鉱夫剣を持つ 〜ツルハシ振ってたら人類最強の肉体を手に入れていた〜

犬斗

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第四章

第77話 冒険者カード更新

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 翌日の早朝、俺たちはギルドの女将に挨拶して、復興中のメドの街を出発。

 三日後、ウグマの自宅に到着した。
 護衛クエストに出てから、一ヶ月以上経っている。
 久しぶりの自宅だ。

 自宅の前まで来ると、使用人が総出で出迎えてくれた。
 代表して執事のステムが一礼する。

「レイ様、アル様、おかえりなさいませ。ダーク・ゼム・イクリプス討伐の話は伺っております。よくぞご無事で」
「ステムさん、無事に戻りました! エルザさんとマリンさんの食事を楽しみにしてましたよ。ミックさん、今回は馬を酷使したのでケアをお願いします」

 その日の夕食は、メイドのエルザとマリンが腕を奮ってくれた。
 翌日、しばらく家を空けていたので、執事のステムから不在時のことを教えてもらう。
 だが、特に問題はなかったようで安心した。

 今日一日は自宅で過ごすつもりだ。
 剣の手入れをしたいし、メイド二人の料理も味わいたい。
 ミックから馬の世話の仕方も教わりたかった。

 ――

 翌日、俺とレイはウグマのギルドへ向かった。

 冒険者ギルドのウグマ支部長、リチャード・ロートに今回の件を報告。
 さらにAランクになることも伝えた。
 護衛クエストから、まさかのネームド討伐だ。
 リチャードはとても驚いていた。

「結局、アルは討伐試験を一度も受けぬまま、Aランクになったということか」
「そういえばそうね。ギルドの長い歴史でも初めてのことでしょうね」
「こんなことは最初で最後だ。わっはっは」

 当初の目的であった護衛クエストの報酬、金貨十枚も受け取った。

 続いて人事機関《シグ・フォー》へ向かい、冒険者カードを更新。
 俺は新しく更新された冒険者カードを眺める。

 ◇◇◇

 冒険者ランク A

 <討伐スコア>

 ネームド
 ダーク・ゼム・イクリプス(槍豹獣サーべラル

 Bランク
 霧大蝮ネーベルバイパー
 大牙猛象エレモス

 Cランク
 腐食獣竜スカベラス 十頭

 ◇◇◇

「スコアは四種だけなのに、その内の一種がネームドって……」

 俺の冒険者カードを見たレイが呆れている。
 今回のダーク・ゼム・イクリプスの討伐スコア更新は俺だけだった。

「だって私は戦ってないもの。当然よ」
「レイもネームドの討伐スコアがあるんだよね?」
「そうね。一種のみだけどね」
「レイの討伐スコア見せてよ」
「ふふふ、今度ね」
「もう、またそれ!」

 俺たちは久しぶりに帰ってきたウグマ市街地を楽しむかのように歩き、開発機関シグ・ナインへ向かった。

「おう、来たか! アル、レイ!」
「ウォルター、こんにちは」

 シグ・ナインのウグマ支部長ウォルター・ワイヤと、新装備の打ち合わせだ。

「アルよ、ダーク・ゼム・イクリプスとの戦いでは、うちが提供した軽鎧ライトアーマーが壊されたってな」
「ああ、一撃で斬り裂かれたよ」
「すまなかったな。今はダーク・ゼム・イクリプスの素材を使って、アル専用の鎧を設計中だ」
「局長のローザさんから聞いたよ」
「ああ、局長から全てを任された。ひとまず鎧が完成するまでは、またこの軽鎧ライトアーマーを使ってくれ。すまんな」
「そんなことないよ。わざわざありがとう」
「で、新しい鎧には竜石と黒深石を使いたい。竜石の在庫はあるんだが、黒深石を切らしていてな。採ってきてもらえないか?」

 黒深石はレア五の希少鉱石で、硬度六と非常に硬い。

「黒深石か。いいけど、採掘できる鉱山はあるの?」
「ああ、ここから三十キデルトほど北上すると、シグ・ナイン保有の鉱山がある。そこで採れるはずだ」
「希少鉱石だから、絶対採れるとは言い切れないよね」
「まあな。実際、鉱山でもしばらく採れていないそうだ。しかし、お前は一流の鉱夫だって弟から聞いてるぞ。お前なら採れるだろ」
「頑張ってみるよ」

 ウォルターの弟は、俺の地元であるイーセ王国のラバウトで鍛冶師をやっているクリス・ワイア。
 イーセ王国でも指折りの鍛冶師で、俺の片刃の大剣ファラゴンを打った人物だ。

「アルよ、採掘許可証を出すから現地の人間に見せろ。鉱山の主任にも連絡しておく。ツルハシは現地で借りられるから安心しろ」
「分かったよ。運が良ければ三日、四日で帰って来られるかな」
「そうだな。ちなみに、あの山の希少鉱石は標高三千メデルト以上で出るぞ」
「ありがとう」

 ウォルターとの打ち合わせが終わり、俺たちはシグ・ナインを出た。
 自宅へ歩きながら、レイに今後の予定を伝える。

「レイ。俺は明日にでも鉱山へ行くよ」
「私も行く?」
「いや、採掘だけだし俺一人で行く」
「エルウッドは?」
「エルウッドもさ、たまにはゆっくりしてて」
「ウゥゥ! ウォウウォウ!」 
「ねえ、アル。エルウッドが怒ってるわよ?」
「えー、でもエルウッドはこの間怪我したし、レイとゆっくり休んでよ。三、四日で帰ってくるからさ」
「仕方ないわね。採掘はアルの本業だし、シグ・ナイン保有の鉱山だから安全よね。特に問題はないでしょう。エルウッド、私たちは留守番よ」
「クゥゥゥン」

 レイの説得でエルウッドも納得してくれたようだ。
 そのまま自宅へ帰り、採掘の準備をして就寝。

 翌日の早朝、レイとエルウッド、執事のステムが家の外まで見送りに出てきてくれた。

「アル、気をつけてね。まあ何かあっても、あなたなら平気だと思うけど」
「アハハ、ありがとう」

 馬の世話係のミックが、馬小屋から馬を連れて来た。

「アル様、馬の体調は万全でせえ。安心してくだせえ」
「ああ、ありがとうミック」

 そして全員に挨拶して出発。

「じゃあ、行ってきます!」

 鉱山までは三十キデルトだ。
 昼には到着するだろう。

 気持ちの良い朝日を浴びながら、俺は一人でウグマの街を出た。
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