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第一章
第6話 王都から来た女性
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女性は俺を見て驚いていた。
そこへ激怒したハリーが迫って来る。
「おい! てめえ、マジで殺すぞ!」
ハリーが女性の前に立つ。
だが同時に、ハリーの喉元には女性の細剣が突きつけられていた。
電光石火の突きだ。
あまりにも速すぎて、俺には見えなかった。
「おおおお……」
ハリーの額から汗が流れる。
「ハリーとやら、ここで死ぬか?」
「く、くそ!」
「立ち去れば見逃してやろう。だが二度目はないぞ」
女性は低い声で警告する。
「覚えてろ!」
ハリーは定番の悪態をつき、立ち去ろうとしていた。
俺は片手で持っていた大斧をハリーに向かって放り投げる。
それを両手で受け取ったハリーは、乱暴な足音を立て道の向こうへ消えていった。
「驚かせてしまったようね。怪我はないかしら?」
女性が俺たちに向かって話しかけてきた。
ハリーがいなくなって言葉遣いが優しくなっている。
「はい、俺も彼女も大丈夫です。あなたも無事なようで良かったです」
「ふふふ、ありがとう。しかし、あれくらいはどうってことないわ」
Cランクの冒険者をどうってことないと言い切る女性。
「それより、あなたたちもこの店で食事かしら?」
「はい。彼女、セレナがこの新しい食堂に連れて来てくれたんです」
「そうなのね。ではお詫びにごちそうさせてもらうわ」
「え? それは悪いですよ」
「いいのよ。これも何かの縁だし、良かったら一緒に食べましょう。食事は一人で食べるより、たくさんの人数で食べる方が美味しいもの」
「わ、分かりました。では、お言葉に甘えてごちそうになります。ありがとうございます」
騒ぎで行列はなくなってしまったため、一部始終を見ていた店員が俺たちを店内に案内。
騒ぎが収まった後は、改めて店の前に改めて行列ができていた。
店内は広くも狭くもない、食堂としては一般的な広さだった。
カウンターとテーブルで合計二十席ほどある。
壁や家具は樫の木で統一され、落ち着く雰囲気の食堂だ。
案内された四人がけの丸テーブルにつくと、騒ぎを見ていた客から声がかかる。
「あんたたち凄いな!」
「よくやった!」
「なんだ、八百屋のセレナじゃないか。大丈夫だったか? それよりデートか?」
俺もセレナも一通り反応すると、各々また食事に戻った。
セレナは怒っていたが……。
これまでフードを被り顔が見えなかった女性がフードを取る。
「巻き込んでしまい申し訳なかったわね」
女性が頭を下げ、謝罪してきた。
金色の長い髪を後頭部で一本に結いている。
光沢のある前髪は、一本一本がまるで精巧な金細工のようだ。
真っ白な肌はきめ細かく、切れ長の目、紺碧の瞳、綺麗に通った鼻筋、ほのかに桃色をした薄い唇。
よく見ると恐ろしいほどの美人だ。
いや、よく見なくても凄まじい美人だと思う。
これほどの美人は見たことがない。
俺もセレナも思わず見惚れてしまった。
「私はレイ・ステラー。この店で食事をしたくて、王都イエソンから来たのよ」
「ア、アル・パートです。今日は鉱石を売りに市場へ来ました」
「セレナ・ベイカーです。この街で八百屋をやってます」
セレナはレイさんに興味津々の様子だった。
「レイさんは、わざわざイエソンからこの食堂のために来たんですか?」
「ふふふ。私はここのシェフのファンで、イエソンのレストランではよく通っていたのよ。でも突然移転してしまってね。本当は別の用事でラバウトへ来たのだけど、どうしても食べたくてシェフの店に寄ったのよ」
「そうだったんですね! じゃあ、ここは噂じゃなくて本当に美味しいんですね!」
「ええ、もちろんよ。イエソンでも人気のレストランだったわ」
「うわー、楽しみです!」
メニュー表を見て、レイさんが注文してくれた。
イエソンのレストランでも人気だったメニューがあるとのこと。
注文後、俺はレイさんに王都イエソンの様子を聞いた。
セレナと違い、俺はイエソンへ行ったことがない。
話を聞くと、大きな街だと思っていたこのラバウトですら、イエソンに比べると小さい街ということが分かった。
カルチャーショックを受けると同時に、俺はなぜか心踊る。
いつか行ってみたいと思ったからだ。
そこへ激怒したハリーが迫って来る。
「おい! てめえ、マジで殺すぞ!」
ハリーが女性の前に立つ。
だが同時に、ハリーの喉元には女性の細剣が突きつけられていた。
電光石火の突きだ。
あまりにも速すぎて、俺には見えなかった。
「おおおお……」
ハリーの額から汗が流れる。
「ハリーとやら、ここで死ぬか?」
「く、くそ!」
「立ち去れば見逃してやろう。だが二度目はないぞ」
女性は低い声で警告する。
「覚えてろ!」
ハリーは定番の悪態をつき、立ち去ろうとしていた。
俺は片手で持っていた大斧をハリーに向かって放り投げる。
それを両手で受け取ったハリーは、乱暴な足音を立て道の向こうへ消えていった。
「驚かせてしまったようね。怪我はないかしら?」
女性が俺たちに向かって話しかけてきた。
ハリーがいなくなって言葉遣いが優しくなっている。
「はい、俺も彼女も大丈夫です。あなたも無事なようで良かったです」
「ふふふ、ありがとう。しかし、あれくらいはどうってことないわ」
Cランクの冒険者をどうってことないと言い切る女性。
「それより、あなたたちもこの店で食事かしら?」
「はい。彼女、セレナがこの新しい食堂に連れて来てくれたんです」
「そうなのね。ではお詫びにごちそうさせてもらうわ」
「え? それは悪いですよ」
「いいのよ。これも何かの縁だし、良かったら一緒に食べましょう。食事は一人で食べるより、たくさんの人数で食べる方が美味しいもの」
「わ、分かりました。では、お言葉に甘えてごちそうになります。ありがとうございます」
騒ぎで行列はなくなってしまったため、一部始終を見ていた店員が俺たちを店内に案内。
騒ぎが収まった後は、改めて店の前に改めて行列ができていた。
店内は広くも狭くもない、食堂としては一般的な広さだった。
カウンターとテーブルで合計二十席ほどある。
壁や家具は樫の木で統一され、落ち着く雰囲気の食堂だ。
案内された四人がけの丸テーブルにつくと、騒ぎを見ていた客から声がかかる。
「あんたたち凄いな!」
「よくやった!」
「なんだ、八百屋のセレナじゃないか。大丈夫だったか? それよりデートか?」
俺もセレナも一通り反応すると、各々また食事に戻った。
セレナは怒っていたが……。
これまでフードを被り顔が見えなかった女性がフードを取る。
「巻き込んでしまい申し訳なかったわね」
女性が頭を下げ、謝罪してきた。
金色の長い髪を後頭部で一本に結いている。
光沢のある前髪は、一本一本がまるで精巧な金細工のようだ。
真っ白な肌はきめ細かく、切れ長の目、紺碧の瞳、綺麗に通った鼻筋、ほのかに桃色をした薄い唇。
よく見ると恐ろしいほどの美人だ。
いや、よく見なくても凄まじい美人だと思う。
これほどの美人は見たことがない。
俺もセレナも思わず見惚れてしまった。
「私はレイ・ステラー。この店で食事をしたくて、王都イエソンから来たのよ」
「ア、アル・パートです。今日は鉱石を売りに市場へ来ました」
「セレナ・ベイカーです。この街で八百屋をやってます」
セレナはレイさんに興味津々の様子だった。
「レイさんは、わざわざイエソンからこの食堂のために来たんですか?」
「ふふふ。私はここのシェフのファンで、イエソンのレストランではよく通っていたのよ。でも突然移転してしまってね。本当は別の用事でラバウトへ来たのだけど、どうしても食べたくてシェフの店に寄ったのよ」
「そうだったんですね! じゃあ、ここは噂じゃなくて本当に美味しいんですね!」
「ええ、もちろんよ。イエソンでも人気のレストランだったわ」
「うわー、楽しみです!」
メニュー表を見て、レイさんが注文してくれた。
イエソンのレストランでも人気だったメニューがあるとのこと。
注文後、俺はレイさんに王都イエソンの様子を聞いた。
セレナと違い、俺はイエソンへ行ったことがない。
話を聞くと、大きな街だと思っていたこのラバウトですら、イエソンに比べると小さい街ということが分かった。
カルチャーショックを受けると同時に、俺はなぜか心踊る。
いつか行ってみたいと思ったからだ。
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