鉱夫剣を持つ 〜ツルハシ振ってたら人類最強の肉体を手に入れていた〜

犬斗

文字の大きさ
上 下
7 / 414
第一章

第7話 雷の模様がある鉱石

しおりを挟む
 注文した料理が運ばれてきた。

 ラバウト産の野菜を使った大盛りサラダ。
 ラバウト湖で獲れた大虹鱒オンコリの塩釜焼き。
 フラル山の樹海で狩猟した牛鶏クルツの極厚モモ肉ステーキ。
 ラバウト湖の湖畔で飼育されている水角牛クワイのミルクを使った氷菓子。
 昼食とは思えない豪華な食事だ。

 新鮮で瑞々しい採れたての野菜。
 身が厚く、しっかりと味が染み込んだ大虹鱒オンコリ
 肉汁が滴る牛鶏クルツ
 そして、初めて食べたミルクの甘い氷菓子。
 噂通り全てが驚くほど美味い。

 しかし、食事の量は多く、セレナは満腹のようだ。
 今朝山から降りてきたばかりで、腹が減っていた俺でも多いと思ったほどの量。
 だが、レイさんは平然と平らげていた。
 こんなに細い身体をしているのに凄い食事量だ。

「素材が違うだけで、これほどまで味が変わるのね。特に牛鶏クルツは地元で狩猟しただけあって、イエソンで食べたものよりとても美味しかったわ」

 レイさんが感動している。
 その食べっぷりに驚き、俺はレイさんの顔を凝視してしまった。
 レイさんは、そんな俺の目線に気付いたようだ。

「ふふふ、身体を動かすのが私の仕事なの。だから食事はとても重要なのよ。それよりアル君もよく食べるわね」
「す、すみません。今日はたくさん山を歩いたので」
「そうだったのね。食べることはとても大切よ。うちの団員も見習わせたいわ」

 身体を動かす?
 団員?
 レイさんは何か劇団でもやっているのだろうか。
 だけど、劇団員ならこの美貌も納得できる。
 そんなことを考えていたら、レイさんが笑顔で俺の顔を見つめていた。

「ところで、アル君は鉱夫なの? 鉱石を売りに来たって言ってたわよね」
「はい、そうです」
「そうなのね。では、ここら辺で珍しい鉱石が採れたって話は聞かない?」
「俺は希少鉱石を採掘してます。珍しいといえば珍しいですね」
「私は鉱石を見るのが趣味なの。紫色で雷の模様がある鉱石なんだけど、見たことないかしら?」
「紫で……雷の模様……。いえ……、そんな鉱石は見たことないですね……」
「そ、そうよね。……変なこと聞いてごめんなさいね」

 俺はその鉱石を知っている。
 だが隠した。
 会話に不自然さを感じたし、レイさんが俺の表情を観察していることに気付いたからだ。

「レイ様! よく来てくださいましたね!」

 その時、シェフが厨房から出てきてレイさんに一礼。
 俺とレイさんに気まずい雰囲気が流れたので助かった。
 レイさんはイエソンのレストランに通っていたと言っていたから、このシェフと知り合いなのだろう。
 二人で話をしている。
 その間、俺はセレナと食事の感想を言い合っていた。

 今回の支払いは全てレイさんだ。
 正確な料金は分からなかったけど、恐らく半銀貨五、六枚ほどだろう。
 昼食としては驚くほど高価だ。
 レイさんのお詫びということだが、逆に申し訳なくなってしまった。

 今の俺は金貨を持っており、懐具合はとても暖かい。
 ただ、ここで支払いをすると言っても、レイさんの面子もある。
 俺は素直にお礼を伝えた。

「レイさん、今日はごちそうさまでした」
「こちらこそよ、アル君。とても楽しい食事だったわ」
「俺のことはアルと呼んでください」
「分かったわ、アル。セレナも楽しかったわよ。ありがとう」
「いえ、こちらこそありがとうございました!」

 セレナと二人でお礼を伝え、レイさんと別れた。
 俺たちは市場へ続く道を歩く。

「レイさん、すーっごい美人だったね」
「うん。しかも剣術も凄かった」
「美人で強くて憧れちゃうなあ」
「イエソンの女性は、皆レイさんみたいなのかな?」
「そんなことないよ。レイさんが特別なだけだよ?」
「そうなんだ。俺もいつかイエソンへ行ってみたいな」
「あー、アルってば、レイさんに会いたいんでしょー」
「ち、違うよ! まだ行ったことがないからだよ!」
「その焦り、なんか怪しい……」
「ちちち違うよ!」
「違うって何がよ。バカ!」

 セレナの視線が痛い。
 その後もレストランやレイさんのことを話しながら、市場へ戻ってきた。

「あら、おかえり。遅かったわね」
「お母さん! 遅くなってごめんなさい! でも聞いて!」

 セレナがファイさんに経緯を説明した。

「そうだったのね。怪我はない? そのレイさんに、ちゃんとお礼しないとね」
「大丈夫よ、お母さん。それにしてもアルったら、レイさんに見惚れてばかりだったよ」
「だから違うって!」
「アハハ」

 無邪気に笑うセレナ。

「全く……。じゃあセレナ、俺は宿屋へ行くよ」
「うん、明日アルが帰る時に見送るね」
「分かった、ありがとう。じゃあまた明日」

 俺はエルウッドの顔を見て思い出す。

「あ、ファイさん。エルウッドが食べた野菜代を払います」
「いいのよ。アル君にもエルウッドにも、会えるだけで嬉しいんだから」
「で、でも……」
「いいのよ。また遊びに来てね」
「はい、ありがとうございます! エルウッド、お礼は」
「ウォン!」
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました

遥 かずら
ファンタジー
冒険者ギルドに所属しているエンジは剣と魔法の才能が無く、文字を書くことだけが取り柄であった。落ちこぼれスキル【転写】を使いギルド帳の筆記作業で生計を立てていた。そんなある日、立ち寄った勇者パーティーの貴重な古代書を間違って書き写してしまい、盗人扱いされ、勇者によってギルドから追放されてしまう。 追放されたエンジは、【転写】スキルが、物やスキル、ステータスや魔法に至るまで何でも【コピー】できるほどに極められていることに気が付く。 やがて彼は【コピー】マスターと呼ばれ、世界最強の冒険者となっていくのであった。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

処理中です...