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第四章
第76話 過去最高額の報酬
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しばらくすると、男女四名が部屋に入ってきた。
挨拶を交わす。
◇◇◇
人事機関局長、ユリア・スノフ。女性。四十八歳。
調査機関局長、リック・ライト。男性。五十二歳。
研究機関局長、ジョージ・ウォーター。男性。六十二歳。
開発機関局長、ローザ・モーグ。女性。三十五歳。
◇◇◇
冒険者ギルトの主要九機関の局長が四人も揃った。
「改めて人事機関局長、ユリア・スノフよ。局長が四人も揃うなんて異常事態ね。そうそうレイ、あなたはもう団長じゃないから、敬称も敬語も使わないわよ?」
「ええ、ユリア。もちろんよ」
「しかし、よくイーセ王国があなたを手放したわね?」
「まあ色々あったのよ」
「そうなのね。じゃあ、今日は終わったら食事へ行きましょう」
ユリア・スノフが俺の顔を見た。
身長はレイより高く、俺より少し低い。
女性としては高身長だろう。
スレンダーな体型で引き締まった細い腕に、スラっと伸びた長い足。
とても姿勢がよく、腰まで伸びた黒髪と相まって、さらにスマートに見える。
新月の夜空のような漆黒の瞳。
四十八歳とのことで顔にシワはあるが、年齢を感じさせない美しさだ。
柔らかな笑顔の奥に凄みを感じる。
「さて、あなたがアル・パートね」
「は、はい」
「ウフフフ、そんなに緊張しないで。むしろ私たちが緊張してるわよ」
「は、はい」
突然老人が立ち上がった。
「儂はしてないのじゃ!」
そう言ったのは研究機関局長、ジョージ・ウォーターだ。
しかし、ユリアが呆れたように両手を広げる。
「ジョージ、今は黙ってて。順を追って話さないとアルが混乱するでしょ?」
「むぐぐ、すまん」
続いて調査機関局長、リック・ライトが挙手をした。
身長は俺よりも高く、程よく引き締まった体格の男性だ。
白いシャツを着てメガネをかけており、落ち着いた佇まいはどことなく教師のような印象を受ける。
「まずは私から話そう。シグ・ファイブ局長、リック・ライトだ。アルよ、直請けクエストから始まったダーク・ゼム・イクリプスとの戦い、ご苦労だった」
「ありがとうございます」
「村の壊滅は残念だった。しかし、活動期に入ったダーク・ゼム・イクリプスであれば、この地方の都市は全て壊滅していてもおかしくなかった」
ダーク・ゼム・イクリプスは、帝国にとってまさに最大級の災害だった。
「奴の行動をトレースした結果、州都であるウグマまで襲撃予定だったようだ。今回も大勢の犠牲は出たが、過去の襲撃からすると、村四つにメドの街が三割の被害で済んだのは不幸中の幸いだろう」
「村は壊滅ですか……」
「ああ、そうだ。残念ながらアルが知っている村長は死亡していた。帝国によると襲撃された村は廃村することになった。生き残った村民たちは全員メドへ移住させ、全力でメドを復興させるそうだ」
リック・ライトは右手でメガネの位置を直し、俺の顔を見た。
「君によって百年もの間、帝国を恐怖に陥れたダーク・ゼム・イクリプスは討伐された。これはギルドの歴史資料にも記録される。帝国史にも残るだろう。本当にありがとう」
続いて研究機関局長、ジョージ・ウォーターが立ち上がった。
腰は少し曲がっているものの、足腰はしっかりしている。
白髪となった頭髪は少し後退。
長く立派な白い髭が特徴的な老人だ。
「我がシグ・セブンが貴重なダーク・ゼム・イクリプスをもらい受けるのじゃ。研究し尽くすぞ! アル、よくやったのじゃ!」
「おい、ジイさん! うちで武器や防具の素材として使うんだよ!」
興奮するジョージに、開発機関局長ローザ・モーグが横槍を入れた。
「ダメじゃ! ダーク・ゼム・イクリプスは百年間も帝国を恐怖に陥れたネームドじゃぞ! 研究するに決まってるじゃろ!」
「ふーん、じゃあいいわ。アルから直接買い取るから」
「き、汚いぞ! 貴様らはいつも金にものを言わせおってからに!」
「悔しかったら出してごらんよ? アル、シグ・ナインが金貨千枚出すよ」
「認めん! 認めんぞ! アル! シグ・セブンが買い取るぞ! 年間予算全部使うのじゃ!」
ユリアが手を叩き仲裁に入る。
「こらこら、ジョージ。ムキにならないの。ローザもやめなさい。本当にあなた達はすぐに喧嘩するわね。父娘ほど歳が離れてるというのに」
ユリアが溜め息をつくも、その表情は柔らかくレイの顔を一瞥した。
「この件はギルマスから指示を受けてるわ。まずはシグ・セブンの研究を優先。ただし、武器防具の素材として使える素材の半分はシグ・ナインが持っていってよい。そして研究が終わり次第、使える素材は全てシグ・ナインに渡すこと。なお、シグ・ナインはアルとレイのためにその素材を使うこと。以上よ」
その言葉を聞いたレイが、不満気な表情を浮かべている。
「ねえ、私はダーク・ゼム・イクリプスに一切の手を出してないわよ?」
「ギルマスの指示だもの。愛じゃない?」
「はああ? やめてよ」
レイにプロポーズしたというギルマスだが、一体どんな人物なのだろうか。
それにしても、レイがここまで嫌悪感を出すのも珍しい。
続いてユリアが俺の顔を見る。
大人の女性に慣れてない俺は、目が合うと緊張してしまう。
「さて、アルの討伐報酬だけど、素材の買取代含め金貨二千枚を支払う。これは古金貨で払い出すわ。撃退時の三百枚も合わせると金貨二千三百枚になるわね。これはギルドの報酬ランキングでも三位以内に入る金額よ。しかも一人が受け取る金額としては断トツで過去最高額ね。本当に凄いことだわ」
俺は報酬金額を聞いて固まってしまった。
「アル? 大丈夫?」
「あ、ああ、そんな金額、聞いたことないから……」
「ふふふ、それくらい凄いことをやったのよ、あなたは」
ジョージ・ウォーターと喧嘩をしていたローザ・モーグが右手を上げた。
「開発機関局長、ローザ・モーグだ」
この四人の中で一際若く見える。
三十五歳ということだが、この年齢でギルド主要機関のトップたる局長になるのだから、よほど優秀なのだろう。
口調とは真逆で、童顔で可愛らしい女性だ。
年齢を聞かれたら、俺は迷わず自分と同世代と答えてしまう。
身長は小柄で、レイよりも小さい。
薄い緑色のショートヘアは少し癖がかっている。
瞳の色は驚くほど美しい金糸雀色だが、それを隠すかのように大きめのメガネを掛けていた。
「アルとレイはすでに我々とエンドース契約をしてるからな。当然ダーク・ゼム・イクリプスの素材を使った新装備を開発して提供する」
「ありがとうございます」
「私も開発に参加したいが、お前たちはウグマで活動するんだってな。仕方がないから、ウグマの開発支部長ウォルター・ワイヤに全て任せることにした」
そして、ローザはジョージに顔を向ける。
「ジイさん、研究期間はどれくらいかかる?」
「そうじゃの、一ヶ月はかかるじゃろ」
「長いな。なるべく早くしてくれ。アル、本格的な開発は一ヶ月後からだ。しかし、使える素材で開発はとっとと進める。シグ・ナインには頻繁に顔を出してくれ」
「分かりました」
そして、人事機関のユリア・スノフが挙手をした。
「さて、最後にシグ・フォーよ。今回の討伐でアルはAランクとする。もうあなたをBランクにしておくことはできない。ギルマスの許可も得てるわ」
「Aランクですか!?」
「そうよ。たった一人でネームドを討伐する人間がBランクって、どう考えてもおかしいでしょ? というかね、あなた異常よ? 討伐スコアってまだ、片手で数えられるでしょ?」
ユリアの口調や雰囲気は、レイに似ている。
「これがAランクの認定書よ。これを持ってウグマのギルドへ行きなさい。討伐スコアも含めて冒険者カードを更新するわ」
「分かりました。ありがとうございます」
「あなた、礼儀正しいわね。そこの美人さんとは大違いだわ」
レイが声を荒げる。
「ちょっと! ユリア! 聞き捨てならないわよ!」
「フフフフ、レイ。夜のお酒が楽しみね」
ユリア・スノフが大きく手を叩く。
終わりの宣言だろう。
「さて、話は以上よ。アル、ギルドはあなたに期待しているわ。落ち着いたら帝都へ遊びに来て頂戴。ギルマスも会いたがっていたわよ」
「わ、分かりました」
俺とレイは一礼して部屋を出た。
「緊張したあ」
「ふふふ、あの人達はギルドのトップ中のトップだもの。ユリアなんて全冒険者の成績を管理してるから、最も恐れられてるのよ」
「そ、そんな凄い人なんだ」
「そうよ。アルも一緒に食事へ行く?」
「い、いや、やめておくよ」
レイは今夜、ユリア・スノフと食事に行く。
だが、俺はエルウッドと宿で留守番することにした。
二人の間で食事して酒を飲む自信がない。
――
その夜、俺は宿でエルウッドと過ごしていた。
「なあ、エルウッド。ダーク・ゼム・イクリプスとの戦いは確かに助かったけど、もう二度とあんなことしないでくれよ」
「ウォウウォウ」
「ダメだ! エルウッドにもしものことがあったら、俺の家族はいなくなっちゃうんだよ?」
「クゥゥゥン」
「だからさ、今後は戦いが始まったら逃げてくれよ。今度は絶対守るからさ」
「ウォウウォウ」
エルウッドが首を横に振る。
「だからダメだって!」
俺よりエルウッドの方が遥かに年上だ。
エルウッドこそ、俺を守るという顔をしている。
「ウォウウォウ!」
「アハハ。そうだった。エルウッドのほうが年上だ」
久々に落ち着いてエルウッドと会話をしたような気がする。
この後もエルウッドとのんびり過ごし、夜は更けていった。
挨拶を交わす。
◇◇◇
人事機関局長、ユリア・スノフ。女性。四十八歳。
調査機関局長、リック・ライト。男性。五十二歳。
研究機関局長、ジョージ・ウォーター。男性。六十二歳。
開発機関局長、ローザ・モーグ。女性。三十五歳。
◇◇◇
冒険者ギルトの主要九機関の局長が四人も揃った。
「改めて人事機関局長、ユリア・スノフよ。局長が四人も揃うなんて異常事態ね。そうそうレイ、あなたはもう団長じゃないから、敬称も敬語も使わないわよ?」
「ええ、ユリア。もちろんよ」
「しかし、よくイーセ王国があなたを手放したわね?」
「まあ色々あったのよ」
「そうなのね。じゃあ、今日は終わったら食事へ行きましょう」
ユリア・スノフが俺の顔を見た。
身長はレイより高く、俺より少し低い。
女性としては高身長だろう。
スレンダーな体型で引き締まった細い腕に、スラっと伸びた長い足。
とても姿勢がよく、腰まで伸びた黒髪と相まって、さらにスマートに見える。
新月の夜空のような漆黒の瞳。
四十八歳とのことで顔にシワはあるが、年齢を感じさせない美しさだ。
柔らかな笑顔の奥に凄みを感じる。
「さて、あなたがアル・パートね」
「は、はい」
「ウフフフ、そんなに緊張しないで。むしろ私たちが緊張してるわよ」
「は、はい」
突然老人が立ち上がった。
「儂はしてないのじゃ!」
そう言ったのは研究機関局長、ジョージ・ウォーターだ。
しかし、ユリアが呆れたように両手を広げる。
「ジョージ、今は黙ってて。順を追って話さないとアルが混乱するでしょ?」
「むぐぐ、すまん」
続いて調査機関局長、リック・ライトが挙手をした。
身長は俺よりも高く、程よく引き締まった体格の男性だ。
白いシャツを着てメガネをかけており、落ち着いた佇まいはどことなく教師のような印象を受ける。
「まずは私から話そう。シグ・ファイブ局長、リック・ライトだ。アルよ、直請けクエストから始まったダーク・ゼム・イクリプスとの戦い、ご苦労だった」
「ありがとうございます」
「村の壊滅は残念だった。しかし、活動期に入ったダーク・ゼム・イクリプスであれば、この地方の都市は全て壊滅していてもおかしくなかった」
ダーク・ゼム・イクリプスは、帝国にとってまさに最大級の災害だった。
「奴の行動をトレースした結果、州都であるウグマまで襲撃予定だったようだ。今回も大勢の犠牲は出たが、過去の襲撃からすると、村四つにメドの街が三割の被害で済んだのは不幸中の幸いだろう」
「村は壊滅ですか……」
「ああ、そうだ。残念ながらアルが知っている村長は死亡していた。帝国によると襲撃された村は廃村することになった。生き残った村民たちは全員メドへ移住させ、全力でメドを復興させるそうだ」
リック・ライトは右手でメガネの位置を直し、俺の顔を見た。
「君によって百年もの間、帝国を恐怖に陥れたダーク・ゼム・イクリプスは討伐された。これはギルドの歴史資料にも記録される。帝国史にも残るだろう。本当にありがとう」
続いて研究機関局長、ジョージ・ウォーターが立ち上がった。
腰は少し曲がっているものの、足腰はしっかりしている。
白髪となった頭髪は少し後退。
長く立派な白い髭が特徴的な老人だ。
「我がシグ・セブンが貴重なダーク・ゼム・イクリプスをもらい受けるのじゃ。研究し尽くすぞ! アル、よくやったのじゃ!」
「おい、ジイさん! うちで武器や防具の素材として使うんだよ!」
興奮するジョージに、開発機関局長ローザ・モーグが横槍を入れた。
「ダメじゃ! ダーク・ゼム・イクリプスは百年間も帝国を恐怖に陥れたネームドじゃぞ! 研究するに決まってるじゃろ!」
「ふーん、じゃあいいわ。アルから直接買い取るから」
「き、汚いぞ! 貴様らはいつも金にものを言わせおってからに!」
「悔しかったら出してごらんよ? アル、シグ・ナインが金貨千枚出すよ」
「認めん! 認めんぞ! アル! シグ・セブンが買い取るぞ! 年間予算全部使うのじゃ!」
ユリアが手を叩き仲裁に入る。
「こらこら、ジョージ。ムキにならないの。ローザもやめなさい。本当にあなた達はすぐに喧嘩するわね。父娘ほど歳が離れてるというのに」
ユリアが溜め息をつくも、その表情は柔らかくレイの顔を一瞥した。
「この件はギルマスから指示を受けてるわ。まずはシグ・セブンの研究を優先。ただし、武器防具の素材として使える素材の半分はシグ・ナインが持っていってよい。そして研究が終わり次第、使える素材は全てシグ・ナインに渡すこと。なお、シグ・ナインはアルとレイのためにその素材を使うこと。以上よ」
その言葉を聞いたレイが、不満気な表情を浮かべている。
「ねえ、私はダーク・ゼム・イクリプスに一切の手を出してないわよ?」
「ギルマスの指示だもの。愛じゃない?」
「はああ? やめてよ」
レイにプロポーズしたというギルマスだが、一体どんな人物なのだろうか。
それにしても、レイがここまで嫌悪感を出すのも珍しい。
続いてユリアが俺の顔を見る。
大人の女性に慣れてない俺は、目が合うと緊張してしまう。
「さて、アルの討伐報酬だけど、素材の買取代含め金貨二千枚を支払う。これは古金貨で払い出すわ。撃退時の三百枚も合わせると金貨二千三百枚になるわね。これはギルドの報酬ランキングでも三位以内に入る金額よ。しかも一人が受け取る金額としては断トツで過去最高額ね。本当に凄いことだわ」
俺は報酬金額を聞いて固まってしまった。
「アル? 大丈夫?」
「あ、ああ、そんな金額、聞いたことないから……」
「ふふふ、それくらい凄いことをやったのよ、あなたは」
ジョージ・ウォーターと喧嘩をしていたローザ・モーグが右手を上げた。
「開発機関局長、ローザ・モーグだ」
この四人の中で一際若く見える。
三十五歳ということだが、この年齢でギルド主要機関のトップたる局長になるのだから、よほど優秀なのだろう。
口調とは真逆で、童顔で可愛らしい女性だ。
年齢を聞かれたら、俺は迷わず自分と同世代と答えてしまう。
身長は小柄で、レイよりも小さい。
薄い緑色のショートヘアは少し癖がかっている。
瞳の色は驚くほど美しい金糸雀色だが、それを隠すかのように大きめのメガネを掛けていた。
「アルとレイはすでに我々とエンドース契約をしてるからな。当然ダーク・ゼム・イクリプスの素材を使った新装備を開発して提供する」
「ありがとうございます」
「私も開発に参加したいが、お前たちはウグマで活動するんだってな。仕方がないから、ウグマの開発支部長ウォルター・ワイヤに全て任せることにした」
そして、ローザはジョージに顔を向ける。
「ジイさん、研究期間はどれくらいかかる?」
「そうじゃの、一ヶ月はかかるじゃろ」
「長いな。なるべく早くしてくれ。アル、本格的な開発は一ヶ月後からだ。しかし、使える素材で開発はとっとと進める。シグ・ナインには頻繁に顔を出してくれ」
「分かりました」
そして、人事機関のユリア・スノフが挙手をした。
「さて、最後にシグ・フォーよ。今回の討伐でアルはAランクとする。もうあなたをBランクにしておくことはできない。ギルマスの許可も得てるわ」
「Aランクですか!?」
「そうよ。たった一人でネームドを討伐する人間がBランクって、どう考えてもおかしいでしょ? というかね、あなた異常よ? 討伐スコアってまだ、片手で数えられるでしょ?」
ユリアの口調や雰囲気は、レイに似ている。
「これがAランクの認定書よ。これを持ってウグマのギルドへ行きなさい。討伐スコアも含めて冒険者カードを更新するわ」
「分かりました。ありがとうございます」
「あなた、礼儀正しいわね。そこの美人さんとは大違いだわ」
レイが声を荒げる。
「ちょっと! ユリア! 聞き捨てならないわよ!」
「フフフフ、レイ。夜のお酒が楽しみね」
ユリア・スノフが大きく手を叩く。
終わりの宣言だろう。
「さて、話は以上よ。アル、ギルドはあなたに期待しているわ。落ち着いたら帝都へ遊びに来て頂戴。ギルマスも会いたがっていたわよ」
「わ、分かりました」
俺とレイは一礼して部屋を出た。
「緊張したあ」
「ふふふ、あの人達はギルドのトップ中のトップだもの。ユリアなんて全冒険者の成績を管理してるから、最も恐れられてるのよ」
「そ、そんな凄い人なんだ」
「そうよ。アルも一緒に食事へ行く?」
「い、いや、やめておくよ」
レイは今夜、ユリア・スノフと食事に行く。
だが、俺はエルウッドと宿で留守番することにした。
二人の間で食事して酒を飲む自信がない。
――
その夜、俺は宿でエルウッドと過ごしていた。
「なあ、エルウッド。ダーク・ゼム・イクリプスとの戦いは確かに助かったけど、もう二度とあんなことしないでくれよ」
「ウォウウォウ」
「ダメだ! エルウッドにもしものことがあったら、俺の家族はいなくなっちゃうんだよ?」
「クゥゥゥン」
「だからさ、今後は戦いが始まったら逃げてくれよ。今度は絶対守るからさ」
「ウォウウォウ」
エルウッドが首を横に振る。
「だからダメだって!」
俺よりエルウッドの方が遥かに年上だ。
エルウッドこそ、俺を守るという顔をしている。
「ウォウウォウ!」
「アハハ。そうだった。エルウッドのほうが年上だ」
久々に落ち着いてエルウッドと会話をしたような気がする。
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