! 私はもう、どこまでもアル様についていきます!」
「こんなに高級なレストランは初めてでせえ。ありがとうございます」
皆に喜んでもらえたようだ。
とても楽しい夜になった。
「アル、今日はごちそうさま!」
「ウォウウォウ」
俺は自分一人だと何もできない。
家ことを全部やってくれるステム、エルザ、マリン、ミック。
装備を全て提供してくれる開発機関《シグ・ナイン》。
最大の評価をしてくれる冒険者ギルド。
そして、常に一緒にいてくれるエルウッドとレイ。
皆がいるから冒険者として活動できていることを実感した。
これからも感謝を忘れずに、自覚を持って冒険者として活動していこうと思う。
「アル。討伐スコアを更新する。後ほど人事機関へ行くがいい」
「分かりました」
「そして今後のことだが、アルはもう規格外すぎる。そこで、ギルドはアルに新しいランクの検討を開始した」
「新しいランク?」
「そうだ。Aランクより上はない、そこでSランクを新設する。決定にはもう少し時間がかかるがな。これは他言無用だぞ」
リチャードの発言にレイが反応した。
「そうですね。アルはもうAランクを超えてますもの」
「わっはっは、そう言うがね、レイ。君もSランク候補なのだよ」
「待ってくださいリチャードさん! 私は何もしてません!」
「君だってアルに負けないどころか、それ以上の実績を持っている。それに、アルとパートナーを組んでいけるのは君だけだ」
「最近の私は……何もできてません」
「そう言うな。アルだって師匠の君がいないと何もできまい。それに君は世界的に名が知れている。実績も知名度も申し分ない」
「ふうう、分かりましたわ。ギルドの決定に従います」
「そうしてくれ。もしSランクが決定しても浸透には時間がかかる。恐らくSランクの存在自体、当面は世間に伝わらないだろう。もしかしたらバカにされるかもしれん。そういう意味でも、人格者であるレイとアルが適任なのだよ」
「評価していただいてるのですね」
「もちろんだ。ただし、君たちの評価は人事機関のユリア・スノフ局長とギルマスが担当だがな。わっはっは」
「はああ、面倒事を全部押し付けてるわけですね」
「それも君たちの役目だ。わっはっは」
リチャードが笑いながら一度珈琲を口にする。
そして俺の顔を見た。
「さて、アルはしばらく休むといい。ダーク・ゼム・イクリプスの討伐から二週間後にウォール・エレ・シャットの討伐だ。これは尋常ではない」
「え? だ、大丈夫です!」
「ダメだ。三ヶ月はクエスト禁止だ。ギルドに周知するから支部を変えても無駄だぞ。直請けもダメだ。いいな」
「三ヶ月も?」
「莫大な金貨を稼いだだろう? 初めて来た帝国だ。ゆっくり観光でもどうだ。いい国だぞ。わっはっは」
話し終えると、リチャードとギルは部屋を出ていった。
部屋に残っているのは俺とレイとウォルターだ。
ウォルターが顎を撫でながら、俺の顔を見る。
「ネームドを討伐しすぎてクエスト禁止になる奴なんて初めて見たぞ! お前は本当に凄いな! ガハハハハ」
「悪いことしてないのにクエスト禁止って……」
「いい機会じゃないか。どうせ剣もないことだしな」
「そうだった。新しい剣をどうしよう」
ウォルターが珈琲をすする。
そして、意味深な笑顔を作った。
「アルの新しい剣だが、我々開発機関が作る。それもダーク・ゼム・イクリプスとウォール・エレ・シャットの素材でな」
「え! 本当に?」
「もちろんだ。お前はシグ・ナインとエンドース契約してるんだぞ?」
「そ、そうだけど、なんだか申し訳ないよ」
「気にするな。シグ・ナインにとってもメリットしかないんだからな。ガハハハハ」
「分かったよ。ありがとうウォルター」
「鎧に関してはすでに設計中だったが、改めて一から作り直す。ネームド二頭から作られた剣と鎧なんてこの世にないぞ!」
「話を聞くだけでも凄いよ」
「何を他人事のように言っている! 二頭ともお前が狩ったんだぞ! ガハハハハ」
相棒だった片刃の大剣が使えなくなるのは悲しいけど、新しい剣も鎧も楽しみだ。
さらにウォルターは、片刃の大剣を可能な限り修復すると言ってくれた。
元々歴史に残るほどの素晴らしい剣だったし、ウォルターにとっては双子の弟が打った剣だ。
実戦では使えないが、鑑賞用に修理してくれるとのこと。
「ちなみにな、新しい剣と鎧に関しては、うちの局長が開発に参加するそうだ」
「シグ・ナインの局長って、確かローザ・モーグさん?」
「そうだ。彼女は今でこそ局長をやってるが、天才鍛冶師でもあるんだ」
以前会った時は、確かに自分でも開発したいと言っていた。
続いてウォルターはレイを見る。
「レイよ、お前の剣と鎧も作るぞ」
「剣はこの虹の細剣で十分よ」
「ダメだ。廉価版をレイモデルとして売る。契約書にも書いてあっただろう」
「そうだったわね。分かったわ」
「レイモデルは売れるぞ! ガハハハハ」
確かにレイモデルは売れそうだ。
女性冒険者は欲しがるだろうし、噂によるとレイには熱狂的なファンがいるらしい。
「開発はアルのクエスト禁止期間中に行う。三ヶ月で作ってみせるからな」
「ありがとう!」
「期待しておけ! ガハハハハ」
ウォルターにお礼を伝え、俺たちはシグ・ナインを出た。
そして、数軒先にある人事機関へ向かう。
「こんにちは。討伐スコアの更新に来ました」
「わっ! アル・パート様!」
受付嬢に驚かれながらも、窓口でギルドカードの討伐スコアを更新。
◇◇◇
冒険者ランク A
<討伐スコア>
ネームド
ダーク・ゼム・イクリプス(槍豹獣)
ウォール・エレ・シャット(岩食竜)
Bランク
霧大蝮
大牙猛象
Cランク
腐食獣竜 十頭
◇◇◇
討伐スコアを眺めていると、レイが俺の肩に手を乗せてきた。
「討伐スコアにネームドが二種類って異常よ。私でも一種類なのに」
「ウォウウォウ」
「うっ、エルウッドまで」
これで一通りの手続きが終わった。
レイとエルウッドと街を歩く。
「それにしても、採掘へ行くって出かけて、なぜウォール・エレ・シャットを討伐してるのかしら。意味が分からないわ」
「ウォウウォウ」
「うっ、そ、それは本当にすみません」
「用事のついでにネームドを討伐するのは、世界でもあなただけよ」
「色々と自覚するようにします」
「そうね。あなたは己の実力をもっと知るべきよ。もう私を遥かに超えてるんだから」
「そんなことないよ!」
「あのねえ、自分で言うのもなんだけど、私だって最強と謳われたクロトエ騎士団の団長だったのよ? その私が冷静に分析した結果よ?」
「はい」
「分かればよろしい。ふふふ」
ウグマの重厚で美しい街を歩く、俺とレイとエルウッド。
「そういえば、アルとこうしてゆっくり街を歩くのって初めてね」
「あー、そうかもしれない。いつも馬で移動だし、クエスト中だったからね」
「たまにはいいわね」
「そうだね」
ゆっくりできることは嬉しいけど、俺はクエスト禁止期間中のことを考えていた。
「……ねえ、レイ」
「なあに?」
「三ヶ月も何しようか。レイはクエストできるでしょ?」
「そうね。私は禁止されてないけど、アルと一緒にいるわよ。ふふふ」
レイの言葉が嬉しい。
俺は冒険者として結果を焦ったり、レイに追いつきたいと急いでいたのかもしれない。
しばらくはクエストのことを忘れて、少し立ち止まってもいいだろう。
「レイ。リチャードさんが言っていたように、帝国を観光してもいいかな?」
「もちろんよ。たまにはゆっくりしましょう」
「じゃあさ、今日は家の皆で食事へ行こうよ!」
「いいわね」
「今日は俺がごちそうするよ! 馬車も予約して、皆でレストランへ行こう!」
「ふふふ、楽しそうね。行きましょう」
俺たちは高級商業地区のコンシェルジュへ行き、諸々の手配を依頼した。
そして急いで自宅へ戻る。
夜になり、執事のステム、メイドのエルザとマリン、庭師のミック、俺とレイとエルウッドの全員で、ウグマの高級レストランへ行った。
たまにはこうして皆で外食するのも悪くない。
「アル様、このような機会をいただき感謝いたします」
「とても美味しかったです。今度メニューを真似してみますね」
「アル様ー! 私はもう、どこまでもアル様についていきます!」
「こんなに高級なレストランは初めてでせえ。ありがとうございます」
皆に喜んでもらえたようだ。
とても楽しい夜になった。
「アル、今日はごちそうさま!」
「ウォウウォウ」
俺は自分一人だと何もできない。
家ことを全部やってくれるステム、エルザ、マリン、ミック。
装備を全て提供してくれる開発機関《シグ・ナイン》。
最大の評価をしてくれる冒険者ギルド。
そして、常に一緒にいてくれるエルウッドとレイ。
皆がいるから冒険者として活動できていることを実感した。
これからも感謝を忘れずに、自覚を持って冒険者として活動していこうと思う。
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