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ビビりとモフモフ、冒険開始

執拗に眼を狙え!

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うーん、見れば見るほど可愛くない。
単体で良かった。
コレの大群とかだったら、精神殺られるわ。

ここからの、俺の役目はシンプルだ。
コイツの意識を空に向けさせず、兎に角タゲを取ること。

『グォオオオオッ!!』
「おっしゃ、来い!!」

踏みつけ攻撃を、正面から手で受け止める。
けっこう重いけど、まあ持ち上げれるくらいだな。
相手の足の位置を維持したまま、爪先を掴んで前に押し投げた。
バランスを崩して前傾姿勢に成った所で…

「《ブレイク・アッパー》!!」
『グギャウッ?!』

容赦無く、魔法を纏わせた拳を眼に叩き込む!!
何の魔法かと言うと、おとーさんがウサちゃんに使った、魔法解除の魔法《ブレイク・オフ》だ。
なんか矛盾してる気もするけど、細かいことは気にしない。

サイクロプスの眼は、魔法と打撃が効きにくい。
一番効くのは、槍や弓矢の物理的に突き刺す攻撃だ。
んで、打撃が効きにくい理由は、ブヨブヨしてて衝撃を吸収しちゃうからである。
なら爪か剣でいけよって話だけど、それやると血液と涙が噴出して、陸で溺れる事になるらしい。
槍ならある程度リーチあるから、逃げる隙もあるんだけども。
まあ、1番安全で効果的なのは弓矢だね。

で、魔法が効きにくい理由は…眼球の表面に魔力の層があって、対魔法用の防壁に成ってるんだ。
この層を《ブレイク・オフ》で打ち消せば、魔法も威力軽減されずに通る。
そこを、詩音とラルフの魔法纏わせて、凶悪強化した矢で、レナさんに死角からぶち抜いてもらう作戦だ。

ただ、俺の魔法精度じゃ、1発で全消しは無理だ。
ならばどうするか。
答えは簡単、何度もやればいい!
拳に纏わせたのは、馴れない魔法を、いちいち発動し直してられないからだ。
兎に角連打連打連打ぁあああっ!!

「マホバ●ア消えろこのやろぉおおお!!」
『グアッ!!』
「っぶね?!食おうとしてくんじゃねぇ!」

噛みついて来たんで、一旦距離を取る。
あの口なら、俺なんて1呑みだろうな。
何処に入るのか知らんけど。

『若葉くん、コレを使うです!』

ユニークスキルの効果で、返事は聞こえない。
若葉の存在を確認できる要素は、突然浮き上がった、鋭い石のトゲだけだ。
それが何個も、連続で投擲される。

『ギャッ?!ギャウッ!!』
「あー、全部を眼に当てさせちゃ、くれないか。」

何個かは眼に突き刺さったけど、ちょっと浅い。
それに、腕を滅茶苦茶に振り回すという方法で、弾かれてしまったトゲもある。
……よし、浅く刺さってるやつは押し込もう(鬼)

『今の内に、口に砂詰めてやるです。』
「何それ拷問?」
『総長さんを、食べようとするからです。』

口の中、ジャリジャリ&カラッカラに成りそうだな。

『~~~っ!!』
「あぶねっ?!」
『にゃっ?!』

眼が光るのが見えた瞬間、咄嗟に小梅を抱き抱えて横に転がった。

チュドーンッ!!

閃光、爆音、爆風。
俺の勘は当たってたようで、さっきまで立ってた辺りの地面が抉れてる。

「ビームの予備動作、ほぼゼロかよ!若葉、無事か?!」

右腕をポンポンっと何かに叩かれた。
事前に決めてた、『イエス』の合図だ。
良かった…見えない上に気配察知も難しいから、護りにも行けねぇってこと、失念してたわ。

ミニクロプスは、自ら俺の方へドタドタ走って来る。
ビームは、連続撃ちできるもんじゃ無いようだ。
コレは良いこと知った。

「今の内に打て打て打てぇええええいっ!!」
『○▽%〇○*;+〇%▽▼*?!』

浅く刺さったトゲを垂直に殴ることで、思いっきりぶっ刺す!!
うん、イイダメージが入ったみたいだ。
でも、魔力の層が無くなるまで、殴るのを止めないっ!!

『動くなですー!』
「ナイス捕縛、小梅!!」

戦闘音を聞き付けたのか、ちょっと寄ってきたゴブリンが、数体視界の端で消えた。
何体かは若葉がやってくれたっぽい。
でも、何か別の魔力みたいなのも感じたな…
助けてくれた誰かさん!ありがとう!
魔力の層消滅まで、もうちょいだ、もうちょい……!
よしっ!消えたぁ!

「来い若葉!小梅!!」
『10メートル後退するです!』

ビームを誘発するため、動けないようにしたまま、空間転移で距離を取る。
後は任せた!

───────

※上空の詩音視点

先程のゴブリン…遠くから魔力で撃ち抜かれた気が……
見たところ、遠距離武器を持ってる方はあまりいらっしゃいませんし、どなたかの魔法……で…………

「…………スナイパーライフル……?!」
「コラ、余所見するなシオン!」
「シオンちゃん、後で詳細聞いてあげるから…!」
「あ、す、すみません!集中します!」
『位置、ここでいい~?』
「はい、大丈夫です!」

…何だったんでしょう…壁の上に、ディアドルフさんとロゥミアさんがいらっしゃって…
その側に、青いドレスを着たスナイパーが居たような…
……気のせい、ということにしましょう。
今は、レナさんの補助をしないといけません。

レナさんに放っていただくのは、ラルフさんの雷属性と、私の光属性を纏わせた矢です。
雷は純粋に攻撃力増強として付与し、光はビームで矢を焼かれないために付与しました。
更に、刺さった時に折れないよう、全体的に強度を上げ、放たれると同時にどんどん加速するような魔法も付与してみました。
我ながら、凶悪な矢を作ってしまった気が…
いえ、今は細かい事は、気にしない事にしましょう。

矢に纏わせた雷がバチバチいってますが、レナさんには、全身を包むように、未來くんが予めバリアを張っているので、直接矢に触れても大丈夫です。

[詩音!魔力の層は消せたぞ!ビーム撃たせるから、軌道計測してくれ!]
[了解しました!]

サイクロプスのビームは、瞳の中央の接線に対して垂直に放射される、直進する光線です。
死角から瞳の中央に矢を当てるには、ビームを撃ってもらうのが1番確実になります。

「ほーらほら、こっちだぞノロマぁー!!」
『ガフッ、ガフッ…グォオオオオッ!!』

チュドーンッ!!

「シオン、軌道は読めたか?!」
「はい!レナさん、覚えてくださいね!《フラッシュボール》!!」
『グオゥッ?!』

矢を放つ軌道を光の弾で描き、目の前で停止させます。
コレで視界は塞げる筈です!

『レナおねーちゃん、がんばれー!』
「ソコね…《ウィンドロード》!!ラルフ、風力の補助をお願い!」
「解った!」
「3…2…1…!!今ぁっ!!」
「《ウィンド・ブラスト》!!」

風の道に沿って、矢が物凄い勢いで飛んで行きます。
1度ミニクロプスの頭を通り越し、ヘアピンカーブを描いて、眼に突き刺さり……

『ガギャッ…………』
「うわ、スプラッタ…!」
「……突き抜けたな。」

ひぃっ?!い、威力上げすぎでしたか…!
あ、すぐにドロップ品に成ってくれました…

「………あ、当たった……当たったぁあああっ?!」
「やりましたね、レナさんっ!!」
「お、おい、こんなところクジラの上でへたりこむな…大丈夫か?」

反応がなんか、宝くじに当たった人みたいですけど、ガッツリ当たって仕留めましたね!
レナさん、お見事です!

「あぁぁぁぁ緊張したぁ…!」
「おい、泣くことないだろ…」
「だってぇぇ…」
「っ?!お、おま…待て……!コレ…レオンさんに殺され……」
「よしよし、お疲れ様です。」
『おつかれさまぁー!』
『レナちゃん、お疲れ様!』

レナさん、ラルフさんにしがみついて、泣き出しちゃいました。
きっと、緊張の糸が切れたんですね。

「小梅ぇえええええっ?!しっかりしろ!アレ襲って来ねぇから!…若葉大丈夫か?!見えないけど、滅茶苦茶震えてんのが伝わって来てるよ!?」

え、ど、どうしました?!

「未來くん、何事ですか?!」
「詩音、来るな…てか、見るな!もうちょい…俺がドロップ品仕舞うまで待て!!」

え、ドロップ品って…何か丸い大きな…………

「いやぁああああっ?!」
「きゃぁああああっ?!」
「ちょっと待てお前ら絞まってる絞まってる絞まってる…!!」
『わぁーんオバケぇえええええ!!』
『オバケ!オバケぇ!!』
「落ち着けシグレ!落ちる……!《フライ》!!」

巨大な目玉がっ!目玉がぁああああっ?!
未來くんソレ仕舞ってくださぁあいっ!!
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