上 下
198 / 249
ビビりとモフモフ、冒険開始

期限は君が反省するまで

しおりを挟む
俺に飛び付いてきたエデンくんは、アンジュちゃんを見付けてジタバタしてる。
白とピンクのタキシードにシルクハットが、よく似合ってるよ。
はいはい、ご主人様の所に行こうね~。

『あーちゃのとこ、いく!』
「はいよ。」
「かっわいいっ!!アンジュ、そんな可愛い子隠してたの?」
「もう少し落ち着いてから、呼ぶつもりでしたの。エデン、いらっしゃい。」
「ほら、ご主人様だよ~。」
『あーちゃ!チクタク、すぎたの!まだマテ?』

チクタク…って時計か?
時計が過ぎた…?
「呼ばれる筈の時間が過ぎた」ってことかな。

「もう…エデン、呼ぶまでは『待て』です、と言ったでしょう?」
『ごめにゃしゃい…』
「さっきまで、ちゃんと我慢してたもんなー?アンジュちゃん、エデンくんに予定の時間教えてた?」

此処で、エデンくんの可愛さで盛り上がってたご令嬢方が、静まり返った。らしい。
エデンくんに意識行ってて、気付かなかったんだ。俺のアホ。

「教えましたわ…まさか、時間に成っても呼ばれないから…?」
「時計が言われた時間より過ぎても、『待て』のままだから、何かあったのかな?って、心配に成っちゃったらしいよ。」
「それで、走って私の元へ…!通訳ありがとう、ミライ殿。」
「ん。あんま、叱らないでやってね。」

エデンくん、ご主人様想いだね。よしよし。

さーて、今度こそ退室しよう。
一礼して、ドアクロ~ズ。
詩音とラルフと一緒に、時間までゴブ退治の作戦会議しながら、モフモフしてよー。

「…ミライ、気を抜き過ぎだ。」
「アンジュなら、誤魔化せるとは思うけどね。」
「ん?何かマズッた?」
「「タメ口と愛称呼び。」」
「……やっちまった!」

あぅ、2人の呆れた視線が痛い。
迷惑かけるアンジュちゃんに、後で謝れって事ですね、解ります。

そして狼イヤーが、女子達の会話を拾ってくる。

「アンジュさん、あの料理人の方、どういったご関係?!」
「やはり、何処かの貴族の御子息ですの?!」
「違いますわ。彼の家に爵位はありませんもの。同じ狼なら、エデンの気持ちも解るかと、相談している内に仲良くなっただけですわ。」
「本当にそれだけですの?」
「お友達であること以外には、何もありませんわ。それに、彼も婚約者が居りますのよ。」
「おっきな、可愛いにゃんこですけどね♪」
「「猫と婚約……?!」」
「…獣人なら、あり得るのかしら……?」

ああ、お茶会の議題が俺の事に成ってる……
えーと、すんません…?

───────

※萎縮中(?)の男爵令嬢視点

この私に、人殺せそうな視線向けてきた男の婚約者が…猫……?!
え、何それ?私、猫に負けた訳?
……ああ、でもそれなら納得だわ。
性癖がそっちケモナーなら、人間はそりゃ範囲外よね……。
ロラン様も、魅了が効くかどうかは、好感度次第って言ってたもの。

「……パンケーキ美味しい…」

久々のパンケーキ…可愛いし美味しい。イン●タ上げたい。
ミルクティーも、今まで飲んでたのは一体何?ってレベルで美味しいわ。
料理人としての腕は、確かみたいね。
ちょっと落ち着いてきたかな。

はぁー、焦ったぁ~…ロラン様より上位の神様に、手出しちゃったかと思った。
基本、神様から貰った能力の威力は、神様の序列で決まるらしいのよね。
だから、ロラン様より上位の神様には、私のスキルは絶対効かないの。

ロラン様は賢神様。序列は6位。
能力は『解析』と『改造』。
この世界に存在するモノは、外見や能力値、スキルなんかもデータ化して『解析』できるんですって。
そして『解析』したデータは、好きなように『改造』できる。
その能力で、私が望んだスキル魅了をくれたし、外見をかなり可愛くしてくれた。
お陰で人生イージーモードよ。
私をこの世界に呼んでくれた理由は『面白そうだから』っていう、賢神様らしからぬ適当なものだったけどね。

「ね、アルファストさん、それでいい?」
「えっ?」
「ドレスの色。アルファストさんは赤より、大人っぽい紺色が似合うんじゃない?って話してたんだけど。」
「あ、ああ、ドレス……そうね。…解りましたわ。」

やだ、暫くはあの狼くんの話だろうと思って、聞いてなかったわ。
あーあ…赤のドレスで王子に言い寄れば、お優しいロゼ様(笑)の化けの皮を、ひっぺがせるかと思ったんだけどなぁ~。
あの善人ぶった顔が醜く歪む所、王子に見せてやりたかったのに。

「ドレスと言えば…アンジュさんのフェザーウルフのお洋服、ドレスに合わせてお作りに成られたのね。」
『きゅーん♪』
「ええ。ラルフお兄様のご友人に、腕の良い仕立て屋さんがいらっしゃるの。本日もいらしてますわ。彼も夕方から、お兄様と一緒にモンスター退治へ行かれますの。」

あら…それどころじゃなくて、よく見てなかったけど……センス良いわね。
仕立て屋さん、男性なの?本当に?
その人、私のドレス作ってくれないかしら。
皆、ヴァールフラン商会の恋の電撃や、服飾専門のシャネール商会に依頼するから、オーダーメイドでも絶対似た感じのドレスがあるのよね。

…今から頼めば、ロゼ様(笑)の誕生日に間に合うわ。
王子やそのご友人達も来るし…今日のウサを晴らしてやらなくちゃ。
そのための準備なら、少し面倒でもやる価値はあるわ。

───────
──────
─────

さて、と。
お手洗いを理由に抜け出して、メイドを撒いたは良いけど…流石辺境伯の屋敷、部屋多過ぎて笑えてくるわ。
仕立て屋さんはどこかしら。

客室の辺りをウロウロしてると、さっき聞いたばかりの声が聞こえてきた。
ラルフ様だわ。どうしよっかな…婚約者は居ないって噂だけど。
…考えるまでもないわね。
落として、傷心の私を癒して貰いましょう♪
序でに、お友達の仕立て屋さんについても、聞いちゃえばいいわね。

「そっちじゃない、こっちだ。ほら、手。」
「す、すみません…。」

え、女の声?
……ショタって可能性もあるかしら。
確認しておきましょう。

廊下の角を曲がると、バッチリ目が合った。
ラルフ様と手を繋いでいる…真っ白な天使と。

「!貴女は…」
「ひゃっ…こ、こんに、ちは……?」

……可愛い…学園の令嬢達なんて目じゃないくらいに…
私でも勝てない…作り物じゃない、天然の可愛らしさ。
少しラルフ様の背に隠れる姿さえ、様に成ってる。
そこらの女がやっても、イライラするだけなのに。
成る程、彼女は全く『打算が無い』のね。

ああ…きっと『ヒロイン』ってこういう子なんだわ…

ロラン様…『面白そう』って……私は『当て馬役』ってこと…?!
…ふざけんじゃないわ……!

「あ、あの…?大丈夫、ですか…?」
「……大…丈夫……なんかじゃないわよっ!!」
「ひぃっ?!」
「シオンっ!?」

怯えながらも、目の前までやって来た彼女に向けて、護身用にもなる扇子を振りかぶった。
特別なのは『私』…!
目の前の女じゃなくて、『私』なの…!
そうでしょ?!私は『神様に選ばれた』んだからっ!!

パキンッ……

何かが割れる音がして、景色にヒビが入った。
驚いて手が止まる。

そして、それが直ったと思った時には

「やあ、いらっしゃい。可愛い子が来てくれて、とても嬉しいよ♪」

目の前の天使は消えて、ラベンダー色の魔女が現れた。

───────
──────
─────

※詩音視点

ど、どどどどどどうしましょうっ?!

「わ、わわわ私、見知らぬ女の子を…消しちゃいました……っ!?」
「落ち着け、シオン。恐らく、お前のリボンの効果だ。」
「え………」

……あ、成る程。
お母セレスティアさんの仕業ですかぁ~。
…って、ヤバくないですか?!

「…見知らぬ女の子が、ロリータ服着せ替え10パターンの刑に…!」
「その程度で済めば良いけどな……」
[やあやあ、ボクの可愛い白百合ちゃん。]
「は、はいっ!」
[君を襲ったご令嬢、お仕置きは終わったから、今そっちに返すよ。大丈夫、もう君に鉄芯の入った扇子を叩き付けようなんて、考えれない状態にしたからね。]

何をしたんですか?!

[それは、返してのお楽しみさ。まあ、害は無いから、可愛がってあげたまえ♪]

あの、ナチュラルに心読まないでください。

少しだけ空間が裂けて、そこから…

『…きゅ……?』
「……やられたな。」
「わ、わぁ………可愛いです…ね…」
『きゅきゅっ?!』

フリフリのお洋服を着て、耳にリボンが付いている、とっても可愛いウサギさんが出てきました。

……本当に何してるんですか、お母さぁーーーんっ!?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

欠損奴隷を治して高値で売りつけよう!破滅フラグしかない悪役奴隷商人は、死にたくないので回復魔法を修行します

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
主人公が転生したのは、ゲームに出てくる噛ませ犬の悪役奴隷商人だった!このままだと破滅フラグしかないから、奴隷に反乱されて八つ裂きにされてしまう! そうだ!子供の今から回復魔法を練習して極めておけば、自分がやられたとき自分で治せるのでは?しかも奴隷にも媚びを売れるから一石二鳥だね! なんか自分が助かるために奴隷治してるだけで感謝されるんだけどなんで!? 欠損奴隷を安く買って高値で売りつけてたらむしろ感謝されるんだけどどういうことなんだろうか!? え!?主人公は光の勇者!?あ、俺が先に治癒魔法で回復しておきました!いや、スマン。 ※この作品は現実の奴隷制を肯定する意図はありません なろう日間週間月間1位 カクヨムブクマ14000 カクヨム週間3位 他サイトにも掲載

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...