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本編
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さて、もう一つの『予想外』──ライラ。
ライル様と入れ替わりで王都に戻った直後、私から婚約報告したライラから意外な言葉が……。
「おめでとう!私も婚約したの!両想いよ、祝福してね。」
ライラからの一言目がコレ。一瞬、まさかラウル殿下に落とされたのか、と思ったわ。それでも、即座に『おめでとう』とは伝えたわよ? 両想いだと言うし、婚約が成立してるってことは両家合意だしね。
「ラウル殿下じゃないわよ? 隣国の第2皇子カイル殿下なの。」
やはりラウル殿下には無理だったらしい。でも……カイル殿下? 2人って接点有ったかしら?
「彼が先日我が国を訪れた時に会って、一目惚れ。そうしたら、彼もそうだったらしくて翌日にはプロポーズの予約をされたの。彼は美形というほどじゃないから──それでも整った見た目だけど──普通に対応できたの。でも、それだけで婚約したわけじゃないのよ? 彼の担当は皇国の農業振興で、話が合うのよ。」
なんか、レイド様と私と似てない? さすが従姉妹ってことかな。なるほど、コレも有ってライル様の『王都に戻って来い』だったんだと納得。
プロポーズの予約というのは、カイル殿下はプロポーズする決意と同時に報告と根回しと準備を始めたけど、気持ちを伝えるのは決意した当日だったから予約という形になったんだとか……。
で、(カイル殿下にとっての)自国からの許可が来てプロポーズしたのが、私からの婚約報告の数日前らしい。
「(カイル殿下が)帰国してる間に、どちらかの状況が変わって結婚できなくなるとイヤだから」
カイル殿下とライラがそう言って最短を望んだ結果、婚約式は3か月後に行うことに……。
カイル殿下は、プロポーズのライラからの返事聞いて即時、それを我が国の陛下に報告して即時……と、実にマメに、報告と根回しと準備をやってきたらしく、向こうでのアレコレは順調すぎるほど準備が整っていたみたい。
カイル殿下って見た目は穏やかそうなイメージなのにと驚いてたら、ライラに『あれは緊急モード』だと教えられた。さすが王族。緊急モードなんて滅多に無いから、隣国も戸惑ったらしいけど、当然よね。それらの情報を持ってるライラも大概だと思うけど……。
で、ライラも、カイル殿下と同じ理由で、向こうの勉強は自国と隣国とで『最短で終わらせてみせます』と宣言したからね。
「今まで、ラウル殿下の婚約者候補筆頭として頑張ってきたのが役に立つわ。」
と笑顔で言ってたのは、ラウル殿下には内緒にしておいてあげようと思う。
ライラから婚約報告を聞いた後、たまたま王宮で見かけたラウル殿下は落ち込んでいる様子だった。当然、表面は平静を装っているけど、いつもより闊達さが無い。
ライラを口説くのを楽しんでたようだったけど、思ったより本気だったのね。
相手のカイル殿下は隣国の第2皇子で、同じ第2王子とはいえ隣国の方が大きくて豊かだから、我が国としては歓迎したい縁組。
それに、ライラは婚約者 “ 候補 ” でしかなかったから婚約解消ではなく候補から外れるだけの話だし、ラウル殿下が一方的に口説いてただけなのをみんな知っているから、結構すんなり婚約が認められたらしい。
さすがのライル様も慰め方に困ってたとか……。
ライラが嫁ぐのは隣国。カイル殿下は国内の産業振興を担当してらっしゃるそうなので、嫁いでしまえば滅多に帰って来られない。
そして、ラウル殿下は、王太子様の即位後は王弟として内政を中心に担当することになってる。王太子様に跡継ぎが生まれたら新たな公爵家を興して当主になることも決定済み。
更には、王太子様には婚約成立済みの正式なお相手がいらっしゃるけど、ラウル殿下は筆頭候補者が居なくなるんだから狙う人が増えるのはしかたない。片想いの相手であるライラが滅多に帰って来られないなら想いを吹っ切りやすくなるんじゃないかという考えも有るのか、令嬢やその家族からもライラは心からの祝福をもらっている。
「妬みや僻みなんて、結局は羨ましがってるだけだとわかったから、カイル殿下との仲の良さを見せつけて諦めさせるわ!」
カイル様を狙ってただろう隣国の令嬢や貴族たちの反応を心配する私に、こう言ってライラは笑った。不安が無いわけじゃないだろうけど、それを理由にカイル殿下を諦めるという選択肢は無いという意思表明。
そうして、レイド様と私の婚約も合わせて、二組合同の婚約式が決まったのだった。
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