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ビビりとモフモフ、冒険開始

バーベキューの裏で~好き勝手に暗躍する皆さん1~

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約一月本編更新できず、お待ちいただいていた皆様、本当に申し訳ありませんでした!



───────

※黒色の長男視点


ああ、可哀想だなぁ…
ターゲットには、もう味方が居ないみたいだ。
唯一無二の味方だった執事長さんが、居なくなっちゃったもんね。
好みの女の子が絡まない時は、凄く真面目に仕事してるっていうのは、本当だね。
普段が『そこそこできる』で、やらかす時が『だいぶ酷い』だから、『ボンクラ』『ポンコツ』『愚領主代行』なんて言われちゃうんだなぁ。

でも、今回酷いにも程がある事態になったのは、ターゲットを追い出したい『彼』に唆されたのが、原因らしいねぇ。
ターゲットだけで考えた嫌がらせなら、少なくとも、領民にここまで迷惑掛けなかっただろうなぁ。
弱者に対して、思い遣りのある子だから。

一通り、必要な情報は集まったから、正門の門番さんと、気配遮断に認識阻害しながらにらめっこしている、父さんの元へ。
そのまま影に引っ張り込まれて、ボクの家の2階に出た。

「所々気を抜いてたな?外からでも判る程、気配を出すな。」
「父さん、あのお屋敷じゃ、リハビリにもならないよ。ザル警備…いや、ワク警備?」
「それはそうだが…日頃『ドラふ』ばかり作っている、お前の勘を戻す為の練習だぞ。本気でやれ。」

勘を戻すっていうか、最早ボクの本業、ドラ腐&紅雪花菜ドから職人だよ。
王都で情報屋に用がある人達は、大抵父さんが担当じゃないと、ドラ腐買って帰っちゃうし。
ボクも、壁に張り付いて登ったり、関節外して狭いところ通ったりは、得意なんだけどなぁ。
『なんかポーッとしてそう』って、信用してもらえない事が多いんだ。

「それにしても、ターゲットは可哀想な子だね。ボクとしては、罰するより助けたいよ。」
「思うのは自由だが、報告書に余計な所感は入れるなよ?」
「うん。…お爺ちゃんへの報告も、ボクが行っていい?」
「ああ、行ってこい。」

やったぁ!
ちっちゃい叔父さんに、ドラ腐と紅雪花菜あげよう。
お米の炊き方を『この世界』に広めてくれた、お礼がしたかったんだ♪


───────

※バーベキュー中の未來視点


臭みの抜けたお肉を、炭火でじっくり焼く。
バーベキューの準備は、皆にしてもらっちゃったから、せめて焼き加減は任せてくれ。

「…小梅?」
『なんです?』
「いや、さっきから俺の手を凝視してっから、どうしたのかと。」
『人間の手の形状と可動域を、研究しているのです。』

何故に?
あ、アスパラ巻けなかったの、気にしてるのか。
陶器状の手を作り出して、動かす予定らしい。
俺の嫁は、可愛い上に努力家である。

『お兄ちゃん、燃えてる!』
「若葉、氷係出動!」
『はーい!』

脂身が落ちるお肉を網焼きすると、ファイヤーすることってあるよね。
そんな時は、氷をファイヤーしてる所に乗せると良い。
飲み物に入ってるような、ちっちゃいのでOKだよ。

「ミライ、焦げそうな野菜回収していい?」
「ん、お願い兄ちゃん。」
「此方は、このまま食べれるんですね?」
「そだよー。おとーさんが作ってくれたの。アスパラが中に入ってるんだ。」

兄ちゃんは食べて行くけど、姉ちゃんはもう少ししたら帰るってさ。
デイヴィー兄ちゃんが、たぶん精神的に死にかけてるだろうから、帰って来たところで、ぎゅ~っとしてあげるらしい。
まあ、それはそれとして、何で何かしらする前に、いちいち俺の頭撫でるんだろ。良いけどさ。

大量のトウモロコシ、そろそろ焼けたかな?
絶対詩音のチョイスだよね。
俺も好きだよ、焼きトウキビ。
ジャガイモはバターを乗せて、ホイル焼き。
じゃがバターって、アウトドア料理の中でも最強の美味しさだと思う。

後は、ホタテのバター醤油焼きがあれば、まんま前世でやってたバーベキューだなぁ。
魚屋さんにあるかな、ホタテ。

…こんだけ野菜並べてても、陽向がつまみ食いに来ない。
何してるんだろ?えーと…あ、居た居た。

『ふぁぁあ、もっこもこぉおおおお!!ナニコレナニコレ王族の方々が使用する枕?!』
「お嬢様、楽しそうですねぇ♪」
『セーラちゃん、ズルーい!次アタシも乗りたい!』
『2人とも、ヒナタを困らせるなよ…?』
『モコモコ度がアップして、角が尖りましたね。強そうですよ!』
『つよそう?かっこいいー?』
『はい、とっても!私も角を着けたら、カッコ良くなるでしょうか?』

残念ながら、陽向も詩音も、どっちかってーと可愛い。
…いいなぁ、陽向のモコモコ。俺も後で堪能しよ。

「…あ、タレ作らねーと。」
『?塩ダレあるですよ?』
「醤油ベースも作ろうかと思ったんだけど…要らないかな?」
『塩ダレがこれだけあれば、充分なのです。』

セレスティアさん作『謎の物体(塩キャベツ味)』は、とりあえず鶏出汁を混ぜて、塩ダレとして活用することにしたよ。
見た目も食感もプルプルなのに、味は美味しい塩キャベツという不思議……。
お肉に絡めれば、サッパリ食べれて、良いかもしれない。

「ほらほらほら、見たまえ!フカフカくんは、ボクの料理を、ちゃんと活用してくれているぞ!」
「先程より、水分が多くなって、トロトロしていますね。」
『ミライは食材でも、無駄にはしないのだな。偉いぞ。』
「…一応、元じゃなくて、まだちゃんと食材だったよ。」

因みに、謎の物体(塩キャベツ味)を、単体で味見&レシピ確認した結果、謎の材料が使用されていた事が発覚。

「……コイツさ…材料の項目に『女神の愛情』ってあるんだけど、溶けた原因コレだよね…。」
『愛情でキャベツが溶けるのです?』
「愛で蕩けさせるのは、心だけにして欲しい。」

コレ意外は普通だから、たぶん…てか、絶対コレだよ。
愛情が物質に影響与えるとか、流石女神様ワケわからん。

「ミライくん、1人で大丈夫?」
「お姉さん達、お手伝いできること、あるかな?」
「あー…んじゃ、焼けた物を皆に配ってってほしいな。兄ちゃんが避難させた奴とか…この辺の野菜も、もう良いかも。」
「うん、了解!」
「コレ、村の人達にも配る?」
「欲しいって人居たら、そうして!」

既に此方を見詰める、小さい子達がチラホラ居るしね。
沢山あるから、持ってっちゃって!


───────

※紺色視点

情報収集は、ジェイクの領分。
経済制裁なら、怒り心頭のデイヴィーに任せるのが一番。
正直な話、コイツら敵に回した時点で、社会的に死ぬことは免れねぇな。
兄貴は、精神的にも疲れているであろう、ミライ達のケアに勤しむ予定らしい。

フィーはデイヴィーの代わりに、商業ギルドを巡っている。
一部の商人やギルド職員から出た、料理の無償提供についての抗議に対応するらしい。
何か裏があるに違いないだの、偽善者だの、売名行為だの…
どっかのギルドからは『費用は一切負担しない』なんて通達も来たそうだ。元から頼るつもりねぇよ。
文句垂れてる奴等は、守銭奴が無償奉仕するような非常事態に、しっかり人助けしてたんだろうなぁ?

んで、俺は冒険者ギルドを回っている。
チビ達に襲い掛かる馬鹿を、少しでも減らすためにな。
方法は簡単。ミライが『俺の末弟』で、『親父と一緒に』護衛任務中だと、バラしてやりゃあいい。
親父の意向で放置しているらしいが、明日も道々冒険者に襲われるなんて、チビ達は普通に嫌だろう。

少なくとも、俺なら御免だ。
通った道が、真っ赤に染まっちまう。

「…つまり、この子達に手を出した者は……」
「生きて帰って来れりゃ、上々だな。親父と真っ向から殺り合いてぇ、って馬鹿でもなけりゃあ、お勧めはしねぇ。」
「プローティア近辺が縄張りの冒険者だと、Sランクのマルタ・リリィラ様…今はマルーティアさんでしたか。彼女だけは、喜び勇んで突撃しそうですが……他の冒険者達を、死地へ追いやる訳にはいきませんね。ギルドの方から通達しておきます。」
「おう、そうしてくれ。」

そういや、そんな名前のやべぇ女居たな。
巨獣殺しジャイアントキリングだったか…アレはチビ達にゃ荷が重い。
俺や親父にさえ、正面から喧嘩吹っ掛けてくる、バトルジャンキーだ。
まあ、親父とお袋が居りゃあ、大丈夫だとは思うが。

さぁて、コレで街道沿いのギルドは…全部行ったな。
……ツバキ不足に成ってきたことだし、さっさと帰るか。
後は頑張れよ、ミライ。


───────


※お肉が美味しく焼けました


じゅうじゅう じゅわわ~

「上手に焼けましたぁ~♪」
『焼けたのです~♪』

コレは美味しい。絶対美味しい。
脂身めっちゃ多いけど、猪ってそういうもんらしいし!

「ミライ様、焼き上がった肉串も、村人に配布されますか?」
「うん、そのつもりだよ。」
「畏まりました。護衛の皆さん、お手伝いいただけますか?…そちらの家は大人2名子供3名。隣は大人1名子供1名です。その隣は…老夫婦ですので脂身は辛いかもしれません。それから…」
『全世帯の家族構成、調べて来たのです…?!』

……だからトルテアさん、何者だよ。
まあいいや、どんどん焼こう。

「わぁ~美味しそうだねぇ~♪」
「だろー?」
「ねぇねぇ、焼おにぎりは作らないの?」
「ハッ…!しまった、忘れちゃいけないモノを…!詩音、お前に持たせてる、おにぎり出して!」
『そうですね!焼おにぎりは必須でした!』

個人的に、ネギ味噌塗りたいけど…今回使うおにぎりには、塩まぶさってるから、そのままで。

「ん?…………どちらさん?!」
『そういえば…!』

この人、スッゲー自然に入って来たけど、初対面!!
この異常なレベルで色白な、灰色の髪に赤眼のお兄さんどなた?!

「つーか、何時来たの?!」
「今だよ。よしよし、猫ちゃん可愛いねぇ♪」
『む、知らないオスは、お触りご遠慮願うのです!』ペシッ
「ありゃ、ごめんね。」

超マイペース…!
こ、このマイペース加減……さては家の親族だな?

「……甥?」
「あ、うん。因みにボク、叔父さんと同郷だよ。」
『え、転生者さんですか?』
「そうそう、転生?っていうのしたんだぁ。父さんのお師匠さんがね、『君、最高に面白いから、来世の幸せを確約してあげるね~☆』って。」

成る程、ジェイク兄ちゃんの子か。
接近に全く気付けなかったのも、納得だ。

「あ、お猿さんだ。鯨さんも居るねぇ。」
『はい。羊さんも居ますよ!』
「わぁ、本当だぁ。非常食かな?羊は美味しいよねぇ。」
「ちっっっげぇーーーよっ?!」

子羊だけど、ラムじゃねーから!!
サフォーク(食用羊)じゃなくて、メリノ(羊毛用羊)なんですぅー!

「え、叔父さん道民って聞いてたから、てっきりジンギスカンか、ラムしゃぶかと…」
「誰が可愛い従魔を食うか!陽向は仲間だよ!」
「そっかそっか、ごめんね。」

……てか、そろそろ名前教えて?

「甥っ子よ、君の名は。」
「おお、そだねぇ、自己紹介しないと。」

おっと、某アニメーション映画は、知らない時代の人とな。

「ヨシュア・ヴァールフランだよ。前世は叔父さんと同じ道民で…豆腐屋の養子だったんだけどね。悪いことして、網走とか札幌の塀の中に入ったよ。」
『え、そんな、悪い人には思えませんが…』
「いや、ボクわっるいよぉ?網走も札幌も、自力で柵越えたからねぇ。」
「え」
『へ……?』

……網走と札幌の柵、自力で越えた豆腐屋の子ってまさか……

「『だ、だ…脱獄王?!』」
「あれ?そんなに驚く感じ?」

いや、アンタ、だって、ぇえええええ?!
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