予想外のハッピーエンド【連載版】

セライア(seraia)

文字の大きさ
上 下
10 / 16
番外編(いくつかの本音)

番外編1『救いは隣国に』

しおりを挟む

 ***(ライラ視点)****


 私、侯爵令嬢ライラは、本日、従妹いとこの伯爵令嬢シエラと合同で婚約式を行いました。 

 美形の多い王侯貴族の中、美形嫌いの私は結婚をあきらめかけてたんです。しかも、政略結婚がほとんどという貴族の1員なんです。なのに、恋愛結婚できるなんて、嬉しいに決まってます!

 1人の引きつった表情と数人の微妙な表情以外、ほとんどが笑顔の幸せな式でした。


 引きつってたのは、私が婚約者候補の1人とされていた第2王子ラウル殿下。
本人はわかってないようですが、私の美形嫌いの原因です。


 状況はよく有るパターン。 

「結婚相手は条件が合って従順なら、それでいい。」

 有るとき、たまたま聞こえてしまった男ばかりの会話の中、そう言い切った殿下。傲慢ごうまんに感じはするけど、王族としては間違ってないとも言えるので、それは気にしませんでした。 

「私の隣で見劣みおとりしないからライラが一番かな」

 でも、数多くの候補の中でよりによって私が筆頭に決まったのは、ラウル殿下のこのセリフが決め手だったと知って、何かが切れましたの。
この話、ラウル殿下から隠れてる時に通りかかった大臣補佐官たちの会話なので、信憑性しんぴょうせいはかなり高いんです。

 それまでも、私はさんざん容姿をめられてきました。娘である私から見ても美形な両親の元に生まれているので、その賛辞は笑顔で受けてきました。
でも、見た目だけが取り柄と思われるのは嫌でマナーも勉強も社交も頑張ってきたのです。その結果を認められ『理想的な令嬢』と言われるようになったと自負しています。
 私のそんな努力も何もかも、ラウル殿下は否定したのです。それどころか、むしろ『見た目だけの方が好都合』とさえ思っているようでした。

 こんな人と結婚なんてお断りです。
私以上に王子妃にふさわしい公爵令嬢もいらっしゃるし、問題は無いはずです。
それなのに、候補からはずれることを認めないばかりか口説くような言動まで仕掛けてくるなんて……!
それを従兄いとこのライルがあおり、あげくに助け船を出してくれるシエラを私から引き離したりして……ラウル殿下とライルへの男性としての評価はマイナス方向に下がる一方でした。 

 そうして、彼らを含む容姿に自信の有る男性はすべて警戒対象になりました。親の心配は気付いてましたが、自分の将来の為、全力で拒否し続けていたのです。 



 そんな時、カイル殿下に会ったんです。
金茶の髪に黒い目、すごい美形ではないけど整った容姿に、一目で好意を抱きました。
2つ年上で落ち着いていて、安心して対応できます。
農業振興を担当しているだけあって、植物の栽培と改良が趣味の私とは話も合いました。 

「貴女とは、共に寄り添い生きるでありたい。結婚していただけますか?」

プロポーズで差し出された指輪は、彼の首のネックレスに通してあったおばあ様の形見でした。『正式なものは後で渡すけど、貴女に約束の指輪を持っていてほしいから』という言葉が添えられて……。
彼らしい表現に、かけがえのないものを託してくれる信頼、なによりも私自身が彼にかれていたのです。彼から動かなければ、彼が帰国するまでには私からプロポーズしていたでしょう。
たとえ彼の帰国で一時いっとき離れることがやむをえなくても、想いを伝えたかったのです、知ってほしかったのです。できれば、彼の心を知りたかったのです、先の約束が欲しかったのです。

「私も、貴方と共に生きたいです。結婚してください。」

 私からの答えは、これ以外には有り得ませんでした。

 私の承諾しょうだくの翌日には国王陛下と両親に婚約の許しを直接願う誠実さ、同時に自国へ報告の使者を出し婚約準備の手配を行う手際の良さ……それらは私を二度・三度と彼に惚れ直させました。

たまに垣間かいま見える研究馬鹿・仕事中毒なんて気になりませんでした。
王子とはいえ、王位を継ぐわけではないし、担当分野の関係で研究や視察などが多く、社交の場に出ることは少ないので、健康でさえあれば研究所に詰めていても文句は言われないそうです。

「結婚後、貴女の勉強が一通り終わったら一緒に研究できますね。終わる前でも、できる限り視察には同行してもらいますよ? 私の妻として周知したいですし、見聞も共有したい。私を知ってほしいし、貴女を知りたい。なによりも、同行してもらえば一緒に居られますし、貴女に言い寄る男どもの動きを心配しなくて済みます。」

 心底うれしそうに、ちょっぴり切なそうに、こんなふうに言われては、準備も勉強も最速で終わらせるべく私も頑張りますよ。
 一緒に研究・視察するということは、彼が研究馬鹿・仕事中毒なほど共有できる時間が長くなるんですから、そういう傾向もむしろ歓迎したいくらいかもしれません。


 私がカイル殿下と出会い、共に過ごすようになったころ、ラウル殿下が落ち込んでいるという噂も有りましたが、あえて、聞かなかったことにしました。

「馬鹿なこと言って、自力で口説き落とすこともできなかったアレが悪いのよ。気にせず幸せになりなさい。」

 と、王妃様もむしろ楽しそうにおっしゃってくださいましたしね。


 そうこうしていると、なんとシエラから婚約報告が……! 

 2人の掛け合いが面白いと噂され、実際に彼女に興味を示し始めたライルではなく、その弟のレイドが相手というから『予想外』でした。 
 でも、重度の本好きで結婚願望が無かったうえに、第3王子との婚約解消をこっそり喜んでいた彼女が結婚する気になるなんて、祝福しないわけがありません。ですから、すぐに返事を送りました。もちろん、私の婚約も共に知らせます。 

 それに対する返信は早かったです。

 私の婚約で複雑な表情をしたライルですが、口説いていると噂のシエラの婚約については微妙な表情でした。
ラウル殿下の件も有りますし、絡まれてシエラが困っていたことも知っていたので、少し気分がスッキリしました。


 さぁ、これからは幸せに向けて頑張りましょう。


 ***(番外編1 完)***
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

彼を愛したふたりの女

豆狸
恋愛
「エドアルド殿下が愛していらっしゃるのはドローレ様でしょう?」 「……彼女は死んだ」

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

処理中です...