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ビビりとモフモフ、冒険開始

バーベキューの裏で~好き勝手に暗躍する皆さん2~

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俺の甥っ子が、前世で脱獄王だった件。

「焼きトウキビ、久しぶりだなぁ。」
『おいしいね~♪』
「ね~♪」

思ってたより、のほほんとしているヨシュアさんは、俺の隣でモシャモシャとトウキビを食べている。
是非『ヨっくん』と呼んで欲しいと言われたんで、遠慮なくそうすることにした。

1度は非常食扱いした陽向とも、既に打ち解けたらしい。
たぶん陽向は『非常食』の意味わかってねーけど。

『ダツゴク…王…?』
『…ダツゴクって…脱獄よね…?』
『2人共、知ってる人です?』
『前世の世界で、有名な方だったんですよ。』
「ボク、君達の時代でも有名なの?騒ぎには成ってた自覚あるけど。」
「漫画に、ヨっくんがモデルのキャラが、レギュラーで出てくるくらいには有名だよ。」

漫画キャラも凄い奴だけど、何より実際の本人の情報が凄かった。
たぶん漫画の脱獄王より、リアルの脱獄王の方が戦闘面は強い。

確か漫画だと『関節が柔らかい』くらいだったけど、実際は『自分で関節外して、嵌め治せる』だったり。
他にも
『牢屋の鍵をピッキングで開ける』
『天井の梁まで身一つで登る』
『普通の手錠なら力付くで壊しちゃう』
『成人男性2人がかりで締めたボルトを、歯で何万回も噛んで外す』
等々。色々とやらかしてる。
世が世なら、忍者として活躍できそうな人物だ。
…漫画では『コミュ力お化け』でもあったけど、それはどうなのかな?
さっきみたいな『いつの間にか溶け込んでる』も、かなり凄いけどさ。

「生涯で、脱獄4回だっけ。」
「うん。天井から抜けたり、床下掘ったりして。」
『……凄いな。』
『前世からそれって…ジェイクさんの英才教育で、今は更に凄いことに成ってるんじゃ……』

因みに、何度も脱獄した理由は『囚人の扱いが余りにも酷かったから』なんだとか。

「ヨシュア、来てたんだ。ジェイクは?」
「母さんがお腹空いたって言ってたから、今頃グッタリしてるかなぁ。マクベス伯父さん、一応増血剤処方してもらえる?」
「はいはい。エリザは夢中になると、加減効かないからね…ジェイクも止めないし。」
『…大変…だな……』
『まさか、毎食血塗れなのかしら……』
「お互い愛が重……げほんごほんヨっくん、お肉どーぞ。」
「わぁ、ありがとう♪」

ジェイク兄ちゃん、いつか干物に成るよ……?

「ミライ、私は帰りますね。家の夕食の、仕上げをしないといけませんから。」
「あ、うん!手伝ってくれて、ありがと!」
『ありがとうございました、ルゥナさん。』
「どういたしまして。…このお肉、少し持っていって良いですか?デイヴィーと、家の子達の分を。」
「どぞどぞ!」

俺も食べよう。お肉♪お肉♪
むぐ……ん~、ジュワッてする!脂身うまぁ~♪

「良い脂だなぁ。はい、小梅あーん♪」
『にゃーん♪』
「若葉のも、外してあげるなー。」
『ありがとう!』

モフモフ達の分は、串から外してあげないとね。危ないから。
小梅と若葉は自力で外せるけど、お手伝い沢山頑張ってくれたから、甘やかすことにした。
え、いつも通り?

「詩音のも外すから、間違っても串咥えるなよ。」
『お手数お掛けします……ヨシュアさんは、いつ頃前世を思い出されたんですか?』
「記憶が戻ったのは、1歳くらいだったかなぁ。でも、産まれて1週間後には、既に脱獄しまくってたらしいよ。」
『赤ちゃんの頃から?!』
「脱獄って…」
『ど、何処から…?』
「人間で言う、ベビーベッドってやつ。」

フェンリルのベビーベッドは、大型犬が入るペット用フェンスみたいな感じらしい。
そこに、親の毛で作った、柔らかい毛布を入れてあげるんだって。

最初は、格子をすり抜けて?
格子の隙間に透明な板貼られたら、ペタペタ引っ付いて登り?
板にくっ付けないよう、魔力コーティングされたら、板と壁で連続壁キックして柵越え?

…兄ちゃんは兎も角、エリザさん困惑したろうな……

「そして、生後半年くらいで、寝室からの脱獄に成功しちゃってね。母さんとお婆ちゃんは、頭抱えてたらしいよ。父さんとお爺ちゃんに伯父さん達は、『将来が楽しみだ』って、笑ってたみたいだけどw」
「…ドアから?窓から?」
「ドアに付いてた、飾り窓。」
『ま、また凄い所から…』

魂に刻み込まれた、脱獄スキルすげぇ…!

「もう、父さん面白がって、裏のお仕事に役立つスキル、沢山教えてくれちゃってねぇ。記憶戻る頃には、家から脱獄を……あ、そだ。お仕事で思い出した。」
『何をですか?』
「はい、報告書。」

報告書?何の?


───────

※緑色視点


「……ほうほう…」

ヨシュアくんが書いた報告書、意外とちゃんとしてる。
普段は、ぽやっぽやしてるから、情報屋向いて無さそうなのにね~。

しっかし、あのアホ中々複雑な家庭環境だな………ほー…えぇぇ…うわ、流石に同情する……あれまあ…。
こりゃ、性格も性癖も歪む。
家、俺も子供らも、兄弟仲良好で良かった。

コレ、ミライにも伝わんのかなぁ…伝わるよね、当事者だもんね。
俺でさえ少し同情する境遇を、ミライが知ったとして。
このまま俺がプランA実行したら、ミライに「兄ちゃんのバカ!人でなし!」くらいは言われちゃいそうだなー。
そもそも『ヒト』じゃないってのは、置いといて。

仕方ない、プランAはゴミ箱へポイッと。

「…よろしいのですか?そちらのプランを、予定して居られたのでは。」
「そのつもりでしたが、これでは、やり過ぎと言われてしまいそうなので。末弟と友人最大の被害者達の意思を尊重します。プランA『迅速に家ごとブッ潰す』は、無しの方向で……そうですね、プランC『返済できるまで馬車馬の如く働いてもらう』にしましょうか。」

コレなら、ミライ的にも妥当でしょ。
たぶん生涯かけても、1人じゃ返せない額ってだけで、命取られる訳じゃないんだから、頑張ってね。

…寿命来るか、どうあがいても働けなくなったら、完済扱いにしてあげるべきかな?
ミライならソコまで求めて……来ないな。
うん、俺のこと割りと嘗めてるだろうから、たぶん誤魔化されてくれる。

「では、プランB『当人を玩具として全力で遊ぶ』、及びプランD『領地丸ごと買収』も破棄ですね。彼にできそうな仕事を、リストアップします。そちらの資料を、拝見しても?」
「ええ。後は任せます、カミール。」

家の長男くん、有能だからね~。
安心してお任せするとして。
えーと…この資料どこまで見たっけ?
あ、此処だな。

今回、暴行事件が起こった集落は、3つ。
その内2つで、家の従業員がやられてて…1人は腕に打撲、軽症。
もう1人は、剣で斬られた。
命に関わるレベルの重症だったけど、シオンのお陰で持ち直した、と。
両方共、犯人冒険者だったし…冒険者ギルドに一応抗議文送って良いかな。良いよな。

重症負わせてくれやがった野郎は、ぶん回して遊んじゃったけど、兄ちゃんなら治せるでしょ。
もう片方には、軽い脅しだけしといた。
従業員くんが、既にボコボコにしてたからね。
今回の事で知ったけど、品質Sの『大根』は、『玉鋼のメイス』に匹敵する、強度と威力があるらしい。
この先、有事の際の自己防衛用備品として、全支店に配給することを検討しよう。

「サポテ、此方の手紙を、プローティアの冒険者ギルドへ。」
「暴行事件に関する抗議文ですね。」
「序でに、此方を商業ギルドへ。」
「例の抗議や通達に対する、副会長直々の返答ですね。畏まりました。」

中身見てないのに、よく解ってるなぁ。
家の長女ちゃんも有能…て言うか、俺とルゥの子、皆ハイスペックなんだよね。
果たして兄ちゃんを参考にしてんのか、俺を反面教師にでもしてんのか。

「…ふぅ…お腹空いた………」

…おっと、ボンセット支店の在庫調整をしなければ。

売れ筋が、変わりそうだからね。
なんか凄いことになってたラビちゃん像に、特産のホワイトメロンが供えられてたから…これからあの村は、果物の時代が来ると見た。
少し珍しい果物を、多めに補充しよう。

「後は、ラビブームになる可能性を考慮して、プランターラビの餌になる花と…今回大量消費した、薬草類も念のために……。」

傷薬になるアズレン、熱冷ましになるヒエヒエ草、痛み止めのロソプフェン…子供も居たよね。ならバルファンも……
あのラビちゃん像は、何処まで治せるんだろ。
能力によっては、納品数変わってくるよねぇ。
……ラビ肉って久しく食べてないな。

「…夕食お肉出るかなぁ……っと、集中集中。」
「肉は確実に食卓へ上がります。完全に素の状態へ移行する前に、退勤されてはどうですか。気力だけで、帰ることになりますよ。」
「…まだ大丈夫です。」
「本日の夕食は、母上が愛情込めて焼いた、パン入りチキングラタンに、フランとラズリが頑張って野菜をちぎったリーフサラダ、幼い叔父上とご友人達が用意された猪系の肉串だとか。」
「…ぅ………」
「尚、通常の夕食の時刻は過ぎておりますが、フランもラズリも『パパとたべるのっ!』と言って聞かないと、ピターニャが…」
「帰ります。」
「はい、お気を付けて。」

こんな時間まで、娘達待たせてたぁあああっ!!
ゴメン、カミール!あとお願い!!


───────


※報告書を読んだ未來視点


……えぇぇぇぇ…

「…………貴族の家、こっわ……」
『こ、これは…流石にちょっと……』
『…良かったわね、ラルフ……サリエルさんと、こんな確執無くて……。』
『ああ…俺は恵まれてるよ。』

3才の頃にお母さん亡くして、4才でお父さんが19歳の女性と再婚。
同時に0才の弟ができた、と。
え、後妻さんお母さん亡くなる前から、手出されてね?公認の愛人ってやつ?

んで、大きく成ってくると、弟は何やらせても大体優秀な成績を修める。
自分は平凡な出来。
使用人にも学園の教師にも比べられまくり、「弟君が次期領主なら、どれだけ良かったか」と嫌味を言われ、影口叩かれ。
弟も「次期領主に相応しいのは僕でしょう?」とか言ってて。後妻さんも同じような感じで。

いつしか『自分は弟が成長するまでの繋ぎ・・』だって、本気で思い込んだと。
領主様はそんなつもり無くて、その事実を知らぬは本人ばかりなり。

そのせいでグレかけながらも、『繋ぎの期間はちゃんとやれるように』投げやりながらも、頑張って。
でも学園卒業した頃から、後妻さんから妖しい眼で見られるようになって、危うく性的に襲われかけたとな。
後妻さんはお父さんに離縁されて、家を出た。
でもその事件がトラウマに成った結果、年上の女性恐怖症拗らせての、ロリコンまっしぐら…で、ウサちゃんに引っ掛かったのかぁ…。

「…不憫過ぎねぇ?」
『……しかも、今回やり過ぎな事態に成ったのは、弟さんの策略なのです?』
「うん、弟の方は『兄が跡継ぎ』って解ってるからねぇ。大事件起こさせて、追い出したかったみたいだよ。」
『けんか?』
『喧嘩より、酷いわよ…』
『普通、自分の兄ちゃんに、こんなことする?』
『なんで仲良く出来ないのかなー?』
『立場のある人間は、色々あるんですよ…きっと……。』
『残念ながら、兄弟での跡継ぎ争い自体は、貴族家庭だと珍しくはない…ここまで酷いのは、あまり無いが。』

ラルフのとこみたいに、仲の良い家族ばかりじゃ無いんだね。
…こりゃ、ぶん殴るべきなのは、ロリコン野郎より弟かな……?
……いや、両方殴る。うん、そうしよう。
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