69 / 394
第四章
第68話 撃退の報酬
しおりを挟む
診察室に入り、医師に傷を見せた。
「こ、これは何ということだ!」
「え? ど、どうしたんですか?」
医師の言葉に不安を覚える。
「す、すまない。あまりに驚いてしまったよ。君は傷の治りが異常なほど早い」
「そ、そうなんですか?」
「ああ、こんなことは初めてだ」
医師の驚きは悪い方ではなかった。
俺は胸をなでおろす。
「これなら明日には抜糸できそうだ。今日一日安静にするように」
「まだ移動はできませんか?」
「通常なら二週間以上は絶対安静で、下手すれば腕が使えなくなるくらいの大怪我なんだよ?」
「す、すみません」
「強靭な肉体とはいえ焦ってはダメだ。君はこれから素晴らしい活躍をする冒険者になるのだから、無理しないように」
「はい。ありがとうございます」
そして看護師が薬を塗り、薬草と包帯を巻いてくれた。
「本当に凄いですね。高ランクの冒険者になると異常な治癒能力な人はいますが、これほどまでに早い人は初めてですよ」
「ははは、頑丈だけが取り柄なので」
「何言ってるんですか。アルさんは見た目だってかっこいいですよ」
「え? え? そ、そんなこと言われたの、は、初めてです」
「えー、そうなんですか? 絶対モテますよ」
「い、いや」
「フフ、私だってもうファンですから」
「あ、あの……ありがとうございます」
一通りの処置を終えた。
熱は下がったはずなのに顔が少し熱い。
待合室でレイと合流。
「どうだった?」
「えーと、明日抜糸できるって。だから今日まで安静だって」
「あら、治りが早いわね」
「うん」
「ん? どうしたの? 顔赤いわよ?」
「え? い、いや、なんでもないよ」
「ふふふ、変なアル」
――
昨日に引き続き、ギルドの宿泊施設で一泊することになった。
施設で連泊の手続きをして部屋へ戻る。
「実家を出てから、こんなにゆったりしているのは初めてだね」
「ええ。ずっと移動していたし、ここ最近はクエストだってしたもの」
「引退したら、こんな感じになるのかなあ」
「ふふふ、そうね。引退したらこうして二人でゆっくりしましょうか」
「ウォン!」
「もちろんエルウッドも一緒にね」
レイがエルウッドの頭を撫でている。
「そうだ、レイ!」
「どうしたの?」
「装備品を整えたいんだ。防具を新調したい」
「そうだったわね。あなたの軽鎧はダーク・ゼム・イクリプスに壊されたものね」
「ああ、防具の重要性が分かったよ」
「そうね。いくら強靭な肉体でも、防具なしでは戦えないもの」
レイの話によると、目的のウグマにはギルドの主要九機関が全て揃っている。
当然、開発機関もある。
防具屋で買うより、冒険者専用の防具を開発しているシグ・ナインで購入した方がいいそうだ。
とはいえ、ウグマへ移動する際に鎧がないのは危険だ。
取り急ぎ、メドの街で鎧を購入することにした。
この日は、医師の言いつけを守り一日部屋で安静に過ごす。
翌日、医療機関で抜糸。
「信じられん。これなら乗馬も大丈夫だ」
「お世話になりました」
医師は俺の治癒力に驚いていた。
続いて、街の防具屋へ向かう。
ウグマで本格的な鎧を購入する予定なので、繋ぎの鎧として比較的安価な革鎧を購入。
それでも金貨三枚した。
冒険者は金がかかることを実感。
なお、ダーク・ゼム・イクリプスに傷付けられた鎧は下取りに出せなかったため、ウグマへ持って行くことにした。
最後に俺たちは、ギルドで女将に挨拶。
「レイちゃん、気をつけて」
「女将、お世話になったわね。ありがとう」
女将はレイと女将が抱き合った後、俺の顔を見る。
「アル、アンタは絶対に凄い冒険者になるよ。レイちゃんのこと、よろしく頼むさ」
「アハハ、レイは俺の師匠だよ? でも分かったよ。女将、色々とありがとう」
俺は女将と握手した。
メドの街を出て、目的地のウグマへ向かう。
道中はモンスターや犯罪者に遭遇することなく、三日間の移動で無事ウグマに到着。
ウグマはこのウグマ州の州都で、帝国でも有数の大都市だ。
その歴史は古く、石造りの建造物が多い。
素材は建物用石材の代表格、灰硬石だ。
安価で硬度も高く、建築用石材に欠かせない。
また純白の白理石の建物も散見される。
白理石は建築物に使用する岩石の中では、非常に高価だ。
建物の柱などには繊細な彫刻がされており、見るだけでも楽しめる。
街道は美しい石畳。
数区画に一つにある広場には噴水があり、住民の憩いの場になっているようだ。
俺は街並みに目を奪われていた。
「アルの気持ちは分かるわ。ここは本当に美しい街だもの。私も凄く好きな街よ」
「イーセ王国とは全然違うね。王国は木造建築が多いから」
「ええそうね。確かに帝国は石造りの建物が多いわね。戦争も多かったし、王国とは歴史が違うもの。帝都サンドムーンはもっと凄いわよ」
「へえ。行ってみたいなあ」
冒険者ギルドの総本部があるという帝都サンドムーン。
冒険者になったからには、いつか行ってみたいと思う。
「でも、レイは行くの嫌なんでしょ?」
「嫌じゃないのだけど……。その……。ギルドマスターに会いたくないの……」
「ギルマス?」
「だって、あいつ変態なのよ」
「え? どういうこと?」
「私がまだ十四歳の頃に、突然……プ、プロポーズしてきたの……」
「プロポーズ!」
「それ以来、会うたび会うたびプロポーズしてくるの」
「そ、そうなんだ」
レイの顔に最大級の嫌悪感が見える。
「ただ、サンドムーンはギルドの総本部だし、主要機関の本部が全て揃ってるのよ。冒険者なら一度は行かなきゃね」
「ああ、いつか行ってみよう」
ウグマの市街地に入り、まずは医療機関《シグ・シックス》へ向かう。
俺のことはすでに伝わっていたようだ。
傷を見せると完治と診断。
医師は回復の早さに驚いていた。
そして、近くにある冒険者ギルドへ行くと、支部長室に案内された。
「冒険者ギルド、ウグマ支部長のリチャード・ロートだ」
「アル・パートです」
「レイ・ステラーです。お久しぶりです」
支部長のリチャード・ロートは六十歳くらいだろうか。
身長は俺と変わらず、年齢の割に引き締まった身体をしている。
白髪の短髪、顎には白い髭を生やして、威厳のある風貌だ。
レイとは面識がある模様。
「君たちの報告はオリガ、ああ、女将から連絡を受けている。レイ、君の復活も聞いたぞ」
「ありがとうございます」
「ギルドとしては喜ばしいことだ。それに、ギルマスが喜んでいるだろう」
「困ったものです」
「すまないな、我慢してくれ。私からも注意はする」
「ええ、助かりますわ。リチャードさん」
リチャードが俺の顔を見た。
「さて、アルよ。ダーク・ゼム・イクリプスの撃退だが、まず礼を言う。ありがとう」
「いえ、そんな」
「帝国は百年も前から、ダーク・ゼム・イクリプスの被害にあっていた。一度も撃退すらしたことがなかったのだ」
「百年間ずっとですか?」
「正確には活動期に入って殺戮を繰り返し消えていく。これを数年単位で繰り返すのだ。前回の出現は八年前だった」
百年間も帝国を恐怖に陥れているとは、本当に恐ろしいネームドだ。
「現在、ダーク・ゼム・イクリプスの行方は調査機関が調査している。ひとまず君の撃退について報酬を支払おう」
「え? クエストのあとに偶然遭遇しただけなので不要です」
「おいおい、冒険者が金を受け取らないのはあり得ないぞ。お人好しすぎてはダメだ」
「わ、分かりました。ありがとうございます」
「ダーク・ゼム・イクリプスの撃退は前例がない。そこで、ギルマスと直々に連絡を取った」
反応したのはレイだった。
「え? ギルマスと直接!」
「ああ、あまりに非常識だからな。研究機関の局長も歓喜しておったぞ。ダーク・ゼム・イクリプスの素材なら金なんていくらでも出すとな。わっはっは」
リチャードは改めて俺の顔を見た。
「アルよ。ダーク・ゼム・イクリプスの耳をギルドで買い取ろう。撃退の報奨金と合わせて、金貨三百枚出す」
「さ、さ、三百枚!」
俺は思わず大声を出してしまった。
「驚くのも無理はないか。まだBランクだし、クエストの数も直請け入れてたったの二回だからな」
俺はリチャードにダーク・ゼム・イクリプスの耳を渡した。
「これがダーク・ゼム・イクリプスの耳か。素晴らしい。うむ、防腐加工もしっかりしてるな。大鋭爪鷹で送るから、今日中には帝都へ着くだろう」
リチャードから金貨三百枚を渡された。
「それで、君たちはこれからどうするのだ?」
「リチャードさん。私たちはしばらくの間ウグマで活動します」
「そうか! それはありがたい。君たちにやってもらいたい高難度クエストはたくさんあるからな」
「ふふふ、お任せください」
「それでは君たちに、長期滞在用の家を貸し出そう。家賃はそうだな、一ヶ月金貨六枚でどうだ? レイも知ってるあの家だ。格安だぞ」
「え? あの家を?」
「もちろんだ。君たちには世話になるから、快適に暮らしてもらいたい。係の者に連絡しておくが、準備もあるだろう。日没頃に行ってみてくれ」
「ご配慮に感謝します」
一通りの報告や手続きが終わり、俺たちは冒険者ギルドを出た。
家を貸してもらえることになったが、俺はレイに疑問をぶつける。
「ねえ、レイ」
「なあに?」
「一ヶ月の家賃が金貨六枚って高すぎると思うんだけど……」
「ふふふ、そんなことないわよ。家を見れば分かるわ」
「へえ、見るのが楽しみだな」
レイが納得しているのであれば俺も異論はない。
日没まではまだ時間があるので、俺たちは防具のことを相談するため開発機関へ向かった。
「こ、これは何ということだ!」
「え? ど、どうしたんですか?」
医師の言葉に不安を覚える。
「す、すまない。あまりに驚いてしまったよ。君は傷の治りが異常なほど早い」
「そ、そうなんですか?」
「ああ、こんなことは初めてだ」
医師の驚きは悪い方ではなかった。
俺は胸をなでおろす。
「これなら明日には抜糸できそうだ。今日一日安静にするように」
「まだ移動はできませんか?」
「通常なら二週間以上は絶対安静で、下手すれば腕が使えなくなるくらいの大怪我なんだよ?」
「す、すみません」
「強靭な肉体とはいえ焦ってはダメだ。君はこれから素晴らしい活躍をする冒険者になるのだから、無理しないように」
「はい。ありがとうございます」
そして看護師が薬を塗り、薬草と包帯を巻いてくれた。
「本当に凄いですね。高ランクの冒険者になると異常な治癒能力な人はいますが、これほどまでに早い人は初めてですよ」
「ははは、頑丈だけが取り柄なので」
「何言ってるんですか。アルさんは見た目だってかっこいいですよ」
「え? え? そ、そんなこと言われたの、は、初めてです」
「えー、そうなんですか? 絶対モテますよ」
「い、いや」
「フフ、私だってもうファンですから」
「あ、あの……ありがとうございます」
一通りの処置を終えた。
熱は下がったはずなのに顔が少し熱い。
待合室でレイと合流。
「どうだった?」
「えーと、明日抜糸できるって。だから今日まで安静だって」
「あら、治りが早いわね」
「うん」
「ん? どうしたの? 顔赤いわよ?」
「え? い、いや、なんでもないよ」
「ふふふ、変なアル」
――
昨日に引き続き、ギルドの宿泊施設で一泊することになった。
施設で連泊の手続きをして部屋へ戻る。
「実家を出てから、こんなにゆったりしているのは初めてだね」
「ええ。ずっと移動していたし、ここ最近はクエストだってしたもの」
「引退したら、こんな感じになるのかなあ」
「ふふふ、そうね。引退したらこうして二人でゆっくりしましょうか」
「ウォン!」
「もちろんエルウッドも一緒にね」
レイがエルウッドの頭を撫でている。
「そうだ、レイ!」
「どうしたの?」
「装備品を整えたいんだ。防具を新調したい」
「そうだったわね。あなたの軽鎧はダーク・ゼム・イクリプスに壊されたものね」
「ああ、防具の重要性が分かったよ」
「そうね。いくら強靭な肉体でも、防具なしでは戦えないもの」
レイの話によると、目的のウグマにはギルドの主要九機関が全て揃っている。
当然、開発機関もある。
防具屋で買うより、冒険者専用の防具を開発しているシグ・ナインで購入した方がいいそうだ。
とはいえ、ウグマへ移動する際に鎧がないのは危険だ。
取り急ぎ、メドの街で鎧を購入することにした。
この日は、医師の言いつけを守り一日部屋で安静に過ごす。
翌日、医療機関で抜糸。
「信じられん。これなら乗馬も大丈夫だ」
「お世話になりました」
医師は俺の治癒力に驚いていた。
続いて、街の防具屋へ向かう。
ウグマで本格的な鎧を購入する予定なので、繋ぎの鎧として比較的安価な革鎧を購入。
それでも金貨三枚した。
冒険者は金がかかることを実感。
なお、ダーク・ゼム・イクリプスに傷付けられた鎧は下取りに出せなかったため、ウグマへ持って行くことにした。
最後に俺たちは、ギルドで女将に挨拶。
「レイちゃん、気をつけて」
「女将、お世話になったわね。ありがとう」
女将はレイと女将が抱き合った後、俺の顔を見る。
「アル、アンタは絶対に凄い冒険者になるよ。レイちゃんのこと、よろしく頼むさ」
「アハハ、レイは俺の師匠だよ? でも分かったよ。女将、色々とありがとう」
俺は女将と握手した。
メドの街を出て、目的地のウグマへ向かう。
道中はモンスターや犯罪者に遭遇することなく、三日間の移動で無事ウグマに到着。
ウグマはこのウグマ州の州都で、帝国でも有数の大都市だ。
その歴史は古く、石造りの建造物が多い。
素材は建物用石材の代表格、灰硬石だ。
安価で硬度も高く、建築用石材に欠かせない。
また純白の白理石の建物も散見される。
白理石は建築物に使用する岩石の中では、非常に高価だ。
建物の柱などには繊細な彫刻がされており、見るだけでも楽しめる。
街道は美しい石畳。
数区画に一つにある広場には噴水があり、住民の憩いの場になっているようだ。
俺は街並みに目を奪われていた。
「アルの気持ちは分かるわ。ここは本当に美しい街だもの。私も凄く好きな街よ」
「イーセ王国とは全然違うね。王国は木造建築が多いから」
「ええそうね。確かに帝国は石造りの建物が多いわね。戦争も多かったし、王国とは歴史が違うもの。帝都サンドムーンはもっと凄いわよ」
「へえ。行ってみたいなあ」
冒険者ギルドの総本部があるという帝都サンドムーン。
冒険者になったからには、いつか行ってみたいと思う。
「でも、レイは行くの嫌なんでしょ?」
「嫌じゃないのだけど……。その……。ギルドマスターに会いたくないの……」
「ギルマス?」
「だって、あいつ変態なのよ」
「え? どういうこと?」
「私がまだ十四歳の頃に、突然……プ、プロポーズしてきたの……」
「プロポーズ!」
「それ以来、会うたび会うたびプロポーズしてくるの」
「そ、そうなんだ」
レイの顔に最大級の嫌悪感が見える。
「ただ、サンドムーンはギルドの総本部だし、主要機関の本部が全て揃ってるのよ。冒険者なら一度は行かなきゃね」
「ああ、いつか行ってみよう」
ウグマの市街地に入り、まずは医療機関《シグ・シックス》へ向かう。
俺のことはすでに伝わっていたようだ。
傷を見せると完治と診断。
医師は回復の早さに驚いていた。
そして、近くにある冒険者ギルドへ行くと、支部長室に案内された。
「冒険者ギルド、ウグマ支部長のリチャード・ロートだ」
「アル・パートです」
「レイ・ステラーです。お久しぶりです」
支部長のリチャード・ロートは六十歳くらいだろうか。
身長は俺と変わらず、年齢の割に引き締まった身体をしている。
白髪の短髪、顎には白い髭を生やして、威厳のある風貌だ。
レイとは面識がある模様。
「君たちの報告はオリガ、ああ、女将から連絡を受けている。レイ、君の復活も聞いたぞ」
「ありがとうございます」
「ギルドとしては喜ばしいことだ。それに、ギルマスが喜んでいるだろう」
「困ったものです」
「すまないな、我慢してくれ。私からも注意はする」
「ええ、助かりますわ。リチャードさん」
リチャードが俺の顔を見た。
「さて、アルよ。ダーク・ゼム・イクリプスの撃退だが、まず礼を言う。ありがとう」
「いえ、そんな」
「帝国は百年も前から、ダーク・ゼム・イクリプスの被害にあっていた。一度も撃退すらしたことがなかったのだ」
「百年間ずっとですか?」
「正確には活動期に入って殺戮を繰り返し消えていく。これを数年単位で繰り返すのだ。前回の出現は八年前だった」
百年間も帝国を恐怖に陥れているとは、本当に恐ろしいネームドだ。
「現在、ダーク・ゼム・イクリプスの行方は調査機関が調査している。ひとまず君の撃退について報酬を支払おう」
「え? クエストのあとに偶然遭遇しただけなので不要です」
「おいおい、冒険者が金を受け取らないのはあり得ないぞ。お人好しすぎてはダメだ」
「わ、分かりました。ありがとうございます」
「ダーク・ゼム・イクリプスの撃退は前例がない。そこで、ギルマスと直々に連絡を取った」
反応したのはレイだった。
「え? ギルマスと直接!」
「ああ、あまりに非常識だからな。研究機関の局長も歓喜しておったぞ。ダーク・ゼム・イクリプスの素材なら金なんていくらでも出すとな。わっはっは」
リチャードは改めて俺の顔を見た。
「アルよ。ダーク・ゼム・イクリプスの耳をギルドで買い取ろう。撃退の報奨金と合わせて、金貨三百枚出す」
「さ、さ、三百枚!」
俺は思わず大声を出してしまった。
「驚くのも無理はないか。まだBランクだし、クエストの数も直請け入れてたったの二回だからな」
俺はリチャードにダーク・ゼム・イクリプスの耳を渡した。
「これがダーク・ゼム・イクリプスの耳か。素晴らしい。うむ、防腐加工もしっかりしてるな。大鋭爪鷹で送るから、今日中には帝都へ着くだろう」
リチャードから金貨三百枚を渡された。
「それで、君たちはこれからどうするのだ?」
「リチャードさん。私たちはしばらくの間ウグマで活動します」
「そうか! それはありがたい。君たちにやってもらいたい高難度クエストはたくさんあるからな」
「ふふふ、お任せください」
「それでは君たちに、長期滞在用の家を貸し出そう。家賃はそうだな、一ヶ月金貨六枚でどうだ? レイも知ってるあの家だ。格安だぞ」
「え? あの家を?」
「もちろんだ。君たちには世話になるから、快適に暮らしてもらいたい。係の者に連絡しておくが、準備もあるだろう。日没頃に行ってみてくれ」
「ご配慮に感謝します」
一通りの報告や手続きが終わり、俺たちは冒険者ギルドを出た。
家を貸してもらえることになったが、俺はレイに疑問をぶつける。
「ねえ、レイ」
「なあに?」
「一ヶ月の家賃が金貨六枚って高すぎると思うんだけど……」
「ふふふ、そんなことないわよ。家を見れば分かるわ」
「へえ、見るのが楽しみだな」
レイが納得しているのであれば俺も異論はない。
日没まではまだ時間があるので、俺たちは防具のことを相談するため開発機関へ向かった。
18
お気に入りに追加
181
あなたにおすすめの小説
生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】
雪乃カナ
ファンタジー
世界が退屈でしかなかった1人の少年〝稗月倖真〟──彼は生まれつきチート級の身体能力と力を持っていた。だが同時に生まれた現代世界ではその力を持て余す退屈な日々を送っていた。
そんなある日いつものように孤児院の自室で起床し「退屈だな」と、呟いたその瞬間、突如現れた〝光の渦〟に吸い込まれてしまう!
気づくと辺りは白く光る見た事の無い部屋に!?
するとそこに女神アルテナが現れて「取り敢えず異世界で魔王を倒してきてもらえませんか♪」と頼まれる。
だが、異世界に着くと前途多難なことばかり、思わず「おい、アルテナ、聞いてないぞ!」と、叫びたくなるような事態も発覚したり──
でも、何はともあれ、女神様に異世界召喚されることになり、生まれた世界では持て余したチート級の力を使い、異世界へと魔王を倒しに行く主人公の、異世界ファンタジー物語!!
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
良家で才能溢れる新人が加入するので、お前は要らないと追放された後、偶然お金を落とした穴が実はガチャで全財産突っ込んだら最強になりました
ぽいづん
ファンタジー
ウェブ・ステイは剣士としてパーティに加入しそこそこ活躍する日々を過ごしていた。
そんなある日、パーティリーダーからいい話と悪い話があると言われ、いい話は新メンバー、剣士ワット・ファフナーの加入。悪い話は……ウェブ・ステイの追放だった……
失意のウェブは気がつくと街外れをフラフラと歩き、石に躓いて転んだ。その拍子にポケットの中の銅貨1枚がコロコロと転がり、小さな穴に落ちていった。
その時、彼の目の前に銅貨3枚でガチャが引けます。という文字が現れたのだった。
※小説家になろうにも投稿しています。
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる