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第一章
第9話 力比べ
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「貴様、またしても隊長を愚弄するか! このお方はクロトエ騎士団一番隊隊長レイ・ステラー様だぞ!」
ザインと呼ばれた騎士が声を荒げた。
レイさんは苦笑いしている。
「いいのだ、ザイン。この者はアル・パート。私の友人だ。今日会ったばかりだがな」
「今日会ったばかりで友人と! 信用なりません!」
「いいのだ」
「ハッ! 失礼いたしました!」
このザインさんは、どうやらレイさんに絶対服従のようだ。
それにしても、レイさんの一番隊隊長は本当なのだろうか?
「あの、失礼なことを言ったらすみません。レイさんって隊長さんなんですか?」
「ええ、そうなの。隊長なんて不相応な役職をもらってしまってね」
ザインさんが俺を睨んでる。
「そうでしたか。騎士団の隊長……」
騎士団の隊長となると、その地位は非常に高い。
騎士団の中では団長に次ぐ地位だ。
それも一番隊は騎士団のエースと聞いたことがある。
エリート中のエリートだろう。
俺ごときが気軽に話せる相手ではない。
俺はこれまで気軽に接していた非礼を詫びることにした。
「あ、あの、レイさ……。ステラー様、これまでの数々のご無礼、お許しください」
「アル、やめなさい」
「い、いや、でも」
「いいのよ、アルは私の友人。友人になるのに過ごした時間なんて関係ないわ。レイでいいわよ」
とても優しい口調だ。
レイさんに友人と言ってもらえたことが嬉しかった。
「そうだ、ザイン。あなたは一番隊で最も力が強いのよね」
「ハッ! 隊長には遠く及びませんが、その自負はあります」
「では、今からアルと力比べをしてみなさい。アルのことが分かるかもしれないわよ」
「命令とあらば。しかし、私とて騎士団のプライドがあります。こんな子供と……」
「いいのよ」
ザインさんにも優しい口調になっているレイさん。
ちょっと可愛い。
でも、こんなことを口に出したら怒られそうだ。
それにしても、宿のロビーで騎士と力比べするなんて信じられない。
今朝家を出る時には、こんなことが起こるなんて想像すらしていなかった。
「アルと言ったな。私はクロトエ騎士団一番隊副隊長ザイン・フィリップだ」
「え! よ、よろしくお願いします。アル・パートと申します」
一番隊の副隊長と聞いて俺は驚いた。
これまたとんでもなく偉い人だ。
ザインさんの年齢は二十五歳前後だろう。
身長は俺よりも高く百八十セデルトほど。
薄茶色の短髪に整った顔立ち。
真面目な好青年という印象だ。
軽鎧で体型ははっきり見えないが、引き締まった筋肉質の身体をしているのが分かる。
実戦で鍛えられた筋肉だろう。
俺たちはテーブルに肘を付け、お互い手を握り合う。
そして、レイさんが合図を出す。
ザインさんは様子見なのか、まだほとんど力を入れていない。
俺を試しているのだろうか。
どうするべきかと考えていたら、ザインさんの顔が真っ赤になってきた。
もしかして、ザインさんは本気を出しているのだろうか?
どうするべきか。
ザインさんの名誉を守るために負けるか、苦戦した振りをするか。
ふとレイさんの顔に視線を向けると目が合った。
レイさんの美しい顔に笑みがこぼれ、俺に頷く。
こうなることが分かっていたのだろう。
俺は右手にほんの少し力を入れ、ザインさんの腕を押し倒した。
「アルの勝ちね」
「た、隊長! こ、これは、どういうことですか!」
「これがアルの力よ。それにしても想像以上ね……。私も正直驚いているわ」
しばらく沈黙が流れ、レイさんが俺の顔に視線を向けた。
「アル、その力を国のために使ってみない?」
「た、隊長! もしかして!」
俺よりも早くザインさんが反応した。
俺もその意味は汲み取れる……。
「いや、あの、俺はただの鉱夫ですよ」
「しかし、その力は騎士以上。ねえアル。クロトエ騎士団の入団試験を受けてみない?」
突然の申し出に反応できず、俺は固まってしまった。
レイさんが、ザインさんに視線を移す。
「ザイン、アルの力はどうだった?」
「た、確かに力は強かったです。しかし、この者が騎士団など務まるわけなど」
「騎士団は常に有能な人材を募集している。違うか?」
ザインさんの言葉を遮り、レイさんが畳み掛けた。
「し、失礼いたしました。仰る通りです。先入観で物事を見るなと、隊長に教えていただいておりました。確かにこの私が力で完敗です。この者は新しい戦力になるかもしれません」
ザインさんの意見が変わった。
そして、真剣な眼差しで俺の肩に手を置く。
「アルよ。騎士団の入団試験を受けるんだ」
ザインさんまで入団試験を勧めてきたが、俺はこの急展開についていけない。
ただの鉱夫が騎士?
ザインと呼ばれた騎士が声を荒げた。
レイさんは苦笑いしている。
「いいのだ、ザイン。この者はアル・パート。私の友人だ。今日会ったばかりだがな」
「今日会ったばかりで友人と! 信用なりません!」
「いいのだ」
「ハッ! 失礼いたしました!」
このザインさんは、どうやらレイさんに絶対服従のようだ。
それにしても、レイさんの一番隊隊長は本当なのだろうか?
「あの、失礼なことを言ったらすみません。レイさんって隊長さんなんですか?」
「ええ、そうなの。隊長なんて不相応な役職をもらってしまってね」
ザインさんが俺を睨んでる。
「そうでしたか。騎士団の隊長……」
騎士団の隊長となると、その地位は非常に高い。
騎士団の中では団長に次ぐ地位だ。
それも一番隊は騎士団のエースと聞いたことがある。
エリート中のエリートだろう。
俺ごときが気軽に話せる相手ではない。
俺はこれまで気軽に接していた非礼を詫びることにした。
「あ、あの、レイさ……。ステラー様、これまでの数々のご無礼、お許しください」
「アル、やめなさい」
「い、いや、でも」
「いいのよ、アルは私の友人。友人になるのに過ごした時間なんて関係ないわ。レイでいいわよ」
とても優しい口調だ。
レイさんに友人と言ってもらえたことが嬉しかった。
「そうだ、ザイン。あなたは一番隊で最も力が強いのよね」
「ハッ! 隊長には遠く及びませんが、その自負はあります」
「では、今からアルと力比べをしてみなさい。アルのことが分かるかもしれないわよ」
「命令とあらば。しかし、私とて騎士団のプライドがあります。こんな子供と……」
「いいのよ」
ザインさんにも優しい口調になっているレイさん。
ちょっと可愛い。
でも、こんなことを口に出したら怒られそうだ。
それにしても、宿のロビーで騎士と力比べするなんて信じられない。
今朝家を出る時には、こんなことが起こるなんて想像すらしていなかった。
「アルと言ったな。私はクロトエ騎士団一番隊副隊長ザイン・フィリップだ」
「え! よ、よろしくお願いします。アル・パートと申します」
一番隊の副隊長と聞いて俺は驚いた。
これまたとんでもなく偉い人だ。
ザインさんの年齢は二十五歳前後だろう。
身長は俺よりも高く百八十セデルトほど。
薄茶色の短髪に整った顔立ち。
真面目な好青年という印象だ。
軽鎧で体型ははっきり見えないが、引き締まった筋肉質の身体をしているのが分かる。
実戦で鍛えられた筋肉だろう。
俺たちはテーブルに肘を付け、お互い手を握り合う。
そして、レイさんが合図を出す。
ザインさんは様子見なのか、まだほとんど力を入れていない。
俺を試しているのだろうか。
どうするべきかと考えていたら、ザインさんの顔が真っ赤になってきた。
もしかして、ザインさんは本気を出しているのだろうか?
どうするべきか。
ザインさんの名誉を守るために負けるか、苦戦した振りをするか。
ふとレイさんの顔に視線を向けると目が合った。
レイさんの美しい顔に笑みがこぼれ、俺に頷く。
こうなることが分かっていたのだろう。
俺は右手にほんの少し力を入れ、ザインさんの腕を押し倒した。
「アルの勝ちね」
「た、隊長! こ、これは、どういうことですか!」
「これがアルの力よ。それにしても想像以上ね……。私も正直驚いているわ」
しばらく沈黙が流れ、レイさんが俺の顔に視線を向けた。
「アル、その力を国のために使ってみない?」
「た、隊長! もしかして!」
俺よりも早くザインさんが反応した。
俺もその意味は汲み取れる……。
「いや、あの、俺はただの鉱夫ですよ」
「しかし、その力は騎士以上。ねえアル。クロトエ騎士団の入団試験を受けてみない?」
突然の申し出に反応できず、俺は固まってしまった。
レイさんが、ザインさんに視線を移す。
「ザイン、アルの力はどうだった?」
「た、確かに力は強かったです。しかし、この者が騎士団など務まるわけなど」
「騎士団は常に有能な人材を募集している。違うか?」
ザインさんの言葉を遮り、レイさんが畳み掛けた。
「し、失礼いたしました。仰る通りです。先入観で物事を見るなと、隊長に教えていただいておりました。確かにこの私が力で完敗です。この者は新しい戦力になるかもしれません」
ザインさんの意見が変わった。
そして、真剣な眼差しで俺の肩に手を置く。
「アルよ。騎士団の入団試験を受けるんだ」
ザインさんまで入団試験を勧めてきたが、俺はこの急展開についていけない。
ただの鉱夫が騎士?
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