聖・黒薔薇学園

能登

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I

XII

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「月城、何して...!?」

「おはよう。
よく眠れた...?」

内腿にキスを落としながら、時折皮膚に歯を立てる月城の姿に視界がクラッと揺れた。

朝一から、なんて刺激が強すぎる光景なのだろう。

またしても四季自身はボクサーパンツをこれでもかと言うほど押し上げ、先端に染みを作っている。

「眠れた、けど...んっ...これは一体どういう状況なんだよ...。」

「朝起きたら腕の中に君がいて、美味しそうな匂いがするなって匂いを辿ったらここだった。」

「ふぁ、あ...♡」

鼠径部そけいぶを押さえ込み、下着に鼻を押し当てた月城は、下着の上からペニスをべろりと舐めて見せる。

またしても、刺激的な映像に視界が揺れ脳が煮えたぎりそうなくらいに熱くなる。


「...腰...ビクビクしてる、僕の口...そんなに気持ちよかった?」

「あっ、あ......ぅ...。」

昨日は薄暗い部屋の中、月光だけが頼りだった。
月城の顔や体は見えていたが

「...恥ずかしいって顔してるね...。」

こんなに明るいと、瞳の輝きまで鮮明に見えてしまっていけない。

この美しい顔をした男が、勃起したペニスの横で可憐に笑うのだ。
そして、見せ付けるように根元から頂までを再び舐め上げる。

「くぅ、ん...っ♡」

もどかしい快感に背筋を仰け反らせると、喉から情けない声が漏れた。

はっ、はっ...と荒い息を吐き、弱々しく彼の頭を押し返す。

指に絡みつく生糸のような髪は、触れた瞬間、思わず手を引っ込めたくなるほどの柔らかさで...

「もう一度、僕の口でイかせてあげる...。」

形のいい唇から発せられる、静かで穏やかなは四季の心を掴んで離さない。

透明感があって、低過ぎず高過ぎない、それでいて色気を含んだ月城の声。

「は、ぁ...♡」

うっとりする。

彼の冷たい頬を撫でると、月城は目を細めて微笑んだ。


(ああ、いいな...。

全部...、全部欲しい...。
この綺麗なモノが、全部俺の物になればいいのに。)







「四季...?」

「!」

名前を呼ばれて我に返る。

(一体自分は、今何を考えた!?
何かとんでもないことを考えていなかったか...!?)

月城の存在が非現実的過ぎて、少しの間タイムトリップしていたことに驚きつつも、四季は体を起こした。


「あ、ああ!...そう言えば今日の授業のことすっかり忘れてた!
課題もやらなきゃいけないし...俺はそろそろ自分の部屋に...。」

「実は、先生から一度四季を夜間授業に出席させて欲しいと言われているんだ。
勿論、僕たちがヴァンパイアであることを知った後にと言う話だけど。」

「夜間...それは、人間の俺が出席してもいいの?」

「いいよ、あまりお勧めはしないけど...君にも知る権利、夜間授業に参加する権利があるからね。」

あまりお勧めはしない。
この理由は、西園寺から聞いた話で何となく察しがつく。

人間の血よりヴァンパイアの血の量が多いダンピールや、純血のように薬があまり効かないヴァンパイアが参加する夜間授業は、きっと昨日の月城を思い出させることだろう。

血に飢え、空腹に耐える...虚ろな瞳をしたヴァンパイアたちが...。


「この学園で生活する以上、君もヴァンパイアの実態を知っておいた方がいい。」

「まあ......確かにそれはそうだな...。」

「今日の授業は夕方からだし...さっきの続き...しよっか。」


妖しく笑う月城を前に、ヒク、と頬が引き攣る。

「あっ!ちょ、っ...まだ課題が...!」

「うん、そうだね...。」

「いや、そうだね。じゃなくて!あっ...そこは...!んあっ♡」

太陽の光が差し込む一室に、またしても情けない四季の喘ぎ声が響き渡った。







17時30分

「これから授業が始まるっていうのに、凄く疲れてるね...四季。」

「誰のせいだと...。」

静まり返った薄暗い廊下を歩く。
結局あの後、月城の口でイかされた。
正直気持ちいいなんて言葉では言い表せない。

腰どころか全身が蕩けてしまいそうになる...、癖になって彼の口でしかイけなくなったらどう責任をとってくれるのだろう。

月城は口淫の後、後ろ...言わば尻の穴に指を押し当て「次はこっちだな。」と意味深なことを言っていた。


(こっちって、何...?)

しかもその後に、「あ...爪長いから切らなきゃ。」との発言もしていた。

爪が長いと何かしら不都合があるのか、今の四季にはよく分からない。


「既に察しが付いていると思うけど、夜間授業に出席する生徒は薬の効果が出ない純血やダンピールが多くてね。
四季は僕から離れないようにして。」

「う、うん。」

薬が効いていれば、苦手な日の下さえも歩けるようになる。
加賀美や西園寺、昼間授業に出席しているクラスメイトは薬がしっかり効いている...物事を冷静に判断出来るヴァンパイアだ。

ただ、夜間授業に出席している生徒は...常に飢餓状態の薬で茶を濁しているようなヴァンパイアで、脳内にフラッシュバックするのは昨日見た気だるげな、だけど荒々しい獣の目をした月城の姿だった。


(少し怖い...かも。)


「四季、何があっても僕が君を守るよ。

さあ、お手をどうぞ...。」

差し出された白い手に、恐る恐る手を重ねる。

扉に手を掛けた月城が、伏せた睫毛の下で優しく瞳を潤ませながら口を開いた。


「ようこそ、...夜の黒薔薇学園へ...。」

開けられた窓から風が入り込み、カーテンがふわりと舞う。









月の光を浴びて、より一層ギラついた瞳が一斉にこちらへ向いた。

背筋が凍る。

この言葉をこれほど体感したことはない。

てつく足下、恐怖で声さえも失ってしまい早くも夜間授業に参加したことを後悔し始めている。


「見て...綾人様と手繋いでる...。」

「何あいつ...。」

「あれが転校してきたっていう人間...?大したことなさそうじゃん。」

コソコソ話しているつもりだろうが、四季の耳に届いているのがまた辛い。

そんな中

「四季...おいで...?」

ルビーの瞳は儚く煌めいた。

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